王子様は淫魔の取り替えっ子でした
貴婦人は夫のニョロに煩悶し
あまおうべに イラスト/霜月かいり キャラクター原案/のどさわ

 レティシアは手をのばして彼の頬にふれた。
 エセルはその手を取って恭しくキスをする。その間もサファイアブルーの瞳がこちらから逸らされることはない。情熱的な恋人のような――でもどこか獲物を狙う狩人のような、艶やかな眼差しに胸が高鳴る。
「――――……」
 くちびるが重なり、高鳴っていた胸が甘く痺れた。
 ついばむような優しいキスにしばし酔いしれる。
 が、それも長くは続かない。下腹の奥が焦れてきた頃、舌先が歯列を割って潜り込んできた。熱い舌がなまめかしく口内を愛撫する。淫らな感触に背中がぞくぞく震えた。
「ん、……」
 そもそも自分よりも大きな身体にのしかかられ、レティシアは身動きが取れない状態である。
 相手になるべく官能を与えたいのが淫魔の本能というが、エセルはレティシアを腕の中に捕らえ逃げ場を奪ってより激しい官能の中に追い込んでくる癖がある。
 今もそうだった。頭の両脇に腕をついた状態で、思う存分くちびるを貪られる。両頬を大きな手ではさまれているため顔を背けることもできない。
「ふ……、ん……っ」
 口蓋から舌の裏まで、肉厚の舌に口内をたっぷりと愛撫される深いキスは心地よく、早くもどうにかなってしまいそうだ。
 縦横無尽に求めてくる淫らな口づけからは、久しぶりに愛を交わせる歓びがこれでもかと伝わってきた。彼がそれほどまでに歓んでくれていると思えば、感動で胸が弾けそうになる。
 レティシアは硬くてたくましい身体の重みをうれしく受け止めた。
 彼の背に腕をまわすと、エセルのくちびるがやっと離れ、レティシアの耳朶から首筋をたどり始める。
「……は、ン……っ」
 濡れた感触のくすぐったさに思わず声をもらせば、そこから精気を吸われた。まるで、わずかな愉悦も惜しむかのように。
 そして名残惜しそうに身を離すと、エセルはゆっくりとレティシアのドレスを脱がしてきた。
 レティシアも自ら手伝ったものの、焦ってうまくいかず、もたもたしてしまう。かすかに震える手に、彼が手を重ねてきた。
「緊張してる?」
「そりゃあ……」
「大丈夫。私は慣れてるから」
 さらりともれた言葉に、レティシアは「むむ?」と上目づかいで見上げる。
 彼はくすりと笑みをこぼした。
「何度も何度も、数えきれないほど君と愛し合った。だから君がいやなことは決してしない。君が好きなことだけする。――心配しないで」
 話をしながらエセルも脱いだ。その間、視線はずっとこちらに向けられている。いよいよ食べられてしまいそうな気配にドキドキする。
 覆いかぶさってきたエセルは、高鳴る鼓動に上下する乳房を大きな手で包み込んだ。弾力を堪能するかのように、むにむにと卑猥な手つきで胸の果実を揉みほぐしてくる。
 同時に先ほどのキスですでに痛いほど硬くなっていた先端を指先で捏ねられて、じんじんと甘い愉悦に身を震わせた。
「……んん……っ」
 感じている顔を見ながら反対側を口に含まれる。熱くぬれた感触に包み込まれ、ちゅくちゅくと柔らかく吸われ、耐えがたい甘い感覚に身をよじる。
 すると膨らみを執拗に揉みしだいていたほうの手を強く感じてしまい、自然と息が上がる。その瞬間、乳首をきゅっとつままれて思わず声がもれた。
「ぁ、ぁふ……っ」
「声、もっと聞かせて……」
 エセルが、ねだるようにささやいてくる。
「君はいつも、我慢しようとするから……」
「でも……、恥ずかし……っ」
「だから夫婦だけに許されてるんでしょ?」
 甘い目でのぞきこまれ、レティシアの心臓が跳ねる。
「感じたら、感じたって教えて。そのほうがうれしい」
「うれしい……?」
「君をうんといい気持ちにさせたい。それが淫魔の本能だからね」
 彼の片手が意味ありげに腰をたどり、ねっとりと大腿をなでまわし、膝の裏をこちょこちょくすぐってくる。
「ぁン……」
 固く閉ざされていた膝が思わず緩んだところで、彼は自分の膝を入れてきた。手は内腿を滑るように這い上がり、脚の付け根にたどり着く。――本当に慣れている。
 そのうち指先でそっと割れ目にふれられる感触があり、息を詰めた。
「――――……っ」
 長い指は、ぴったりと閉じた合わせ目を慎重になぞり、溝の中に潜り込んでいく。
「……けっこうぬれてる。キスのせいかな?」
 何気ない問いと共に、溝の頂にある小さな突起をなでられ、快感が弾ける。レティシアは「あぁっ」と身をこわばらせた。蜜を絡めた指で触れられたのは、ぷくりと膨らんだ性感の源である。
 と、そこばかりねんごろに転がされ、堪えきれない嬌声がもれる。
「ひっ、あっ、ぁっ、……ぁん、ァん、んっ……っ」
 彼の指が動くたびにちゅくちゅくと粘ついた音がたつ。ひくひくするレティシアをエセルが片腕で抱きしめ、ひときわ淫靡な声を耳に注ぎ込んできた。
「感じやすいね。それとも君の身体は私を覚えてるってこと……?」
 ささやきも、彼の身体も熱い。たくましい胸に頬を押しつける形に眩暈がした。
 その間もぬめりを帯びた指先に小刻みな振動を送り込まれ、淫芯がどんどん甘く尖っていく。焦らすようにじっくりと、しつこく続けられれば、次第に強く深くなる官能に腰から力が抜けていった。
「あっ、あぁっ、あっあっ、ぁぁっあ……っ」
 熱い蜜がとろとろと際限なくあふれ出し、ひとりでに腰が揺れてしまう。そんな反応まで、密着した身体に伝わっているかと思うと恥ずかしい。
「やぁぁ、ダメ……!」
 ほどなく四肢の先まで甘い快感が到達し、弾けた歓喜で脳裏が真っ白に染め抜かれた。レティシアはあえかな声をもらして息を詰め、身体を小刻みに震わせる。
 その身体をエセルはぎゅうっと抱きしめ、キスをしてきた。
「美味しい……」
 耳元に熱いため息がふれる。とろりとした目で余韻に浸る妻のこめかみにもキスをして、彼が訊ねてくる。
「気持ちよかった?」
「…………っっ」
 訊くな。言わせるな。……そう思いつつ、感じたと教えたほうがうれしいという言葉を思い出し、か細く応じる。
「…………うん」
 エセルはサファイアブルーの瞳を細める。
「恥ずかしがる顔、永遠に見ていたいね」
「バカ……」
 小さなつぶやきをこぼした瞬間、息を呑む。
 ぽってりと腫れて敏感になっている花弁の中に、エセルがぬぶりと指を挿しこんできたのだ。
「はぁ……っ」
 襞の深いところで二本の指を感じてしまい、目をさまよわせる。
 人としての意識がないエセルに抱かれたことはあるものの、あれはもっと一方的で問答無用だった。こんなふうに優しく淫靡な触れ合いは経験していない。これはこれでどうしていいのかわからない。
 頬を染めて視線を泳がせるレティシアを、エセルがずっと甘く見つめているとなれば、なおさらだ。
 指を増やされ、媚肉をほぐすように推しまわされると、圧迫感の中から快感が湧き出し、全身のすみずみまで甘く広がっていった。
「……んっ、き、気持ち、いい……っ」
 勇気を出して自らそう伝える。エセルはうれしそうに笑った。
「本当? そんなふうに言われると、もっとがんばりたくなる」
(もっと? ……って、どういう意味?)
 そう考えた矢先、彼はレティシアの両脚を大きく開いた。驚いているうちに、達したばかりでジンジンと痺れていた淫核が熱い何かに包み込まれる。
「あっ!? やっ、うそ……っ」
 エセルが蜜口にしゃぶりついたのだ。ありえない光景に、甘い気持ちも吹き飛んでしまう。
 だが硬く尖った淫核を舌で柔らかく押しまわされれば、すぐに途方もなく甘苦しい陶酔の中に引きずり込まれた。
「あぁっ、やあ、ぁっあぁっ、なめるの、ダメ! あぁっ、なめちゃ、いやあぁ……っ」
 高く啼きながら、枕の上で左右に頭を大きく振る。
 こんな快感は強すぎる。そもそも彼がそんな場所に顔を伏せている光景を見る羞恥に耐えられない。身をよじって逃げようとするも、両腿を押さえこまれており動けない。
 逃げ場のない快感は内にこもって煮詰まっていくのだと思い知る。
 舌先で器用に弾かれ、ねろりねろりと押しまわされ、強烈な淫戯に腰が勝手に跳ねてしまう。その間に彼は、ふたたび指を二本、中に入れてきた。
 淫路は待ってましたとばかり、きゅうきゅうと指を締め付ける。
 舌の動きのみならず、媚肉をかきわける手つきもまた淫猥すぎて快感が止まらない。
 言葉通りエセルはレティシア自身よりも性感を心得ているようだ。淫芯の裏あたりをゆるゆると刺激されると、感じすぎて腰が跳ねてしまう。
「はぁ、ぁン……!」
 顔を持ち上げたエセルが、得意そうに言った。
「君はこうして、内側と外側からここをいじられるのが好きなんだよ」
 イタズラめいた微笑みは顔が麗しい分、壮絶に色っぽい。
「こうされると際限なくイっちゃうんだ」
「エセルにこっ、こんなこと、されたら、当たり前……っ」
「私のことが好き?」
「あぁっ、あ、愛っ、してる、わ……」