猫かぶりのお嬢様と溺愛伯爵
過保護なダーリンは運命の人
水島 忍 イラスト/椎名咲月

「さっきしたキスは嫌じゃなかった?」
「嫌なんて……全然思わなかったわ……」
「僕に脱がされたのは?」
「は、恥ずかしいけど、別に嫌じゃ……」
 正直に話したら、彼はにっこりと笑った。
「それなら、少しだけ僕の言うとおりにしてくれないか?」
 そんなふうに言われて断れるはずがない。リリアンは小さく頷いた。
 サイモンはリリアンをベッドに連れていった。そこに腰かけさせると、靴と靴下を脱がされた。
「あの……上掛けの中に入ってもいい?」
「ああ、入るといい」
 リリアンはすぐに上掛けの中に潜り込んだ。裸になるにしても、彼の目の前で裸になることだけは避けたかった。
 上掛けの中なら大丈夫……かもしれない。
 サイモンはふっと笑って、自分も服を脱いでいく。リリアンは上掛けの中に隠れながら、それを見守っていた。
 兄達がいて、子供の頃は一緒に遊んでいたから、男の子の身体がどうなっているのかは知っていた。
 でも、それは子供のときの話で、大人の男性の裸なんて見たことはない。
 彼が白いシャツを脱ぎ捨てる。筋肉に覆われた引き締まった身体が見えた。女性の身体と違って、柔らかいところはどこにもないように思える。
 そして、彼はズボンと下穿きを脱いでいく。リリアンははっとして、顔を伏せた。
 見ちゃった……!
 顔も身体もカッと熱くなる。
 すぐに彼が上掛けの中に滑り込んできた。
 それだけでもドキドキするのに、彼はそのままリリアンを抱き締めてきたのだった。
 今見たばかりの彼の身体が自分に密着している。そう思うと、もう何も考えられなくなってくる。
「君だけ何か着ているね」
「だって……だって……」
「さあ、脱いでしまおう」
 彼は優しくリリアンのシュミーズとドロワーズを脱がせてしまった。だが、彼も裸なのだから、抵抗できるはずもない。
 これで二人とも裸なんだわ……。
 再び抱き合うと、彼の体温がそのまま自分に伝わってくることに気づいた。興奮もしているが、心地よさもある。
 なんだか気が遠くなりそう……。
「こ、このまま……寝るの?」
「いや、まだ寝ないよ。……キスをしようか?」
 キスはしたい。リリアンは頷いた。
 彼は唇を重ねて、舌を差し込んできた。キスが深まるにつれて、気がつくと、彼はリリアンに覆いかぶさるように、上からキスをしていた。
 身体ごと彼に包まれているような気がする。リリアンは彼の引き締まった身体に手を這わせた。滑らかな肌の下に硬い筋肉があるのが判る。彼の身体に力強さを感じて、ただ陶然としていた。
 サイモンは唇を離すと、今度はリリアンの顔のあちこちにキスをしてきた。そして、耳朶や首筋にもキスをしてくる。
 そのうちに、胸に触れられてドキッとする。
 でも……嫌じゃない。嫌悪感なんてどこにもなかった。
 彼の掌が乳房を包んでいる。そして、そのまま掌をゆっくりと動かされると、なんだか気持ちがよくなってきて……。
 特に、乳首の辺りが敏感になってきている。そのうちに、乳首だけをそっと指で撫でられると、何故だか身体が震えた。
「……感じる?」
「へ、変なの……」
「それが感じるってことだよ」
 彼は優しく指の腹でくるくると乳首を撫でると、その部分だけでなく、身体の奥が熱くなってくる。甘い疼きが感じられて、リリアンはどうしようもなくて身体をくねらせた。
「可愛いよ……リリアン」
 彼はそんな言葉を囁きながら身体をずらして、リリアンの乳房にもキスをしてきた。
「あ……っ」
 あんなに裸を見られるのが恥ずかしいと思っていたのに、もうすでに彼は裸の胸を見ている。丸い乳房もピンク色の乳首も。
 彼は両手で乳首を弄っていたが、片方だけ外すと、その部分にキスをしてくる。途端に、身体がビクンと震えた。
「あぁ……んっ……ん」
 キスだけではない。乳首が唇に包まれている。彼の舌が絡んできて、それが指で撫でられるよりも何倍も気持ちがいいことを知った。
 全身が寒くもないのにゾクゾクしている。同時に、とても熱くなっていた。
 胸を撫でられたり、キスをされると、こんなに気持ちよくなることなんて知らなかった。裸を見られたり、撫でられたり、キスをされると恥ずかしい。だが、それ以上に感じてしまう自分が恥ずかしいと思う。
 それでも、もう止められない。
 彼の言うとおりにしなくてはならないと、母に言われたからではなかった。
 快感の虜になってしまっている。ここでやめられたら、昨夜キスの途中でやめられた以上につらくなってくる。
 彼の手はリリアンのお腹から腰のほうへと撫で下ろされた。太腿を撫でられると、ドキッとする。
 リリアンの脚の間はなんだか甘く痺れたようになっていた。そこに触れられるのは恥ずかしい。けれども、触れられたら、胸と同じように気持ちいいかもしれないのだ。
 彼の手は焦らすように内腿の間に差し込んできた。本当に触られたくなかったら、しっかり脚を閉じていただろう。だが、あっさりと彼の手の侵入を許したということは、触れられたかったのかもしれない。
 指が秘部に触れる。途端に、そこに蜜が溢れ出してきた。
 秘裂に沿って指が動かされると、身体まで震えだした。甘い疼きがそこを中心に広がっていく。
「や、やぁ……っ……ん」
 嫌だと言いたいのに、言葉にはならない。自分でも驚くほど甘い声が出ていた。
「気持ちがいい?」
 リリアンは泣きそうになりながらも、それを認めるしかなかった。
「そうか。よかった」
 彼はそう言うと、リリアンの両脚を広げた。
「えっ……ダメ……」
 気がつくと上掛けは消えていた。あんなに裸を見られるのは恥ずかしいと思っていたのに、今は全身を見られていて、しかも脚を広げられている。
 リリアンは気が遠くなった。
「い、いやよ……」
「大丈夫。僕だって裸だ」
 それはそうだが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
 サイモンはリリアンの両脚を押し広げると、秘部にキスをしてきた。
「えっ……あぁっ……!」
 まさかそんなところにキスをされるとは思わなかった。あまりのことに目をギュッと閉じた。だが、閉じたところで感覚がなくなるわけではない。
 彼の温かい舌が秘裂をなぞっている。しかも、特別に敏感な部分を見つけたようで、そこに舌を這わせた。
 リリアンの身体が大げさにビクンと震えた。
「あぁん……あん……ぁっ……」
 続けて舐められて、声を我慢することもできなかった。それくらい大きな刺激で、リリアンは身体を震わせながらシーツを摑んだ。
 そのうちに、秘裂の中に何かが潜り込んできた。
 何……? なんなの?
 思わず目を開ける。どうやら、それは彼の指のようだった。
 嘘……!
 そんなところに指を入れるものなのだろうか。信じられない。
 だが、大きすぎる快感に翻弄されていて、すぐに指どころではなくなってくる。彼は指を動かしていて、それが新たな刺激になっていった。
 リリアンは頭を左右に振った。
 身体の芯から熱いものがぐっと押し上げていく感覚があった。
 快感が大きすぎて、どうしていいか判らない。
「もう……もうっ……あぁぁっ……!」
 頭の天辺まで快感が突き抜けていく。
 リリアンは呆然としていた。
 今のは……何?
 強すぎる快感にはきっと終わりがあるものなのかもしれない。今は快感の余韻というような甘く穏やかなものへと切り替わっている。
 サイモンは顔を上げて、指を引き抜いた。そして、身体を起こして、ぐったりしているリリアンの両脚を改めて両脇に抱え上げた。
「えっ……あ……」
 秘部に何か当たっている。
 それがなんなのかに気づいて、リリアンは大きく目を見開いた。
「嘘……でしょ」
 秘部に当たっているのは、彼の股間で硬くなっているものだった。
「僕を信じて、少しだけ力を抜いてくれ」
 その一言で、リリアンは身体の力を抜いた。
 彼を信じる……。
 リリアンはどんなものよりサイモンを信じていた。だから、そう言われたら、彼の言うとおりにするしかなかった。
 それでも、怖さはある。
 だけど……これがきっと初夜の儀式なんだわ。