龍神の最愛花嫁
鱗を盗んだら、なぜか求婚されました
涼原カンナ イラスト/獅童ありす

いつのまにか尖ったそこは、彼の指に触れられただけで、チリチリとした熱感を生みだす。
「んんっ……」
 未知の感覚が恐ろしくて、明珠は彼の胸を押した。
 藍珪はくちづけをやめてくれたが、手は乳房を揉んだままで瞳を覗いてくる。
「明珠?」
「い、嫌なんです。身体が変な感じになって……」
 半泣きで訴える。
 自分で胸に触れても、たいした変化は起きない。
 それなのに、藍珪の大きな手がすっぽりと乳房を覆えば、それだけで体温が上昇するし、じっとしていられなくなるような気持ちになる。
「変な感じになるのは、正常だ。だから、安心していい」
 藍珪は自信満々に断言する。
「そうですか?」
「ああ。俺たちはつがいなんだから、よけいに気持ちよくなっているんだろう」
 明珠は目をパチクリさせた。
「つがい?」
 つまり、伴侶だから、身体がおかしくなるのだろうか。
「俺はおまえに官能を味わってほしいんだ。そして、子どもを産んでもらいたい。つがいでなければ、俺の子を授かれないからな」
 藍珪は明珠の衣の合わせに手を忍ばせてきた。
 何枚か重ねた上衣を巧みにかきわけて、素肌に直接触れてくる。
 明珠の背が水から飛びあがる魚のように跳ねた。
「あっ……」
 甲高い声が漏れてしまい、その声の甘ったるさに赤面してしまう。
 藍珪は薄暮に白く浮かぶ明珠の乳房を揉みしだく。張りつめた乳房の先で硬く凝った乳首もつまんで、ねじった。
「やっ……ああっ……」
 ピリッと走った刺激が下腹にまで轟く。
 腹の奥深くがじゅわっと熱くなり、腰ががくんと揺れる。
 彼は、明珠を抱えて雲の上にそっと寝かせると、覆いかぶさってくる。
 ついばむようなくちづけをされながら、帯を解かれて前をはだけられ、明珠はふるりと頭を振った。
 藍珪は桃の皮を剥くように明珠の衣を剥ぎ取ってしまう。
 裙も脱がされてしまえば、素肌があらわになった。
 全裸を他人に見せたことなどなく、とんでもなく恥ずかしい。
 天は夕暮れの気配を帯びているが、まだ明るく、明珠の裸身は隅々まで彼のまなざしにさらされている。
 羞恥のあまり逃げたくなっても、藍珪は体重をかけていて、身じろぎもろくにできない。
 それをいいことに、彼は両手で明珠の乳房をこねまわす。
 乳首を乳暈からひねりだし、指先で転がしたり、先端を埋めてみたり、まるで玩具のようにもてあそんでいる。
 明珠は背を波立たせた。
 雲の上は弾力があって、明珠の動きも受け止めてくれる。
 だが、彼から与えられる快感はどこにも逃げてくれなかった。ふくらみを揉まれれば、怪しげな熱が腹の深部にたまっていくばかりだ。
 藍珪はおもむろに明珠の乳房に吸いついてきた。
 先端を食べるように咥えられ、乳首をきゅうっと吸われる。
「やあっ……あああっ……」
 唾液まみれにして舌をまとわりつかせ、棒つき飴のように舐めてくる。
 明珠は息を乱して彼の下から逃げようとした。
「いやっ……そんなにしたら、変にっ……」
「変になっていいんだぞ。そのために舌を使っている」
「で、でもっ……」
 丸くなった頂を根本から先端まで何度も舐められると、めまいがするような愉悦に襲われる。
 明珠は首を左右に振って、拒絶を示した。
「んん……だめですっ……嫌っ……」
 藍珪の舌や指が、自分の中から得体の知れない感覚を引きだすようで、恐ろしい。
「やめられるわけないだろう。おまえからはうまそうな匂いがする。熟した桃みたいな香りだ」
 藍珪は明珠の乳房の間に顔をうずめて深呼吸する。
 肌に響く刺激に、明珠は唇を嚙んで全身を震わせた。
「ああっ……」
「……俺をおかしくする香りだ、やはり逆鱗を飲んだからか」