引きこもり伯爵は花嫁育成に全霊を注ぐ
あまおうべに イラスト/蔀シャロン

「……そろそろ頃合いかもしれないな」
「え?」
「男がおまえに何を望むのかを、学び始めてもいいかもしれない」
「それって……どういう……」
 自分を見据えるウォルフの目が、どことなく恐ろしい。
 思わず逃げようとしたものの、にぎられていた手を引っ張られ、気づけば彼の腕の中にいた。
「や……っ」
 反射的に硬くなった身体が、深く抱きしめられる。しーっ、と低い声が耳元で言う。
「ほんのさわりだけだ。恐くない」
 落ち着かせようとしているのかもしれないが、逆効果だった。ミレーネの心臓は、すでに大騒ぎをしている。
(な、……なにを、する気、なの……?)
 自分を包み込む、たくましい身体の感触に心臓がドキドキする。顔に熱が集まり、わけがわからなくなってしまう。
 抱きしめられて硬直していたミレーネを、彼は寝台の上に横たえてきた。
 そしてドレス越しに上半身をなでまわしてくる。
 青灰色の瞳でじっと見下ろしながら、意味ありげになでてくる手の動きは悩ましく、ミレーネはますます顔が熱くなるのを感じた。
 おまけに息が上がってくる。
「…………っ」
 しかしウォルフのほうはと言えば、あくまで冷静に告げてきた。
「細いな。もう少し食べて肉をつけろ」
「……は?」
「こんなに華奢では、さわっていても楽しくない」
「なら止めなさいよ……っ」
 勝手なことを言う相手に言い返し、ミレーネはどっと緊張が解けてしまう。
 寝返りを打つ形で逃げようとすると、腕をつかんで引き戻された。
「誰が止めると言った?」
「――――」
 そのまま、傍若無人な手はドレス越しに脇腹をなでてくる。
「あ……」
 くすぐったさに身をよじると、追いかけるように手は背中へ移っていった。
「いや……っ」
 背骨をなぞるように這う手のひらの感触に、身体が火照る。
 はぁはぁと、恥ずかしいほど息づかいが荒くなる。
 しばらくすると、彼は背中で編み上げる形になっていた胴衣の紐をするりと解いた。そしてゆっくりと開いていく。
「待って……」
 そんなことをしたら――という予想に違わず、ほどなくミレーネの胴衣はたくし下ろされ、コルセットをのぞかせる姿にされてしまった。
 すると彼はさらに、身体の下にすべりこませた手で、コルセットまでもゆるめてくる。
「やっ、やめて……っ、何をするの!?」
 ミレーネは、あわてて両腕を交差して丸くなった。
 恥ずかしい場所を見られそうになり、必死に抵抗する。するとあろうことかウォルフは、ミレーネの両手首を包帯の上からつかみ、強い力で左右に開かせた。
「おとなしくしろ。あの男達が、おまえに何をしようとしていたのか教えてやる」
「――――……っ」
 脱げかけたドレスの中、無防備に晒された裸の胸が、彼に見られてしまう。
 白い丘のみならず、淡いピンク色に染まった中心まで、すべてが晒されている。ふくらみは、まだささやかなものだ。
(恥ずかしい……っ)
 乱れた息に上下する胸を、まるで品定めでもするかのように見つめられ、ミレーネの頬が上気する。
「どうせ……期待外れだって思ってるんでしょ……」
 かろうじて強気につぶやくと、彼は大まじめに応じた。
「心配するな。あと少しすれば、もっと育つ」
「無神経な男……!」
「男が揉むと、大きくなるらしいぞ」
「もっ、揉む……っ?」
「そう。男は、女の胸のやわらかさを感じたがるものだ。つまりここを揉んだり、舐めたり、吸ったりするようになる」
「い……」
 思わず彼が自分の胸を揉む光景を想像しそうになり、あわてて頭を振る。
「いやらしいことを言わないで……っ」
 しかしその想像は、ほどなく現実になった。
「女は――」
 ウォルフは無遠慮にミレーネの胸にふれてくる。
 男にしては細くて長い指が、薄紅色の部分にふれ、ツ……と円を描くようになぞる。
 ミレーネはびくりと肩をふるわせ、息を詰めた。
「…………っ」
「女はここをいじられると感じるらしい。つまんだり舐めたりすると、硬くして歓ぶ」
「そんなことをされても、うれしくなんかないわ!」
 真っ赤になった顔を背けて言い張る。
「どうかな」
 彼はわけ知り顔でつぶやくと、ミレーネの胸の中心を、人差し指の指先でいじりまわした。
 と、不思議なことにそこがうずうずし始め、それまで平らかだった部分が、ぷっくりと膨らんでくる。
 彼はすかさずその部分をつまみ、くりくりと扱いた。
「硬くなってきたぞ」
「ぁ、いや……っ」
 つままれた部分に、ひどく妖しい感覚が生じ、身をよじる。
 しかし指は悪戯を止めなかった。固くなった部分をつまんだまま、指の腹で左右に転がし続ける。
 すると次第にそこは熱くなり、きゅうっと疼き始めた。
「はぁ……」
 凝った頂をこりこりと潰され続けるうち、身体の芯に火がつくような愉悦を覚え、息が熱くなる。
 思わず喘いだミレーネの、はしたない顔に引き寄せられるように、彼はさらに、乳首に口づけてきた。
「あっ……、やだ――……っ」
 想像をはるかに超える卑猥な刺激に、ミレーネはふるえる手で彼の頭を押しやろうとする。しかしその手には、まったく力が入らなかった。
 唾液でぬるついた舌に舐められ、そこはますます硬くきゅっと縮こまる。
 刺激に尖った粒を、彼は口の中で、ゆったりと丹念に舐め転がした。
 ぬるついた粘膜に擦られる感覚は卑猥にすぎ、背筋がぞくぞくする。
「ん、……んっ、や、……いやぁ……っ」
 ねとねとと舐めまわす舌から逃れようと、左右に身悶えれば、彼は体重をかけて押さえこみ、小さな実をますます熱を込めてしゃぶってきた。
「やあぁ……っ」
 動けなくなったミレーネは、甘ったるい声を張り上げる。
 逃げられないまま、信じられないほど敏感になった突起を、溶けてしまうのではないかと思うほど長い時間をかけて、じっくりと舐られる。
 逃しようのない官能に追い立てられ、ミレーネの腰のあたりがずぅんと痺れた。気持ちよくてたまらない。
 胸の頂から、ねっとりとした愉悦が湧きだし、身の内に溜まっていく。
 気がつけば、引き結んでいたはずの口は切なく息をこぼし、はしたない声を漏らしている。
「……はぁっ、……ぁ、やっ、……やだぁ……っ」
「さえずるときはイイ声じゃないか」
 ウォルフは上機嫌で言った。
「いつも憎まれ口ばかりで、可愛げないのに」
 ミレーネは涙をにじませ首を振った。
 自分が信じられない。
(胸を舐められるのが、こんなに気持ちいいだなんて……っ)
 ひくひくと上体が勝手に動いてしまう。
 思いもよらない愉悦があふれ出し、身体の芯からとろとろにしていく。
「ふぁ……」
 初めての快楽に蕩けた顔を見下ろし、彼は反対側の乳首に移る。
「もっと声を聞かせろ」
「ぁっ、ぁっ……やぁぁ……っ」
 まだ柔らかい突起を育てるように、ねろねろとそこばかりを舐られ、甘い旋律が湧き出す。
 身体が熱くてたまらない。
 ベッドの上にいるというのに、どこかへ落ちていきそうな気分になり、気がつけばウォルフのシャツを強く握りしめていた。
 彼はと言えば、ミレーネの胸を舐めまわしながら、反対側の胸をやわやわと揉んでいる。
 大きく育てるつもりなのか、まだささやかなふくらみを手のひらで包み込み、根元から揉み上げるようにして執拗に捏ねまわしてくる。
 汗ばんだ柔らかい肉がつかまれ、彼の指の動きにむにゅむにゅと形を変える様を見ているだけで、恥ずかしさのあまり眩暈がした。
 しかし丹念な手戯の末にふくらみは芯から揉みほぐされ、身体の奥が卑猥に疼いてたまらなくなる。
「は……あ、ぁっ……いや……っ」