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後宮の夜は甘くとろけて

伊郷ルウ イラスト/オオタケ

キーワード: 中華

宮廷楽師なったばかりの稜華は初の御前演奏で失敗し、若くして皇帝となった昔なじみの繰慶にからかわれ、口答えしてしまう。だが、その態度を気に入られ、褒美として彼の妃にされてしまい…? 発売日:2014年7月3日 


「養成所にいらしていたころ、なぜ私をからかってばかりいたのですか?」
 愛されていると知ったからこそ覚えた疑問を、率直にぶつけてみた。
 養成所にいたときは、ことあるごとに意地の悪い言い方をされ、繰慶と出会った当初は幾度となく泣きそうになった。
 それだけに、あのころから好意を抱いてくれていたとは、とても信じられないのだ。
「食ってかかってくるそなたがあまりにも可愛らしく、つい苛めたくなってしまっただけだ。いわば、愛情の裏返しのようなものだな」
「そんな……」
 稜華は困惑も露わに見返す。
 繰慶の思いなど知る由もないから、からかってくるのは嫌われているからだと思っていた。
 後半は一緒に月琴を奏でることに楽しさを覚え、あまつさえ彼に惹かれていたから、からかわれるのが悲しくてならなかったのだ。
「繰慶さまに苛められた私は、悲しんだこともあったのに……」
「すまなかった」
 素直に詫びてきた彼が、首筋に唇を押し当ててくる。
 柔肌を軽く吸われ、肩が小さく震えた。
「二度と悲しませぬから許してくれ」
 首筋を啄む彼が、腰に回している手を上衣の中に忍ばせてくる。
 襦の上から乳房を掴まれ、さらには指先で小さな突起を刺激され、またしても肩が震えた。
「いけません……」
「なぜだ? 感じているのだろう?」
 咄嗟に悪戯な手を押さえた稜華の顔を、繰慶がわざとらしく覗き込んでくる。
「人の目があります」
「皓行たちが気になるか?」
 鷲掴みにした乳房を揺さぶりながら、今度は耳たぶを甘噛みしてきた。
「ああぁ……」
 思わず甘声がもれた口を、急ぎ片手で塞ぐ。
 幼いころから従者がそばにいるのがあたりまえになっている繰慶は、宦官や女官の目など気にならないのだろう。
 けれど、稜華は気にせずにはいられなかった。ただでさえ、陽の高いうちから外で戯れることに躊躇いがあるのに、大勢の従者が近くにいるのだから、はしたない真似などできるわけがないのだ。
「おやめください」
 大きな声をあげれば皓行たちの耳に届いてしまうだろうと、小声で繰慶を制しながら身体をずらす。
「あやつらに気づかれぬよう可愛がってやるから、おとなしくしていろ」
 逃れる間もなく片腕で力任せに腰を引き寄せられ、襦の上からわずかな刺激で硬く凝った突起をきつく摘まれ、稜華は身動きが取れなくなる。
「んっ……」
 もれそうになった声を、唇を噛んで必死に堪えた。
 皓行たちは正面斜め脇に控えているとはいえ、こちらの様子が見えない位置ではない。
 彼らに気づかれないようにできるわけなどないのに、繰慶は本気でことに及ぼうとしているから焦りが募る。
「少し足を開け」
 裙の裾をゆるゆると捲り上げ、片手を中に忍ばせてきた彼が、膝頭に直に触れてきた。
「繰慶さま、お願いですから……」
「おとなしく言うことを聞け」
 裙の上から彼の手を押さえて懇願するも、彼はまったく聞き入れることなく、腿の付け根に向けて手を滑らせてくる。
 いまにも秘所に触れそうなところで動きを止めた手が、再び膝へと戻っていく。ぞくぞくするような感覚に、懸命に閉じようとしていた両の膝から力が抜けていった。
「んっ」
 何度も内腿を撫でられ、こそばゆさに気を捩りながらも、声だけはもらさないようにと片手でしっかりと口を塞ぐ。
「声を出せばあやつらに気づかれるぞ」
 そう言いながらも内腿を柔らかに撫でてくる彼は、面白がっているとしか思えない。
 皇帝である彼を押しのけて逃げるわけにもいかず、必死に声を押し殺している稜華は、皓行たちに気づかれないようひたすら祈る。
「もう濡れているのではないか?」
 腿の付け根で手を止めた繰慶が、耳元で囁きながら柔らかな茂みを指先で掻き分けてきた。「ひっ」
 指先が花芽をかすめた瞬間、下腹の奥がずくりと疼き、引き攣った声がもらした稜華は、震える身体で彼にしがみつく。
「乳房に触れただけだというのに、このように濡らして」
 重なり合う花唇のあいだを指で擦られ、そこがすでに蜜に濡れていることを気づかされた稜華は、ただならない羞恥に囚われる。
「感じやすいにもほどがあるぞ」
 耳元でからかわれ、蜜に濡らした指先で花芽を撫で回され、羞恥に火照った身体が激しく震えた。
「ああぁ……繰慶さま……無理です……私、声が……」
「あやつらに気づかれたくなければ、我慢するしかないな」
 どこまで意地悪な彼は、楽しそうに言って執拗に花芽を撫で回してきた。
 ひっきりなしに甘い痺れが駆け抜けていく。と同時に下腹の奥が疼き始め、溢れてきた蜜に花唇が濡れていくのをはっきりと感じる。
「くっ」
 唇からこぼれそうになった声を、襦の袖を口に含んで押し殺す。
「気のやり方は覚えたのだろう? ここに意識を集めれば、容易く達することができるぞ」
 指先で過敏になっている花芽を摘ままれ、そこで弾けた強烈な快感に背が反り返る。
「ううぅ……」
 思いきり声を出せないのがもどかしく、涙が滲んできた。
 寝所であれば、誰の目も気にすることなく快楽に浸れる。だからこそ、こんなところで戯れてきた彼が恨めしくてしかたなかった。
「あやつらなど気にせず、声を出したらどうだ?」
 甘声で唆してくるだけでなく、指の腹で花芽を丹念に撫で回してくる。
 こんなにも辛い思いをするくらいなら、皓行たちに見られてもかまわないから、存分に声をあげて快楽を味わってしまおうか。淫らに疼く身体を持て余している稜華の心が揺らぎ出す。
(だめよ……そんなこと……)
繰慶の腕の中で達する姿など、誰にも見られたくない。自らを諫め、袖を咥えたまま彼の胸に顔を埋めて歯を食いしばる。
「んっ、ん……」
 執拗な花芽への愛撫に、全身が甘い痺れに包まれていく。疼きも震えも止まらなくなり、両の脚がだらしなく開いていった。
 身体のそこかしこが、燃えるように熱くなっている。裙に染みてしまうのではないだろうかと不安になるほど、とめどなく蜜が最奥から溢れてきていた。
 撫でられている花芽が気持ちよくてたまらない。そこから広がっていく甘美な痺れに、我を忘れてしまいそうになる。
「ふっ……」
 不意に粗相してしまいそうな感覚が湧き上がり、きゅっと肩を窄めた。
 昨夜は醜態を晒すかもしれない恐怖に怯えたが、それが昇り詰めていく前兆だと知ったからもう怖くない。
 意識のすべてが花芽へと向かっている稜華は、いつしか袖から口を放し、両手で繰慶にしがみついていた。
「ああぁ……あっ」
 下腹の奥でうねる淫靡な熱に自然に腰が前後に揺れ始め、石畳に下ろしている足先までが小刻みに震え出す。
「繰慶……さ……ま」