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鳥籠の姫君
~残酷な騎士のめくるめく夜~
ハルノヤヨイ イラスト/水谷悠珠
エリザベスは冷酷だと評判のヘンリー卿へ嫁ぐ。しかし彼は自分では触れず、従者のスチュアートにエリザベスを抱かせる。一度だけ会ったことのあるスチュアートに恋をしていたエリザベスは…? 発売日:2013年4月3日 


「やれ、スチュアート」
 ヘンリー卿が、スチュアートに向かって顎で命令した。ベッドに起き上がったスチュアートは、黙ってシャツを脱ぎ始めた。
「……!」
 脱ぎ捨てたシャツの下には、ギリシャ彫刻もかくやとばかりの、無駄の無い均整のとれた肉体があった。
(ああ……神話の中のイカルスのよう……)
 エリザベスは、自分の置かれた状況を一瞬忘れて、そのしなやかな肢体に見とれた。しかし、次の瞬間、
「!?」
 青年の左肩に、大きな紅い蛇が這っていた。
 エリザベスは目を見張った。それは、焼き印の痕であった。ヘンリー卿の家紋である、双頭の蛇が剣に巻き付いている印章。青年の白い肌に、無惨に焼き付いた刻印。エリザベスが呆然としている間に、スチュアートは無言で彼女の腰を引き寄せ、両脚を肩に担ぎ上げた。
「あっ……」
 乱暴にあおむけに倒されたエリザベスは、視界の隅でスチュアートがすばやくズボンを脱ぐのを見た。
 身構える隙もなく、まだ痺れている肉唇に、なにか熱くたぎった硬い棒のようなものの切っ先が押し当てられた。
「え……? やっ……」
 あわてて身を起こそうとするより早く、その硬い灼熱の塊が、ずぶりと花弁を割って一気に貫いていた。
「ああぁああっ……!」
 めりめりと身体がまっぷたつに引き裂かれるような衝撃に、エリザベスは悲鳴を上げた。先ほどの指などとは比べ物にならないくらい太いもので刺し貫かれて、脳天まで激痛が駆け抜けた。
「あぁ、いやぁ、ああ、い、痛い、やめてぇ、もう、やめてぇえ……!」
 エリザベスは、身をよじって泣き叫んだ。しかし、スチュアートは容赦なく、根元まで深々と突き立てた後に、ゆっくりと腰を前後に揺らし始めた。
「く……う、や、ぁあ、やぁ、やぁああ……」
 突かれるたびに、息が止まりそうな激痛が腹部を襲い、エリザベスは泣く気力も次第にそがれ、ただぐらぐらと揺さぶられるがままになった。
「おお、痛いか、そうか。確かに処女のようだな」
 ヘンリー卿が血走った目で、二人の交合を見つめて言う。
「お、お願い……もう、もう、許して……」
 すがるようにスチュアートを見上げたエリザベスは、彼の胸もとに、なにかきらりと光るものが揺れているのに気がついた。
(ああっ、あれは……!)
 銀の小さな十字架だった。
 あの時、エリザベスが別れ際にスチュアートに手渡したものだ。二人であの十字架に手を置いて、一緒に逃げようと誓ったのだ。
(それでは……それではスチュアートは、私の事を忘れてはいなかったのだわ……)
 エリザベスの胸に熱いものがこみ上げた。頭の中が、苦痛と歓喜でごちゃごちゃになる。
 そんなエリザベスの胸中などおかまいなく、スチュアートはずんずんと腰を打ち付けている。
「あ……くぅ……う、う……んぅぅ」
 何度も揺さぶられているうちに、次第に痛みの度合いが鈍くなって来たような気がした。それまでぐっと息を詰めてこらえていたエリザベスは、ふっと息を吐いた。すると、ふいにめいっぱい埋め込まれている肉路の奥から、じわっとした甘い疼きが生じてきたのだ。
「はぁ……あっ……」
 思わず甘い吐息を漏らすと、一瞬ぴたりとスチュアートの動きが止まる。
 その緑の目が、エリザベスの反応を確認するかのように凝視してくる。
(あ、いや、見ないで……スチュアート、こんな恥ずかしい私を見ないで……)
 エリザベスはスチュアートの視線を痛いほど感じ、羞恥に首をふるふると振った。破瓜の苦痛に耐えているはずが、彼の視線を感じるだけで、身体中がかあっと熱く火照ってくるのだ。
 ふいに、スチュアートのものをくるんでいる媚肉が、ひくりとうごめいた。
(あ……?)
 それはエリザべスの意思とは関係ない本能的な秘襞の動きだった。
 エリザべスの反応に、スチュアートは腰を入れ直すと、今度は下から突き上げるようにずん、と挿入してきた。
「はぁっ……っっ……」
 なにか自分の中の急所を突かれたようで、エリザベスは思わず猥らな声を上げてしまう。
 スチュアートはゆっくりとその急所を、何度も何度も突き上げた。
「ぁあっ……はぁっ……ふはぁっ……はぁう……ふあぁうう……っ」
  苦痛はいつの間にか、腰が蕩けそうな快感に取って代わられた。
「あっ、だめっ……あぁん……はぁんん……ああっ……あっ、あぁあっ」
 あんなにきついと思った肉の楔が、今は潤いの増した肉路をつるつると滑っていく。
「くぅ……っ、んっ、ふぅん、はぁうふぅ、っ……ふぁんぁん……」
 指で秘豆をいたぶられた局所的な快感とは違う、全身が痺れてしまいそうな激しい悦楽が、穿たれるたびに生まれては消え、また生まれる。
(ああ、なに、これはなに?どうしよう、なにかが襲ってくる……大波のようになにかが寄せてくる……!)
「はぁっ……はっ、ああぁん、あんん、ああぁんん、はぁん、ふぅんん……っ」
 エリザベスは、もはや慎みも忘れ、甘えたよがり声を漏らし続ける。
「おおぅ、はしたない生娘じゃ、初夜にこんなに悶えるとは。なんと、楽しみなことじゃ」
 ヘンリー卿が興奮しきった表情で、ベッドの周りを行ったり来たりしながら、あらゆる角度から、エリザベスの乱れ悶える様をながめている。しかし、エリザベスにはもう、その視線も気にならない。今はただ、スチュアートのものを受け入れ、それを包み込む自分が生み出す快楽に目がくらんでいた。
 なぜ夫たるヘンリー卿ではなく、スチュアートが破瓜の儀式を行っているのかすら、もうどうでもよかった。いや、逆にエリザベスは、処女を捧げる相手がスチュアートだったことに、神に感謝したいくらいだった。
(ああスチュアート、あなたが好き……ずっと好き……ずっとずっとあなただけを想って生きてきたの……あなたに奪ってもらえてよかった……私、あなたさえいれば、これからどんな事があっても、耐えていける……)