2/3up!
eシフォン文庫1周年記念 春のシフォンまつり情報ページオープン!
電子書籍オリジナルレーベルとして始動したeシフォン文庫もついに1周年♥
SSが追加された新装版の配信や既刊の割引などのキャンペーンを実施します!
※終了後もバナーをクリックすれば詳細を確認できます。
「やだ、だめぇ!」
遮るもののない抽挿は、これまでに感じたことのない強烈な刺激で、璃杏の肌がざっと粟立つ。
「たくさん突いて、とおっしゃったのは璃杏様ですよ?」
「でも、怖い、怖いのっ……!」
「大丈夫です。私がいます。ずっと抱いていますから、存分に乱れて構わないんです」
央玖は璃杏の頬に口づけ、雫れた涙を舌ですくい、ぐしゃぐしゃになった髪を撫でつけた。
腰使いは凶悪といってもいいくらいなのに、そんなふうに優しい仕種で触れられると、璃杏はますます混乱した。
彼のすることならすべて受け入れたいと思う心と、大きすぎる快感に尻込みする体が、相反してわけがわからなくなる。
「この姿勢だと、こんなに深くまで届くんですね……」
央玖が腰を突き上げながら、感嘆したように言った。
「わかりますか? 奥のほうで……ほら、こんなに当たるんです」
ごつごつと、扉を叩くのにも似た振動が、璃杏の胎内に響いていた。
内臓を直に掻き回されているような、不安のほうが勝る快感。
ぺたんと平らかな下腹が、内側から突き破られそうな錯覚に、璃杏は心底から怯えた。
「も、やめて……」
璃杏は弱々しい力で、央玖の胸を押し返した。
「この恰好、嫌……脚、いっぱい開かされて、痛いのぉ……」
「注文の多いお方だ」
駄々っ子を見るような目になったものの、央玖は璃杏の右足を肩から下ろした。ほっとして力を抜いた瞬間、璃杏の上体は引き起こされた。
「えっ……?」
「そんなに文句ばかりおっしゃるなら、私は何もしませんよ?」
仰向けに寝転んだ央玖の上に、璃杏は座り込まされていた。もちろんその中心を、硬い肉の杭で貫かれたままだ。
「腰を振りなさい」
冷静で容赦のない命令だった。
「そ、んな、できないっ」
「今夜は璃杏様が私をいかせるんです。そうでないと、一晩中このままですよ?」
璃杏はさっと青ざめた。彼は本気で口にしている。
「離して、嫌ぁ!」
逃れようと暴れるも、央玖の手はがっしりと璃杏の腰を掴んで、その抵抗を許さない。
「もがくだけもがきなさい。どこに当たると気持ちいいのか、そのうちにわかるでしょう」
恐ろしいことに、央玖の言うとおりだった。
身をよじるのは快感を追いかけるためではないのに、押し広げられた内側が擦れて、むず痒い刺激に苦しめられる。
「止まらないで。もっと動いて」
「ん……んんっ」
「我慢をするほど苦しいだけですよ」
「無理……無理なのぉ……」
「私のこれを舐めることはできても、自分から腰を振るのは恥ずかしい?」
璃杏は涙目でこくりと頷いた。
自分でも羞恥の基準がどこにあるのかわからないが、今は央玖が冷静だから、余計にいたたまれないのだ。
「なら、少しだけ手助けをしましょうか」
央玖が璃杏の腕を掴み、前屈みになるように引き寄せた。ふるりと揺れる小ぶりな乳房が、央玖の目の前に突き出される格好になる。
「ご自分ではご存じありませんか? 普段私と繋がっているときでも、璃杏様は感じてくると、自然に腰が振れているんですよ……?」
央玖の手が胸を這い、硬くすぼまった乳首を甘噛みされながら吸われる。
新しい導火線に火がつけられたような心地だった。堪えようとしても嬌声が洩れ、じっとしていられずに体が揺れる。
「前後だけではなく、上下にも動けるでしょう?」
腰からお尻にかけて撫で下ろされ、ぱしんと軽く叩かれた。痛みにというよりも驚きに、反射的に腰が宙に浮く。
央玖の屹立が抜けそうになるぎりぎりのところで、
「そのまま落ちて」
催眠術にかけられたように、璃杏の膝から力が抜ける。再び根本まで呑み込まされて、熟れた内壁が淫らにひくついた。
「それを繰り返すんです」
「ん……うっ……ぁああ……」
璃杏はもう考えることを放棄した。
央玖の胸に手をついて、言われるがままに腰を振りたくる。
そうして動いているうちに、ぬかるむ隧道が、央玖のものに寄り添ってきゅうきゅうと狭まっていく気がした。食いちぎろうとするかのように、貪欲に絡みついて離さない。
「璃杏様……そんなに締めつけては……」
「知ら、ない……勝手に、なるのっ……」
央玖がぐっと奥歯を食いしばる。
次の瞬間、真下から抉るように突き上げられて、璃杏は高い声を放った。璃杏の淫靡な姿に煽られた央玖が、主導権を奪い返したのだ。
「ああっ、あっ!」
間断のない律動を送られて、体を起こしていられなくなる。広い胸に倒れ込む璃杏を、央玖は力いっぱいに抱き締めた。
唇を貪り合う。
視線が絡む。
快感に溶けた瞳の色で、互いの極みが近いことを、言葉にしなくとも通じ合う。
「央玖……ねぇ、一緒に……」
切なくねだれば、央玖の突き上げはますます勢いを増し、暴れ馬の背に乗っているように、璃杏の体は大きく跳ねた。
こんなことばかりしていたら、どうにかなってしまいそうだった。
朝も夜もなく、臥牀から一歩も外に出ないで、永遠に裸で絡み合っていたい。
「あぁ、だめ……央玖、央玖も……」
「ええ――受け止めてください……!」
深く深く穿たれた最奥で、央玖の灼熱が弾けた。
「あ、いや、だめ……!」
なんとかやめさせようと脚を閉じかけるが、反対に大きく開かされた。蜜で濡れそぼった花びらのあわいをつつく楔が、やけどしそうに熱い。
「ひ……あ……」
「さて、おまえの中がどんな具合か確かめてやろう」
尖りきった鬼頭が肉の狭間を割って侵入する。指とは段違いの太さと衝撃に、雪娥は背を反らした。
「ああー……いや……あー……!」
ぬぐぬぐと圧力を増す肉塊に無垢な膣襞が割られていく。初めて受け入れる男の太さと熱さに、天井を仰いで悲鳴をあげた。
「いや……だめ……だめぇ……」
「何がだめだ。いいかげんに処女の真似はやめ……」
肉棒を無慈悲に突っこんでいた玄陽が唇を閉ざした。彼を呑みこむ淫らな口をじっと見つめている。
「や、そんな、見ないで……!」
「まさか……そんなはずはないだろう……」
呆然とつぶやいて、それでもなおまじまじと雪娥の秘処を凝視する彼に、雪娥は不安になった。
「あの、何を……」
「これは何だ」
彼は大きくくつろげられた膣口の入り口を指でなぞった。敏感になった部分にふれられて、たまらず悲鳴をこぼす。
「ひゃ……!」
「どうして血が出てる」
目の前に突き出された指には、鮮血がついていた。確たる証拠を突きつけられた犯人のように、瞳を揺らしてしまう。
「そ、それは……」
「まさか、男を挿れたことがないのか?」
直截にたずねられ、しばし黙りこんだ。彼からわずかに目をそらして、懸命に言い訳をひねりだす。
「その……た、体調が悪くて……」
「体調が悪いから、血が出たわけか」
男根を無造作に進められ、粘膜をこすられる痛みに眉を寄せた。
「い、痛っ……」
「また血があふれてきたぞ。おい、本当のことを言え」
じれたように揺すられて、とうとう悲鳴をあげた。
「そ、そうです。わたしは初めてで……!」
叫んだとたん、彼が肉の剣を素早く抜いた。痛みから解放された安堵と中途半端なところでやめられた喪失感があいまじり、複雑な気持ちになった。
玄陽は雪娥に背を向けてあぐらを組んだ。雪娥はあわてて開いていた脚をぴったりと閉じ、何度か呼吸する。
(どうしよう……)
認めなければよかったのだろうか。けれど、身体のほうが正直に暴露してしまったのだから、今さら言い訳など無駄だろう。
天人が踊る天井を見ていたら、目の際から涙がこぼれた。そうしていると、衣を整えた玄陽がくるりとこちらを向いてにじりより、はだけた衣の衿を合わせてくれる。
「じ、自分でしますから……!」
気恥ずかしさに飛び起きて、雪娥はその場に座ったまま衣を着直し、帯を締めた。あぐらをかいた彼の視線を感じて、肌が熱くなった。
「……すまなかった」
玄陽は簡潔に言ってから、頭を下げる。
「痛かったろう。悪かった」
「や、やめてください。その……わたしは、大丈夫ですから」
痛かったし、恥ずかしかったが、彼の愛撫に身をよじって応えてしまったのだ。今さらながら自分の醜態を思い出して、衣の裾をきつく合わせてうつむいた。
肌をあわせていたときの肉欲に満ちた空気が急速に浄化されていく。彼との間に見えない壁ができていった。
「どうして処女なんだ」
核心を衝く質問に雪娥は彼を見た。ひどくまじめな顔つきに困り果ててしまう。
「そんなことをどうしてお聞きになるんですか?」
「重要なことだろう。何人もの男を閨に引き入れる姦婦が処女だなんて、おかしな話だからな」
「……さ、最後までしなかっただけですわ」
ひねりだした答えは一番もっともらしいはずだったが、彼の目に浮かぶ疑念は少しも消え去ってくれない。
「あんなに色っぽく乱れるさまを見て、最後までやらない男がいるはずがない」
「……玄陽さまはやめられたではありませんか」
屁理屈じみた返答に、彼が眉の間を寄せた。
「今回は事情が事情だろう」
「でも、やめられたのは本当で……」
「俺の質問に答えろ」
雪娥をまっすぐ射貫く眼差しには、獲物を狙う鷹か鷲のような強さがあった。雪娥は唇を噛んで、わずかにうつむく。
(この人に見つめられると、どうしてこんな気持ちになるのかしら)
誰をもかしずかせてきた自分がかしずく立場になったのだと思い知らされると同時に、身の丈に合わぬ地位からの解放感を感じさせられる。
もはや皇后という呼称を持たない、ただひとりの女なのだという事実を心に刻みつけられてしまう。
(それでも……)
守るべきもののために、またしても言葉をもてあそぶ。
「わたしは誰からも愛されない女でしたから」
そう答えると、玄陽は顔をしかめた。
「嘘はやめろ」
「嘘ではありません。わたしは……皇帝陛下にも、他のどのかたにも愛されなかったんです」
それから静かに顔を伏せた。両手で面を覆う。
そうしていると、昔を思い出した。
幼なじみが皇帝になると決まったとき、求婚されたのだ。
『わたしには雪娥が必要だ』と。あのときは今日のような日が来るとは思わなかった。
皇帝と皇后として、国を変えられるのだと信じていた。王たちを従える皇帝という本来の姿に戻さなければいけないと語り合っていた。
それなのに、今、雪娥はひとりで異国からの侵略者と向かい合っている。
わずか四年前の過去が十年も昔のように思えた。涙が自然とあふれた。
指の隙間から涙の雫がこぼれて、嗚咽をこらえる肩が小刻みに震える。
玄陽が近づく気配がした。そっと抱きしめられて、いよいよ涙が止まらなくなった。
雪娥は彼の胸にもたれ、悲しみをすべて涙に変える勢いで泣き続けていた。
レナルドはいじわるな指先で愛液に濡れた花びらをくすぐると、そのままアリスの秘されたところにゆっくりと指を沈めた。
「あ……」
わずかな異物感に、ぴくんとアリスの両脚がこわばった。
「や……、ゆ、指、入って……」
「そうだ。いやらしく濡れたアリスのなかに、俺の指が入ってる。きみのここはすごく熱いな。……それにしっかり吸いついてくる……。よく締まって……、こんなところに俺のを挿れたら、気持ちよすぎてすぐにいってしまいそうだ」
レナルドはゆっくりと指を抜き差しして愛液に濡れた媚壁をこすり、アリスの性感を少しずつひらいてゆく。
「あ、あぁ……、ん、やめて……レナルド様……」
アリスは自分のなかでうごめく彼の指を感じてうろたえる。けれど異物感は徐々に愛液に蕩けて心地よさに変わり、思わず甘い溜め息をこぼしてしまう。
「ミレーヌはこのあとジャンの寝室に連れ込まれ、みだらな性技に導かれて意識が飛ぶようなめくるめく絶頂を迎える。きみもここで体感してみたいか、アリス?」
レナルドは低くて甘い声で誘いかけるように囁いてくる。
「ん……、いや……、こんなところでするのは……だめ……」
アリスは書棚にすがるような体勢でいやいやをする。ここは図書室なのに。
「しっ……。静かにしていないと、ジェシーたちに気づかれてしまうよ」
レナルドは警告とはうらはらに、思わせぶりな指遣いでアリスのなかをこすりたてる。衣擦れの音と愛液が混ざりあうクチュクチュという淫らな音が聞こえはじめ、はしたないと思うのにかえって興奮してしまう。
「だったら……、はぁ……んっ……、もうしないで……あぁっ……」
アリスはこみあげる快感がたまらなくなって、書棚につかまったまま背をのけぞらせる。
「きみがこんなにもたくさん濡らして俺を誘うせいだ。……ほら、いやらしい蜜の音が聞こえるだろう?」
「はぁ、んっ、あ……、あっ、ああぁ……」
レナルドが指先を沈めてぬぷぬぷと大胆に動かすので、なんとも淫靡な音がする。蜜洞をゆさぶられる振動と、レナルドの指の付け根に圧されて花芯までが刺激をうけ、アリスはえもいわれぬ快感におそわれる。
「あ、あ、もう、おねがい……、指、動かしちゃ……」
アリスはどうにかなってしまいそうになって、背後から秘処に伸びたレナルドの腕を片手で押さえつける。
「どうしてこんなに濡れて気持ちいいのにいやがるんだ。かわいい声まで出てるのに」
「だって……恥ずかし……、はぁ、はぁ……」
こんなところで秘処を弄られて感じてしまうなんて。
「俺もおなじだ。さっきからきみが色っぽすぎてずっと欲情しっぱなしだよ。きのうはせっかくの初夜なのに、おあずけを食らわされてしまったしな」
レナルドは、腰を抱いていた手をアリスの首筋に這わせて横髪を退けると、桃色に色づいたアリスの耳朶にお仕置きと言わんばかりに軽くかみつくような口づけをほどこす。
「あ……ん……、ご、ごめんなさ……」
甘い痛みに痺れて、アリスは首をすくめる。
「いいんだよ、アリス。……俺はきみの寝顔なら一晩中見ていても飽きない。ゆうべもきみとの脳内情事で存分に楽しんだから気にしないでくれ」
「ん……レナルド様の……変態……っ」
「そうだな。眠っているきみのここに俺のを突っ込んで、何度勝手に犯してしまおうと思ったことか。でもアリスの寝顔がかわいすぎてやめた」
レナルドは剣呑な言葉とはうらはらな優しい口調で言いながらも、アリスの顎をとって顔をうしろをむかせると強引に唇をふさいだ。
「は……ふ……っ……」
秘処を弄られ、唇をむさぼられて、アリスの五感はどんどん彼に支配されてゆく。
レナルドは熱い舌でアリスの口内を淫らに愛撫してくる。アリスの理性はみるみる失われて、はしたなく舌で応えて彼を迎え入れてしまう。
「ああ、キスしだすととまらないな。今日こそは抱くよ、アリス。ゆうべの妄想をぜんぶ現実のものにさせてもらう。きみのここをもっと濡らして、いやらしいことをたくさん言わせて何度もいかせてやるから……」
レナルドはいくらか攻撃的になって、秘処をもてあそぶ指の動きをいっそう大胆にする。
「ん……ふぅ……ぁふ……っ……」
愛液に濡れた指の腹で花芯を押しまわされ、前庭の奥のあたりをぐりぐりとこすられ、蜜洞からはクチュクチュとは淫らな音が漏れる。
唾液をからめあうような淫蕩な口づけと、性感を狙った指戯に翻弄されて、アリスはどんどん気持ちよくなってしまう。
「はふ……はあぁ……あ、だめ……、もう……しないで……」
アリスは貪欲な口づけから逃れたくて顔をそむけ、前に向きなおる。
「いやだ。あと少しだけさわらせて。きのうはこんなふうにきみを愛撫したくてちっとも眠れなかったんだ。俺の指がここにふれると、きみがどんな顔をしてどんな声を出すのかもっと知りたい。いまからでいいから教えて?」
「んぁ……はぁ、あ、ん、あぁっ、そんなの……知らなくて……いいの……、いやなの……」
「そう、期待通りの甘くていい声だな。潤んだ瞳も色づきはじめたりんごのような頬も想像してたとおりだ。でもここだけは俺の予想よりもずっといやらしく濡れてる。ほら、こんなにも蜜をあふれさせて。アリスのからだは敏感で淫乱だな」
レナルドの指の付け根には、アリスのなかからあふれた蜜がとろりと伝っている。
「や、いや……」
アリスははしたない自分を見られた気がして恥ずかしくなり、涙目になってしまう。
「どうして。かわいい妻が感じやすい女で俺はすごくうれしいよ?」
「ん……あぁ……、もう……指、挿れちゃ、いや……、なか……さわったりしないで……」
とどまるところを知らない淫らな指戯に、内腿がふるふると震える。
「こんなのただの前戯の練習だ。夜になったらもっとすごいのをここに挿れてやるから」
レナルドが耳孔を舐めんばかりの距離で、熱い吐息とともに欲情を訴えてくる。
「あ、あ、あぁっ、だめ……、はぁ、はぁっ……」
「今日の夜はぜったいに待ってやらないよ。いやがったって、ここに俺のを咥えこませて、甘い声で啼かせてやるから。……ああ、でも、できればいますぐに見たいな。どうする、もうこのままここでしてもいい、アリス?」
「ん……、いや……、いや……」
アリスは胸を激しく上下させて悶えながら、自分のからだがどうなるのかが怖くて弱々しくかぶりをふる。
レナルドがこんなにもいじわるに攻めてくるのは、やっぱり例の強迫観念からなのだろうか。
「ふ……ぅ、……んっ――」
熱く硬い剛直に繊細な部位をこすりたてられ、ジュリエットはまたしても、こぼれる声を殺さなければならなくなった。
スカートの前の部分はすとんと下りたままである。庭園から見上げただけではバルコニーで何が行われているのか、すぐには判別がつかないだろう。
しかし腰砕けで手すりにしがみつくジュリエットの様子を見れば、スカートの中で何が起きているのか一目瞭然のはずだ。
「ん、ぅ……っ」
羞恥のあまり真っ赤になるジュリエットを、ティボルトが笑った。
「ロミオに声を聞かせてやれ。あいつがぐずぐずしている間に、おまえが誰のものになったのか、よく見せてやれ」
無情な言葉と共に、ティボルトは蜜口に怒張をあてがい、後ろからぐぷぐぷと押し挿れてくる。
「あぁ……っ」
熱いものにずぶずぶと拡張されていく感覚に、背を仰け反らせる。
「あ、……んっ、ぁ……ぁっ、ぁ……!」
「おまえは恋をすることに憧れているんだ。年頃だからな」
突き出すような形の腰を手で引き寄せられ、同時にずしりと重いもので奥の奥まで貫かれた。最奥をずん、と穿たれる感覚にぶるりと背筋がふるえる。
「は、ぁ……ぁ……っ」
根元まで埋め込んだところで、彼は蕩けた花筒を自らの剛直になじませるように、しばし動きを止めた。
「だから女みたいにきれいなあの顔で、少し甘い言葉をささやかれただけで、その気になったんだろう?」
「――……っ」
声が、熱く触れている下肢からも伝わってくることに息を詰める。ゆるく生じた快感の波にたゆたいながら、ジュリエットは力なく首をふった。
「ちが……ロミオとは、そんなんじゃ……っ」
「隠しても無駄だ。でなきゃ毎回毎回、なぜあいつをかばう?」
「――かばって、なんか……っ」
かすれた反論は、ずくずくと始まった突き上げにかき消される。熱塊が蜜壁をこすり、奥を抉るごとに、下腹の奥で甘苦しい官能の火がゆらめく。ずぶりと奥深くまで突き立てられ、さらにそこでぐりぐりと押しまわされると、淫靡な熱はいっそう燃え立った。
「や、あっ……ぁぁぁ……ン」
静かなバルコニーに響き渡る、ぐちゃぐちゃという淫らな水音に耐えられず、手すりをつかむ手に顔を伏せる。
快楽と非難とを同時に与えてくる彼の仕打ちに、泣きたい思いで首を横に振った。
「……彼は、悪い人じゃない、わ……!」
モンタギュー家の跡取りであるロミオがジュリエットに接触してきたのは、キャピュレット家との不毛な争いに何とか終止符を打ちたいと、相談するためだった。
それはみんなにとっていいことのはず。そう思ったからこそ、だからできる限り力になりたいと考えただけだ。
……その結果、「明日結婚しよう」という話になったのは、確かに少々突飛すぎたかもしれないが。
「あいつはキャピュレット家の当主の娘を落としたと、世間に触れまわりたいだけだ」
腰をつかまれ、ずくずくと小刻みに奥を突かれ、次第に脚から力が抜けていく。腰をつかむティボルトの手に支えられる形で、突き出した秘部をじゅくじゅくと抉られる。
「――――、っ……!」
弱点を知りつくした剛直に、奥の感じやすいところを的確に穿られ、言葉もなく感じ入った。すっかり蕩けたジュリエットのそこは、うれしそうに蠢いて彼のものにからみつく。
きゅうきゅうと雄茎を吸い上げる自らの反応がせつなく、官能だけではない涙がこみ上げてきた。
「そんなんじゃ、ない……っ」
愉悦にうわずった声を張り上げると、彼はふと腰の動きを止めた。
「――すっかりのぼせているようだな……」
欲望にかすれたつぶやきに、首を横に振る。
「ティボルト――……っ」
ふいに途切れた律動を乞うように蜜口がわなないた。
ジンジンと痺れる蜜洞の奥から、喜悦の余韻がさざ波のように生じる。ジュリエットは手すりにしがみついて唾を飲み込み、必死にそれをこらえた
「も、もういいっ。……ほっとい、て……っ」
ロミオにのぼせているだなんて、見当ちがいもいいところだ。
ジュリエットに初めて快感を教えたのはティボルト。処女(おとめ)を奪ったのも、彼だというのに。
「わたしが、誰を好きでも……ティボルトには、……関係、ない……!」
彼はいつだってひどく情熱的に、優しくふれてきた。そうやって、それまで家族のようにしか思っていなかった彼が男だということを、ジュリエットに気づかせていった。
そんなことをされて、彼以外の人が目に入るはずもない。
しかしティボルトは苦い顔で頭をひとつ振り、いつもの残酷な言葉を口にした。
「恋をしたいのなら俺にしておけ」
腰を支えていた手が、するりと前に潜り込んできた。淫靡な指が突起をいじり始める。包皮を剥き、頭を出した芯を指の腹でぬるりぬるりとなでられ、がくん、と脚がくずれ落ちた。
そのとたん、剛直の切っ先を、ずぅん! と最奥で受け止めるはめになり、堪える間もなく高々と嬌声を迸らせる。
「い、あぁぁぁ……っ」
「おまえにとって一番安全な男だぞ」
彼は力の入らないジュリエットの片ひざを、折ったままバルコニーの手すりに乗せた。同時に両胸をつかむようにして上半身を抱き起こす。
「やぁ、ティボルト……っ」
「昼間は恋人気分を味わせてやるし、夜は気絶するまで愛してやるし、身を引く時は身を引く」
言葉と共に、ずん、と突かれて背をしならせた。
「んぁぁ……っ」
脚を大きく開き、背後から貫く彼のもので体重を支える形である。
「おまえの評判を傷つけるようなことは、決してしない」
「やぁっ、あっ……あぁっ、……はぁぁ、ン……!」
上下に身体を揺さぶるようにしてじゅくじゅくと突き上げた後、片方の手がふたたび、愛液にまみれた花芽をぬるりぬるりと刺激してきた。
「そんな、……ぁあぁ、いっぺんに……んぁっ、や、……あ、ぁぁ……っ」
次から次へと与えられる刺激に、ぎゅぅぎゅぅと彼のものを締めつけて、身も世もなく啼きあえぐ。
逃げているのか、それとも快感を追っているのか。自分でも判別がつかないまま、抽送の動きに合わせて大きく腰がうねった。
「そら、好きなだけ達け――」
絶頂の予感にびくびくとわななく淫路に、彼はひときわ強く屹立をねじ込んでくる。
「や、あぁぁぁ――……!」
ずっしりとした熱塊に奥まで暴かれ、目眩がするほどの愉悦が全身を走り抜けた。官能があふれ出し、ジュリエットの意識を甘く激しく翻弄する。
頂を越えてからもなお、細く続く恍惚がぞくぞくと背を這う。その余韻にひたっていたジュリエットを、彼は背後から抱きしめ、低くつぶやいた。
「おまえが結婚するまで、この快楽はおまえだけのものだ――」
(ひどい――……)
朦朧とする意識の中で、じくじくと胸が痛む。
ロミオを好きになるくらいなら自分を見ろと言い、にもかかわらず、それはあくまで遊びであり本物の愛ではないなどと、臆面もなく言い放つ。
しかるべき時が来たら家のための結婚を受け入れろと――そう言いながら、ジュリエットの身も心も、こんなにも虜にしてしまうだなんて。
(ティボルト――ティボルト……!)
ジュリエットのことが大切だと事あるごとに言う。自分が守ると、何度も誓ってくれた。
それなら。
(どうかわたしを愛して……)
心の声がぽつりとこぼれる。
それこそがまごうことなき自分の本心だと気づきながら――ジュリエットは望みのない希望を退けるかのように、菫色の瞳を閉ざした。
「……ご……、ごめんなさい」
強引な真似をする申し訳なさから、ティーナは消え入りそうな声で謝罪した。
「謝らなくていい。だから、このリボンを解け」
グスタヴスは身を捩って、拘束から逃れようとしていた。縛られた上に、身体を貪られそうになっているのだ。大人しくできないのは、当然だろう。
「め、……目を瞑っていてください。その間に終わらせますから。……わ、私、グスタヴス様が、人に触れられることを証明します……」
一方的な宣言に驚愕するグスタヴスの頬に、ティーナは両手を添えた。そして、自分の顔を近づける。
「……ティーナ……?」
グスタヴスの濃い琥珀色の瞳が、ティーナを見つめていた。美しい輝きに魅せられて、眼が放せない。逃げることもできずに、ただ眼を見張ったグスタヴスの唇に、ティーナは自分のそれを重ねる。
「ん……っ」
胸が歓喜に震えた。
――グスタヴスに触れられた日から、ずっと、こうしたかったのだ。
触れた場所から、ジンとした疼きが走るようで、ティーナは陶酔のまま、グスタヴスを見つめる。彼はティーナの顔を見つめたまま、呆然としていた。
「ん、んぅ……っ」
角度を変えて、官能的な彼の唇を、ふたたび塞いだ。
「……き、……気持ち……悪いですか……」
少しだけ唇を放し、ティーナは泣きそうになりながらも、震える声で尋ねる。グスタヴスは気まずそうに眼を逸らしながらも拒絶はしなかった。
「いや……。そんなことは……」
それだけで充分だった。
グスタヴスの耳朶、顎、頬に、ティーナは口づけを繰り返す。そして、思いの丈を告白した。
「愛してます……。ずっとあなたをお慕いしていました」
グスタヴスは、驚愕に瞼を開き、信じられないものを見るような眼差しを向けてくる。
「……以前、見知らぬ人に乱暴されそうになっていたのを、グスタヴス様に助けていただいたときから、ずっとです……」
愛おしい想いを込めて囁くと、ティーナは彼の唇に深く口づける。
「んんっ……」
大きな胸の膨らみを押しつける格好で、グスタヴスにのしかかった。そして、小さな舌を懸命に伸ばして、彼の口腔を探り始めた。
「……ふ……っ、ん……っ」
熱い舌が擦れ合う。ぬるぬるとした感触に、身震いを覚える。グスタヴスは顔を背けなかった。そのことを免罪符にして、ティーナはさらに深く舌を絡めていく。
「こ……ら……っ」
だが、執拗な口づけに呆れたのか、唇の隙間からグスタヴスが窘める。それでも、ティーナは口づけをやめなかった。声を漏らす隙もないほど強く、彼の唇を塞いで、艶めかしい感触を夢中になって貪った。
「んく……、んんぅ……」
チュクチュクと淫らな水音が響く。鼻先から洩れる熱い息に、いっそう欲望が煽られていた。
抵抗できないグスタヴスの口腔を、舌先で嬲り続ける。
溢れる唾液を啜り、舌だけではなく、歯列、歯茎、頬の裏、口蓋、舌の裏、すべてを擦りつけていく。ヌルついた感触にいっそう昂ぶる。もっと深くまで彼の唇を奪いたかった。
自分の、小さな舌がもどかしい。
「はぁ……、はぁ……。……グスタヴス様……」
恍惚とした表情で、彼を見下ろす。すると、グスタヴスも肌を上気させて、苦しげに喘いでいた。もっと、グスタヴスの乱れた姿が見たい。
ティーナは情欲に火を灯されたように、夢中になって彼の首筋を吸い上げていく。
滑らかな感触に、いっそう熱が迫り上がる。
「……は……ぁ……ティーナ。……い、悪戯は……よせ。……気が済んだなら、もう……」
リネンの上で、グスタヴスが身を捩る。だが、彼の腕はリボンで固く拘束されていた。
逃げることはできない。
「……気なんて、……す、済んでませんっ。……わ、私は、グスタヴス様に子種を注いでいただくまで、やめませんから」
ガタガタと震えながらもティーナは訴える。
「……な、なにを……バカなことを言っている……」
ティーナは控えめで大人しい性格をしていた。人に逆らうことも、無理強いすることにも慣れていない。ここまでの暴挙も、生まれて初めてだった。
「私は、……ほ、……本気ですっ」
グスタヴスが子種をなくしてもいいと思っているのなら、ティーナにぜんぶ注いで欲しかった。いらないなら、捨てるなら、この世でいちばん、欲している自分に与えて欲しい。
「……わ、私のなかに、出して……いただきますから……っ」
ティーナはグスタヴスの羽織っているシャツのボタンを外した。すると、彼の筋肉質な肢体が露わになる。これほど、鍛えられた肉体をしているのならば、ティーナを楽々と運べるのも頷けた。
「……すごい……」
思わず感嘆の声を上げる。ティーナは華奢な指先で、グスタヴスの肌を辿った。触れるか触れないかの指の動きに、彼の肌が総毛立つ。そのまま乳輪に触れると、小さな肉粒が、勃ち上がった。
「……あ……、はぁ……、……やめろ……っ」
官能を揺さ振るようなグスタヴスの艶めいた呻きが耳に届き、ティーナはいっそう身体を熱くしてしまう。
「……グスタヴス様も、……ここ、感じるのですね」
乳輪の形を辿るように指で、弧を描く。すると、グスタヴスはブルブルと体を震わせる。
「気持ちいいですか……」
彼の身体に顔を寄せて、陰影のある胸元に唇を這わせる。しっとりと汗ばんだ体は熱く震えていた。ティーナはくるおしい手つきで、隅々にまで指を這わして、ついには彼の胸の突起を吸い上げ始める。
「やめろと……っ、ティーナ……く……っ、はぁ……」
口腔のヌルついた感触に、グスタヴスは胴震いしながら息を乱す。苦しげに首を横に振る姿が、あまりに悩ましくて、ティーナは夢中になって、彼の乳首に舌を這わした。
身悶える彼を窺い、舌先に触れる感触を味わいながら、なんどもなんども舌を上下に動かす。
「はぁ……、あなたはいつも、こんなことを男にしているのか」
グスタヴスは侮蔑の眼差しをティーナに向けてくる。
「ち、違います……。わ、私はグスタヴス様にしか……。……ふ、触れていただいたことも、こんなことをするのも初めてです……」
すると、グスタヴスから険しさが揺らいだ気がした。
誰でもいいわけではない。ティーナはグスタヴスでなければ、触れたいとも思わない。
こんなことをしてしまったのも、すべて彼への想いが昂ぶりすぎたせいだ。
「……このまま、……私をどうする気だ……」
グスタヴスはティーナのことを、訝しげに見つめている。
「……グスタヴス様のすべてに、……触りたいです。私……」
ティーナは身体をずらして、彼のベルトのバックルを外し、トラウザーズのホックを外し始めた。グスタヴスはさすがに、狼狽し始める。
「ティーナっ。あなたは、なにをしているのか解っているのか!」
グスタヴスに触れられたこと以外は、なんの経験もないティーナだったが、今さら引き返せない。
「わ、解っています……っ。ごめんなさい。私、初めてなので、うまくできるか解りませんが……精一杯頑張ります……」