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花散らす風
いつき宮は露蜜に濡れて~
葉月エリカ イラスト/綺羅かぼす
斎宮(さいぐう)として伊瀬の神女をつとめた紗雪。父である帝が崩御したことで俗世に戻ることになったが、道中で子供のころからあこがれていた久嗣に攫われる。彼もまた沙雪を求め、想いを遂げるつもりだった。ふたりの恋には許されない理由があって…!? 発売日:2013年7月3日 


「嫌、そこ、うっ……んんっ!」
 自分でもどのような造りになっているのかわからない場所を、久嗣は丹念になぞった。
 粗相をしたわけでもないのに、そこは何故か湿り気を帯びていて、不埒な指先がさまようのを手助けしている。
 ぬちゅぬちゅと淫猥な水音が次第に大きくなってきて、可憐な花弁に似た陰唇はぽってりと充血し始めていた。じんじんとした疼きが波紋のように広がって、紗雪はいやいやとかぶりを振った。
「これくらいでそんなに身悶えて……ここはまだほんの入り口ですよ」
「っ、……う……」
「宮様が私を受け入れられる大人になったかどうか、確かめさせていただきましょう」
「え……あ、ぁああっ!?」
 一瞬、何をされたのかわからなかった。
 体の中心に、これまで一度も経験したことのない異物感がある。わずかにひきつれるような鈍痛があって、未発達な蜜壺に久嗣の指が差し込まれているのだと知った。
「ああ、ちゃんと男を呑み込むいやらしい孔が開いておいでだ」
 端整な唇から、気高い彼が口にしているのだとは信じられないような言葉が洩れる。
「ですが、もっと柔らかく広げないといけませんね。今のままでは、きつくてとても――」
「やぁっ……も、抜いて……ひっ……」
 一旦抜かれるかに思えた指が、入口までずるりと戻ってから、抉るような回転を加えて再び突き込まれた。ゆるく曲げられた指の関節が、まだ硬い膣肉をぐりゅぐりゅと刺激する。
「っふ、そんな、ぐちゃぐちゃ……やだぁ……っ!」
 抜き差しは徐々に速くなっていって、けれど最初ほど痛くもないのは、潤滑油となる愛液がしとどに滲み出しているからだった。媚肉の狭間から溢れた潤みは、久嗣の指を濡らすばかりか、後孔のほうにまでとろりと伝い落ちていく。
 やがて指は二本に増やされ、ずくずくと容赦なく穿たれた。腹の奥に苦しい熱が集って、全身がじっとり汗ばんでいく。
「っふ……あ……はぁっ……!」
「御覧なさい、宮様」
 ふいに久嗣が指を抜き、紗雪の眼前に差し出した。焦点の合わない瞳で、紗雪はぼんやりとそれを見つめる。
「宮様がたっぷり濡らしてくださったおかげで、私の指がふやけてしまいましたよ」
「っ、嫌ぁ……!」
 悲鳴をあげて彼の手を払った紗雪に、久嗣は悠然と尋ねた。
「どのような甘露か、味わわせていただいても?」
「あ、味わうって……ひゃ、ああぁんっ!」
 今度こそ、紗雪は意識を失ってしまいたかった。
 両腿を改めて押し広げられ、とろとろにぬかるんだ媚肉の中心に、久嗣は直接唇をつけたのだ。ずずっ……と愛液を啜る猥褻な音が、塗籠の内に大きく響く。
「ああーっ……もう嫌ぁ――!」
 紗雪は錯乱して泣き叫んだ。
 優しかったのに。
昔の久嗣は誰よりも優しくて、紗雪の嫌がることなど決してしなかったのに。
 こんな彼は、紗雪の知る彼ではない。ここに僧都(そうず)でも現れて、久嗣は物の怪に取り憑かれているのだと言われれば、きっと納得するだろう。
 けれど本当に怖いのは、久嗣が正気で、正気のまま紗雪を犯すつもりだとわかってしまっているからで。
「そのようにお泣きにならずとも……痛いことをしているわけではないでしょう?」
 抵抗によじれる腰を撫でながら、久嗣は紗雪の秘処をじゅるりと舐め上げた。ただでさえ濡れに濡れているそこは、彼の唾液でますます潤されていく。
 やがてその舌は、蜜口の上方に潜んでいる小さな肉の芽に辿り着いた。そこを細やかに舐めしゃぶられて、紗雪の腰は大きく跳ねた。
「ひぃっ……ぁああっ……!」
 今までの愛撫など序の口だったのだと思えるほどに、その感覚は鮮烈だった。
(何!? これはなんなの……?)
 愛液と唾液にまみれた秘玉を舌先で掘り起こされると、苦痛と紙一重の刺激に襲われて、とてもじっとしていられない。
「や、だっ、ああ……も、やめてぇ……!」
 久嗣に苛められているとしか思えなくて、紗雪は啜り泣いた。得体の知れない感覚から少しでも意識を逸らしたくて、体の下でくしゃくしゃになった袿を、力の限り握り締める。
「ここが、宮様の一番弱いところですか……?」
 どこまでも執拗に、久嗣はその一点を嬲り続けた。敏感になりすぎた女の突起は、舌のざらつきさえ明確に捉えて、紗雪はあらぬ感覚を催してしまう。
「あぁ、久嗣様……やめて、本当にやめて……!」
「どうなさいました、宮様?」
「っ……わたし……あぁっ……」
 言えない。こんなにもはしたないことを、男の人の前で口にできない。
 けれどこのままでは、もっと取り返しのつかない痴態を晒してしまうことになる。紗雪は羞恥に打ち震えながら、かすれる声を絞り出した。
「……じょう、に――」
「聞こえませんよ、宮様」
「はあぁんっ……!」
 舌の動きをひときわ速められて、最後の理性が焼き切れる。下腹を必死に張りつめさせ、紗雪は髪を振り乱して叫んだ。
「ご、ご不浄に行きたいの! お願い、行かせて、久嗣さまぁっ!」
「心配していたのはそんなことですか」
 決死の思いで訴えたのに、久嗣はあっさりと受け流した。
「大丈夫ですよ。宮様が恐れていらっしゃるようなことにはなりません。――もっとも、この体から迸るものであれば、私が何もかも飲み干して差し上げますが」
「嫌、そんな、できな……っ……!」
 彼の顔や口を汚してしまいたくなくて、紗雪はこみ上がる欲求を堪え続けた。それでも久嗣の舌戯は留まることを知らず、露になって膨れた肉芽を弾くように舐め回す。
 そうしながら久嗣は再び両の乳房を捏ね、尖りきったままの乳首を根元から扱くように擦った。種類の違う上と下からの刺激に、紗雪はとうとう追い詰められた。
「だめ、だめ……ああ、もう、許して……!」
 脳裏が真っ白に染まり、恥ずかしい粗相をしてしまう感覚に全身の力が抜ける。
 だが、実際には脚の間から漏れるものはなく、小さな臀から太腿にかけてがびくびくと激しく痙攣しただけだった。生まれて初めての衝撃に、一瞬ふっと意識が遠のく。
「――なんとお可愛らしい」
 見開いたままの瞳から音もなく零れ落ちる涙を、久嗣が唇で吸い取った。
「気を遣ってしまわれたのですね。私の指で……舌で……」
「……気を、やる……?」
「これから何度でも味わうことになりますよ」
 耳元で囁かれた言葉に、背筋がぞくりとした。
 達したばかりの体が、久嗣の吐息に反応してしまったためでもあるが、あんな強烈な感覚にまた押し流されてしまう恐れと――自分でも気づかない甘い期待に。
「そろそろ私も堪えがきかなくなってきましたよ」
 久嗣が指貫の前を緩め始めて、紗雪はぎょっとした。
 直衣の裾からわずかに見え隠れした赤黒いもの。あれは、もしかしなくとも――。
「や……っ」
 力の入らない上体を起こし、紗雪は肘の動きだけで後ずさった。すぐさま腰を掴んで引き戻され、恐ろしく熱い肉塊を秘口にあてがわれる。
「ひっ……」
 彼がこのまま腰を押し進めるだけで、本当に一線を越えてしまう。
 もはや泣き叫ぶだけの精魂も尽き、紗雪は蒼白になって尋ねた。
「久嗣様、本気で……?」
「この期に及んで、『冗談でした』で終わるとでも?」
 久嗣が忍び笑った。ずっと嫌だと訴えているのに、微塵も悪びれない彼の様子に、紗雪は裏切られたような絶望を覚えた。
「このような辱め、敦雅兄上が――今上帝(うえ)が、お許しになりません……!」
「そこで権威を振りかざすのですか」
 思わず口をついた言葉に、久嗣の笑みが消えた。
「やはり貴女は生まれついての姫宮でいらっしゃる。どうぞ、誰にでも訴えてごらんなさい。難輪津(なにわづ)で宮様を攫ったときから、もとよりどのような処罰も受ける心づもりです」
 くち――と濡れた音がして、禍々しい肉の先端が紗雪の入り口を割った。熱に浮かされたような目をした久嗣が、暗い覚悟に彩られた言葉を吐く。
「神にその身を捧げた貴女を、この腕に抱くことができれば――命さえ惜しくない」
「あ、ああぁ……っ!」
 久嗣の実り勃った剛直が、処女肉の隘路をひと息に押し開いた。