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千夜淫夜物語
~砂漠の王と金の髪の乙女~
織田ちさき イラスト/氷堂れん
ルハイン王国の第三王女・リュミエールは、父王から押しつけられた結婚に反発し、王城から抜け出した。港に停泊中の船へ隠れていたが、いつの間にか出港してしまう。運の悪いことに船は難破し、異国に流されたリュミエールは記憶を失い、オークションにかけられる。恐怖に震える中、会場に乗り込んできた男――奴隷市場の根絶を目指す若き王ラシードに救われる。そして、「そなたを気に入った」と名を与えられ、甘く優しく触れられてしまい…? 配信日:2016年12月22日 


「そのように可愛げのない娘にはお仕置きをせねば」
 意味ありげに口角を引き上げた彼に、抗う間もなく押し倒される。
 敷物にふわりと広がった長い金の髪が、木漏れ日を受けて輝きを増す。
「なにを……んっ……」
 いきなり唇を塞がれ、驚きに息を呑む。
 くちづけは愛し合う者同士が交わす行為。
 予期せず唇を奪われたリュミエールは、激しく混乱する。
「んん……」
 混乱しているなど知る由もなく、ラシードはかまわず唇を貪ってきた。
 くちづけを止めてほしくて、拳で力任せに彼の背を叩く。
 けれど、その程度の抗いなどものともせずに、彼はより深く唇を重ねてきた。
 背を叩く手を掴まれ、指を絡められる。
 投げ出している脚を膝で割られ、否応なく開かされた。
「ぅ……ふ……」
 口蓋を舐められ、歯列をなぞられ、こそばゆさに口元が自然に緩む。
 すると、なんと彼は舌を差し入れてきた。
 とんでもない事態に、リュミエールは頭を激しく左右に振る。
 唇を重ねるのがくちづけだと思っていたのに、どうして舌を入れてきたりするのか。
 彼の考えていることがさっぱりわからない。
 絶え間なく動き回る舌で口の中を舐め尽くされ、次第に脱力していく。
 抵抗したいのに、それができなくなる。
 ラシードとくちづけなど交わしたくないのに、どうしても押し返せない。
「んっ……」
 搦め捕られた舌を強く吸い上げられ、背が大きく仰け反る。
 と同時に、胸の奥深いところが疼いた。
 強引に唇を奪われているというのに、抵抗しないばかりか、躯が疼くなんて信じられない。
 いったい自分はどうしてしまったのか。思いとは裏腹の反応をする躯が情けない。
「ふ……ぅう」
 ラシードが搦め捕った舌を執拗に吸ってくる。
 その度に胸の奥が熱く疼き、甘い痺れとなって躯の隅々に広がっていく。
 こんなことは望んでいない。
 それなのに、重ね合わせた唇や、絡め合う舌を心地よく感じ始めている。
 自分が許せなくて、きつく瞑った目尻から涙が伝い落ちてきた。
「タライエフ、そなたを愛している……」
 息を触れ合わせるようにして囁かれ、うっすらと目を開ける。
「愛しいタライエフ、そなたは私の愛を信じてはくれないのか?」
 顔を遠ざけた彼が、熱っぽい瞳で見つめてきた。
 愛など容易く信じられるわけがない。
 愛とは互いに育むもの。
 会ったばかりの相手に愛を覚えるなど、あり得るわけがないのだ。
 涙に濡れた青い瞳で黙って見返すと、ラシードが小さく笑った。  
「信じられないか。では、信じるに値する愛を与えよう」
 柔らかに微笑んだ彼が、首筋に唇を押しつけてくる。
「あっ……」
 柔肌を啄まれ、細い肩が跳ね上がった。
 愛などあるわけがない。
 名も生まれも知らないどこの誰ともわからない娘を、一国の王が愛するわけがない。
「ひっ……」
 顔を背けていたリュミエールは、喉の奥を引き攣らせた。
 早くも上衣の前を開いたラシードが、乳房を鷲掴みにしてきたのだ。
「いやっ……」
 さすがに慌てた。
 ここは他に誰もいない部屋とは違う。
 向こうには渡り廊下があり、若い女官が行き来している。
 中庭に目を向ければ丸見えだ。
 これほどの辱めはない。
 侮辱的な扱いをしておきながら、よく愛しているなどと言えたものだ。 
「そなたの乳房は手触りがいい」
「いやよ、触らないで……」
 ラシードから逃れたい一心で胸を弄ぶ手を掴んだけれど、小さな突起をきつめに摘ままれて一気に脱力してしまう。
「ああぁ……」
 響いた自分の声に驚き、慌てて口を手で塞ぐ。
 声などあげたら、自ら注目を集めるようなものだ。
 それなのに、小さな突起を指先で揉まれ、弾かれ、そこから駆け抜けていく快感に抑えようのない声が指の間から零れ落ちる。
「あっ、あっ、ああぁ……」
 乳房に広がる甘酸っぱい痺れに、口を覆っている指先が震え出す。
 投げ出している脚はしどけなく開き、抗う気持ちが失せていく。 
「はっ……ぁ、ん」
 胸に顔を埋めてきたラシードに突起を甘噛みされ、リュミエールはあごを大きく反らして身悶える。
 どうしたらいいのかわからない。頭では嫌だと思っているのに、なぜこんなにも感じてしまうのか。
「もっと大胆に喘いでみろ」
 そう言うなり、寝返りを打って背中越しに抱き寄せてきた彼が、鷲掴みにした乳房を大胆に揺すり始めた。
「あああっ……」
 華奢な躯が乳房の動きに合わせて激しく揺れる。
 溢れかえる快感に、敷物を掻きむしりながら長い金の髪を振り乱す。
「ひっ……ん」
 大きな手で乳房を絞り込まれ、さらには乳首まできつく摘ままれ、強烈な痺れが全身を駆け抜けていく。
「いやっ……やめて……」
 渡り廊下を歩く女官の姿を目の端に捉え、ただならない羞恥を覚えたリュミエールは涙ながらに懇願した。
 けれど、ラシードはまったく聞き入れてくれない。そればかりか、下肢を覆う柔らかなスカートをゆるゆるとたくし上げてきた。
 人の目がある中庭でこれ以上、肌を晒すなど耐えられない。
「だめ……」
 すでに膝から下が露わになっている。
 早く彼の手を止めなければと思うのに、躯がまったく言うことを聞いてくれない。
「これはお仕置きだ。そなたの声に耳は貸さない」
 恐ろしい言葉を耳に吹き込んできた彼が、一気にスカートを捲り挙げ、ほっそりとしたリュミエールの片脚を持ち上げる。
「なっ……」
 彼の腿に脚が載せられ、はしたなくも秘所が晒された。
 また一人女官が渡り廊下に姿を現す。
 盆を掲げて歩いているけれど、気づかないはずがない。
 どんな思いで見ているのだろうか。
 こんな扱いは居たたまれない。
「ひゃっ」
 下腹か滑り落ちた手で秘所を覆われ、全身が硬直する。
 蕾と花弁に掌の熱が伝わってきた。
 直に触れられている。その感覚になぜか体温が上がるのを感じた。
「そなた、媚薬を使わなくても濡れるのだな」
 耳朶を甘噛みしてきたラシードが、指先で花弁を弄ってくる。
「そんなこと……」
 彼の言葉に、今さらながらに気づかされた。
 昨夜、意図せず乱れてしまったのは、媚薬を使われたからだ。
 けれど、今は違う。媚薬の一滴も彼は使っていないのに、昨夜と同じように感じてしまっているのだ。
「どうして……」
 これでは媚薬のせいにできない。
 躯が素直に快感を得てしまっているなんて、そんなことはあってはならないのに。
「言葉にするほど嫌ではないのではないか?」
「ひっ……ん」