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甘くて淫らな国王陛下の個人授業

織田ちさき イラスト/芦原モカ

キーワード: 西洋 王様 初恋 身分差 甘々

王室御用達の仕立屋の娘・リリアナは、父の仕事の手伝いで王宮を訪れた際に会った青年に心惹かれる。そしてほどなく、リリアナが王妃に選ばれたという書簡が王宮から届く。彼女が王宮で会ったのは、若き国王アレクサンダーだったのだ。彼はリリアナを優しく迎えてくれたが、大臣たちから半年以内に語学とダンスをマスターしなければ王妃として認められないと言われてしまう。アレクサンダーに愛されながらレッスンに励むリリアナだが…? 配信日:2018年5月25日 


「私、どうして……」
「挨拶の途中で気を失ったんだ」
 優しく笑った彼が、額にかかる前髪を指先で掻き上げてくれたけれど、顔向けできない思いから視線を逸らしてしまう。
 挨拶の途中どころか、自分はなにも言葉を発せなかった。
 ただ彼の横に立ち、冷や汗を流したあげく倒れてしまったのだ。
 こんなにも恥ずかしいことはない。
 彼にも恥を掻かせてしまった。
 いますぐどこかに消え入りたい気分だ。
「ごめんなさい……やはり私には無理……もう家に帰りたい……」
 すっかり挫けてしまったリリアナが弱音を吐くと、彼は小さく笑って手を握ってきた。
「誰でも緊張から失敗を犯すことはある。そのたびに挫けていたのでは前に進めないぞ」
「でも……」
「大臣たちに挨拶をする機会なら、この先いくらでもある。それより、明日から俺とダンスの練習をしよう」
「アレクと?」
 突然の申し出に、リリアナは呆気に取られる。
 国王自ら先生になってくれるなんて、とても恐れ多いことだ。
 けれど、他の先生に習うよりは気が楽なようにも感じられる。
 本当に甘えてしまっていいのだろうか。
「昼間は執務があって無理だが、夜ならいくらでも君と踊ることができる。そうだ、就寝前に練習をするのはどうだ? よく眠れると思うぞ」
 どうやら彼は本気でダンスの先生になってくれるらしい。
 なんて優しいのだろう。
 彼のためにも頑張りたい。
 挫けることはこれからも多々ある。
 そのたびに弱音を吐いていたのでは、彼の妻になることなどできない。
「ありがとうございます。私、一生懸命、練習します」
 起き上がったリリアナが畏まって礼を言うと、彼が困り顔ですっと目を逸らした。
 その様子に自分が寝間着姿でいることに気づき、顔を真っ赤にして上掛けの中に潜り込み、頭まですっぽりと被る。
 寝台に寝かされる際に、ドレスから寝間着に着替えさせられたようだ。
 寝間着姿を見られるなんて、恥ずかしい以外のなにものでもない。
(いつまでこうしていたらいいの……)
 彼がそこにいると思うと、顔を出すに出せない。
 とはいえ、ずっとこのままでいるわけにもいかない。
(あっ……)
 アレクサンダーが立ち上がる気配を感じ取り、気を利かせてくれたのだと思ったリリアナはそっと上掛けを捲った。
「リリアナ……」
 彼の顔がすぐそばにある。
 部屋を出て行ったと思ったのは間違いだったようだ。
「愛しいリリアナ……」
 どこか切羽詰まったような表情を浮かべた彼が、驚きに目を丸くしているリリアナにくちづけてきた。
「う……んっ」
 不意のくちづけに、鼓動が跳ね上がる。
「君が欲しい」
 短いくちづけで終えたかと思うと、彼はリリアナが纏っている寝間着に手を掛けてきた。
「やっ……」
 頭と袖を通すだけのストンとした寝間着をいとも容易く脱がされ、一糸纏わぬ姿になった羞恥から逃げ惑う。
 必死に上掛けに手を伸ばすけれど、彼はそれすらも阻止してきた。
 上掛けを床に蹴り落とし、さらには寝台の上で自ら上着を脱ぎ始める。
 恥ずかしくてたまらないのに、なぜか身動きがまったくできない。
 肌を露わにしていく彼の姿から、目が離せないでいた。
 それでも、彼が下着のみを残すところまでくると、さすがに顔を背けた。
 男性の裸に目を奪われている自分が、とてつもなくはしたない気がしたのだ。  
「リリアナ……」
 隣に滑り込んできた彼が、背中越しに抱きしめてくる。
(あっ……)
 思わず声もなく驚く。
 触れ合った肌から伝わる熱とは異なる熱を、己の内腿に感じたのだ。
 伝わってくるのは熱ばかりではない。
 あきらかに硬さがある。
 それは紛れもなく、アレクサンダーの猛りだ。
 仕立屋の娘として生まれ、さしたる教育も受けていないけれど、早くに結婚した従妹から面白半分にいろいろ聞かされていたから知っていることもある。
 男性器は興奮すると形が大きく変わり、熱を帯びるのだと教えてくれた従妹の言葉が、鮮明に脳裏を過ぎった。
 アレクサンダーは興奮状態にある。そして、互いに生まれたままの姿だ。
 彼が躰を繋げようとしているのは間違いないだろう。
 けれど、彼とはまだ結婚していない。
 神の前で愛を誓い合う前に、処女を失ってしまうことに躊躇いがあった。
「ひゃん……」
 互いの思いは同じであっても、躰を繋げ合うにはまだ早いのではと考えていたリリアナは、下腹に滑り込んできた彼の手に驚いておかしな声をあげてしまい、慌てて唇を嚙みしめる。
「愛してるよ、リリアナ」 
 下腹を彷徨っていた手が這い上がり、小振りの乳房をすくい上げてきた。
 軽く揺さぶられ、さらには鷲摑みにされ、そこから痛みとも疼きともつかない感覚が走り抜けていく。
「はっ……んん」
 唇から勝手にこぼれ落ちる甘ったるい声。
 こんな声を出している自分に驚くと同時に、羞恥が高まっていく。
「手触りのいい乳房だ」
 肩を振るわせるリリアナに囁いてきた彼に、大きな手で乳房を荒々しく揉みしだかれ、細い躰が激しく揺さぶられる。
「ああぁ……ぃ……や……んんっ……」
 乳房を揉みながら乳首を指先で擦られ、首筋をきつく吸われ、全身が心地よい痺れに包まれていく。
「ん、ふ……ぁああ……あっ」
 硬く凝った乳首に爪を立て、指先で弾いてくる。
 こぼれ落ちる喘ぎは抑えようもない。
 本当は彼とこんなことをしてはいけないのだとわかっているのに、リリアナはまったく抗えないでいる。
「君の可愛い声が耳に心地いい。もっと聞かせてくれ」
 ねだるように言った彼が、執拗に乳首を弄ってきた。
「はっ……あっ……んんん……」
 望みを叶えたいと思っているわけではない。
 恥ずかしい声を聞かれたくない。
 いくら頭でそう思っていても、とめどなく喘ぎ声がもれた。
「可愛いよ、リリアナ」
 楽しげに笑った彼が、再び下腹に手を滑り落としてくる。
「やっ……」
 指先が繁みに隠された蕾に触れ、咄嗟に身を捩った。
 どうしてそんなとこに触れてくるのかわからない。
 けれど、そこで弾けた感覚は、全身を蕩けさせるほどの強烈な心地よさだった。
「ああっ……」
 蕾を撫で回され、甘酸っぱい快感が広がっていく。
 躰からはすっかり強張りが解けてしまっている。
 このまま続けられたら、自分はどうなってしまうのだろう。
 押し寄せてくる快感に身を震わせていると、彼の指先が蕾を離れてその奥へと移った。
 なぜか急に怖くなり、咄嗟に彼の手首を押さえた。
「ここで俺と躰を繋げることは知っているのか?」
 耳元で訊ねてきた彼に、こくりとうなずき返す。
「怖いか?」
「少し……」
 声が震えているのが自分でもわかる。
 アレクサンダーとひとつになりたい思いはあるけれど、まだ早いという思いもある。
 なにより、初めてのときは痛みを伴うと聞いているから、怖さがあるのだ。
「愛するリリアナを怖がらせたりしない。俺を信じてくれ」
 耳を掠めた優しい声音に少し気持ちが和らいできた。
「はい……」
 生涯に一度しか味わうことができない痛み。
 アレクサンダーならきっと我慢できる。
「あっ」
 彼の指先が花弁を分け入ってきた。
 ごく浅い位置で指先を動かされ、妙なこそばゆさに身じろぐ。
 と同時に、躰の内側から熱いものが溢れ出てくるのを感じた。
「もう濡れているではないか」
 彼は嬉しそうだったけれど、言葉の意味が理解できない。
 粗相したわけでもないのに、濡れているとはどういうことだろう。
「はっ……ああぁ……」
 疑念を抱いたのも束の間、彼の指先が蕾に舞い戻ってくる。
 指先はしっとりと濡れていて、動きが滑らかだ。
 その指先で擦られる蕾から広がる痺れに、躰が蕩けていく。
 それは紛れもない快感。
 躰の震えが止まらない。
 指先も足先も甘く痺れている。
「やっ……んん……あぁ……」
 不意に覚えのない感覚に襲われ、リリアナは激しく戸惑う。
 まったく知らない感覚だ。
触れられている蕾がジンジンと痺れ、奥から込み上げてくるような熱を感じている。
 躰のすべてが熱い。
 肌が灼けるように燃えさかっている。
 快感が高まっていくほどに、身体の熱が上がっていくようだ。
「さあ、力を抜いて」
 背中越しに抱きしめているアレクサンダーが、耳たぶを甘嚙みしてきた。
 その瞬間、熱の塊と化していた蕾が弾け、リリアナは頂点へと導かれる。
「あぁ――――っ」