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エロティック・オーシャン
純潔を淫らに散らされて
あまおうべに イラスト/雷太郎

キーワード: 西洋 海賊

港街ロアンドの領主の娘ティファニーは「至宝」と呼ばれ、海軍将校に嫁ぐ姉の代わりに、海賊ライオネルに攫われてしまう。ティファニーに一目惚れしたという彼は、昼は優しく夜は意地悪で…? 発売日:2014年2月4日 


「なんだよ。お嬢様は一人で着替えもできないのか?」
 ライオネルはふたたびベッドに上がり、楽しそうに身を寄せてくる。
「しかたないな。オレが手伝ってやるよ」
「やっ、――やめっ、あ…っ」
 彼はティファニーの身体を片腕で抱え、空いている方の手で、器用にドレスの背中に並ぶボタンをすべて開けてしまった。
「ほら、袖も――」
「や、だめ――ぬ、脱がせ、ないで…!」
 突然の暴挙に混乱し、ティファニーは全力であらがう。けれど元より体力でかなわない上、酒の酔いが蔦のように身体にからみつき、その動きを妨げる。ふらふらな抵抗を、ライオネルは抵抗とも思っていないようだった。
 機嫌よく笑い、あれよあれよという間に、ぬれそぼったドレスをはぎ取っていく。
「かわいい声だな。声を聞いているだけで変な気分になってくる…」
 うそぶいて、彼はティファニーの肌着にまで手をかけてきた。
「いやぁ…っ」
「…やばい。腰に来る」
「――あ、っ…」
 脱がされまいと肌着を押さえる手を、くすぐってやんわりと開かせ、ライオネルは粗削りに整った顔に艶めいた笑みを浮かべた。
「恥ずかしがるなよ。これからお互い全部見せ合うんだから」
 耳元で、低い声がねっとりとささやいてくる。煽るようなその声音にぞくりとした。ついでとばかり耳たぶを吸われ、甘がみされ、肩がふるえてしまう。
「や…ぁっ」
「本当は期待してるんだよな? わかってるぜ。オレがおまえを見た瞬間、心が稲妻に打たれたように、おまえもオレに一目惚れしちまったんだろう?」
 薄暗い中でとはいえ、これまで侍女以外には見せたことのない肌を異性の目にさらし、羞恥に涙がにじむ。なのに彼は、さらにひどいことをささやいてきた。
「一目見たときから、オレのこの身体にめいっぱい愛されたいって思ったんだろう? でも恥ずかしくて、なかなか素直になれないんだよな?」
「ちっ、ちが、う…あ、やだ…っ」
 まるで果物の皮でもむくかのように、彼はついに下着までも簡単にむしり取ってしまう。ティファニーは両脚を固く閉じ、生まれたままの姿になってしまった身体を丸めた。
「口ではいやがってても、その顔を見れば本音がわかるさ。さっきからずっと頬を真っ赤に染めて、ぽーっとオレを見上げて、熱っぽく瞳をうるませてる」
「それは――」
 反論しかけたティファニーのくちびるに、彼はちゅっと音をたててキスをする。ティファニーは驚きのあまり硬直した。
(――いま…)
 いま何が起きた? その問いが、重い頭の中をぐるぐるとまわる。
「ひどい――」
 初めての口づけをこんなふうに奪われ、その理不尽さに強い感情がこみ上げてきた。
 怒らせてもかまうものか。ここにきて、ついに覚悟を決める。
「ちがうわっ、顔が赤いのは、お酒のせいよ…!」
 自分としては精一杯きつく言い、ティファニーは渾身の力で相手の身体を押し戻そうと試みた。
 しかし彼は一瞬息を詰め、それから何かをこらえるように吐き出す。
「…最初からあんまりあおるな、ティファニー。言い訳までたまらなくかわいいな…!」
 欲望に昂ぶりながらも朗らかな笑みを見せ、彼もまた性急な仕草で上着とシャツを脱いだ。
 鍛え抜かれた大きな体躯は、全身が筋肉におおわれており、おどろくほどたくさんの凹凸がある。これまで異性の裸など目にしたことがないティファニーは、自分とはまるでちがうその不可思議な形状に、すっかり目を奪われてしまった。
 圧倒的な迫力に気圧され、息を詰めるこちらの反応に、彼はしごく満足げな様子で脱いだ服を放り出す。そして獲物を前にした獣のようにくちびるを舐め、おおいかぶさるようにしてティファニーの両脇に手をついた。
 薄闇の中、挑発的に光る灰色の瞳で、じっと見下ろしてくる。
「期待に応えてやるぜ。オレの全部で愛してやる。望むだけ天国に連れてってやる」
「わ…わたし、期待してなんか――あ、…っ」
 ふたたび口づけられそうになり、ティファニーはあわててくちびるを手でおおった。
 と、ライオネルは少し不満そうに肩口に顔を寄せ、耳朶をねっとりと舐めしゃぶる。
「いつまでそうやってられるかな?」
「ん…ん、…っ」
 耳たぶをくちびるでやわらかく食み、舌で弄ばれると、先程から酒精の火照りを帯びていた顔の熱が、急に高まった。次いで舌先が孔へ差し込まれてくると、そのぬめった感触と、ねちょねちょとぬれた音に動揺してしまう。
 いままで誰からもそんなことをされたことはないし、想像したことすらない。
(いや――いや、やめて…っ)
 心の中では確かにそう思っているのに、あまりに大きな衝撃ゆえ、拒絶の声は喉の奥に貼りついてしまったかのように出てこなかった。
 身体がすくんでしまったのをいいことに、相手はざらついた大きな片手で胸のふくらみをつかみ、もう片方の手で腰骨を妖しくたどってくる。
「…あ、…ぁ…――」
 肌と肌が直接ふれ合う感覚に、微熱のように身体を火照らせていた酔いが、全身にまわった。現実味のない、ふわふわとした感覚と、一気に高まった熱に意識がぼぅっとする。…熱い。
 とろんとした目で見上げるティファニーに、ライオネルは灰色の眼を細めた。
「ティファニー。かわいいオレの妖精。女に対してこんな気分になるのは初めてだ。こんな…初めて恋をした子供みたいに胸がさわいで落ち着かなくなるのは」