悪役令嬢はハイスペ隠しキャラの蜜愛に惑う 1
依田ザクロ イラスト/塩瀬 透

「隠さないで、見せてください」
「やぁっ、だめ」
「どうして?」
 割れ目の先端をつついて問いただしてくる。
「んくっ……、は、ぁあ……」
 明敏な陰核は少しの刺激で甘く痺れた。胎内で蜜が生まれ、とろりと下りてくる。
「濡れてきたのは、気持ちがいいから?」
「は、恥ずかしい、から……」
「今さらですよ。もうすでに昨日たっぷりと見てしまいました」
 それならもう見なくてもいいのでは、と心では思うが、口から漏れるのは甘い嬌声だった。
「あんっ、あっ、あぁ……、んあぁ……っ」
 蜜をまとった指は気の向くままに秘処を動く。腰の奥から強い快楽が湧き出してきて、気持ちよさに身震いした。
(だめ……。これ以上されたら、どうにかなってしまう)
 なんとか脚を閉じようと太股へ力を込めるが、やはり彼の身体が邪魔して閉じられない。
 そのうち、無骨な中指が秘裂を縦にたどってきた。淫靡な水音が立ち、いたたまれない心地に拍車がかかる。
「こんな慎ましやかで繊細なところに、昨日は俺を受け入れてくれたんですね」
 具体的な物言いに、羞恥が深まる。下肢の感度がいっそう高まり、狭い空洞がきゅうきゅうとうねった。
「んぁ、あっ、あっ、だめ……っ」
 入り口の溝に沿って、指はみだりがましく往復する。
「硬く閉じていた小さな花が、こうやって愛してあげるとだんだん柔らかくなって……あたたかく受け入れてくれた」
「んあぁ……っ、言わないで……っ」
 羞恥と淫悦にもまれて首を振る。ふわふわと白銀の髪が揺れ、陶器のごとき肌を彩った。
「あなたは――かわいいな。どこもかしこも」
 感嘆のため息と共に、指先が淫核を押しつぶしてくる。
 研ぎ澄まされた陶酔がびりびりと身体を貫いた。
「ひぁぁっ!」
 喉をそらせて唇をわななかせる。蜜口を潤わせていた露がこらえきれずあふれた。
 さらに彼は親指と中指で淫唇を割り開き、むき出しの神経を露わにする。快美な予感にそこは尖り、塗り広げられた淫液をまとって妖しくきらめく。
「……あ、だめ……」
 淫靡な視姦に襲われ、身悶えする。
(今、さわられたら――確実に意識が飛んじゃう!)
「痛い?」
 再びの気づかわしげな問いかけに、いっそうなずいてしまえばよかった。だが、余計なことを考える余裕がなかった。ぷるぷると首を振って素直に否定してしまう。
「よかった。かわいいあなたの隅々までふれられる」
 甘い声はハニーフローラの理性をやんわりと縛る。
(『だめ』とか『嫌』とか、もう言えない……)
 包皮をむかれた小さな芽が期待に震えた。ゆっくりと近づいてきた思わせぶりな指は、それを押しつぶす。
「ふあぁぁ……っ!」
 たちまち大きな愉悦がほとばしった。ぐりっと刺激しただけでは飽きたらず、粘つく蜜を塗りこめ小刻みな円を描く。
 明確な快感にあわせて淫猥な水音がぬちゅぬちゅと立つのが、いっそうハニーフローラを惑乱させた。腰は淫らに痙攣し、花芽は膨れて弾力をもち、彼の指を跳ね返す。胎内からはとめどなく蜜がこぼれた。
「あっあぁ……っ、シトラスさまぁ……っ」
「かわいいハニーフローラ嬢。どうしました?」
「あっあっ、わたくし、もぉ、だめです……!」
 強すぎる淫撃は身体の奥深くまで響く。生理的な涙が浮かび、七色の滴ごしに彼を見上げた。ぼやけた視線の先で、彼が息をのむ。
「っ、かわいすぎです。……かわいいあなたを、もっと奥までかわいがりたくなってしまいました」
 太い親指で秘玉を左右へ揺らしながら、中指が花びらを意地悪く撫であげる。すでに潤いに満ちた溝は、歓喜に震えて指先を自ら呑み込んだ。
「受け入れてくれるんですか? 性懲りもなくほしがる俺を、ここに」
 浅いところをちゃぷちゃぷとくすぐりながら、彼は切なげな炎を宿した瞳で見つめてくる。
 無言の懇願に、苦しいほどの胸の高鳴りを覚えた。気づけば巻き毛を揺らしてうなずいていた。
「ありがとうございます」
 衣擦れの音がしたあと、秘唇に硬くて熱いものが押し当てられる。
「ふ、ぁ……」
 張りつめた雄茎は入口でどくんと脈打ち、重量のある存在感を刻みつける。割れ目に沿ってゆっくりと擦りつけ、花びらを潤す蜜と溶け合い、徐々に内側へ沈んでいく。
 つい昨日まで乙女だった隘路は、一晩中受け入れていた開拓者をすぐに思いだした。ぴったりと寄り添い、淫らにうねって奥へ奥へと引きずり込む。
「あなたの中は、柔らかくて……溺れそうです。いえ、もう、とっくに溺れている」
 あられもなく広げられた白い太腿のあいだで、彼の逞しい腰が前後へ揺れる。敏感な内側を擦りたてられるとたまらない。初めは小刻みに、やがて大胆に楔は侵入を深め、とうとう先端を女壺の入り口へ突き込んできた。
「ふ……ぁあぁぁ……っ」
 強い淫撃に腰が引けそうになる。しかし、細腰へ据えられた彼の手が逃亡を許さない。膨れた切っ先は容赦なく最奥の扉へ濃厚な口づけをする。
「俺はまるで盛りのついた猫ですね。でも……止まれません」
(猫……?)
 そういえば、彼の祖国フェル帝国は猫を始祖とするとか聞いたような。
 普段は優しげな彼が瞳を情欲に染めるさまは、本当に獣に転じてしまったみたいだ。それでも、嫌いになったりはしない。むしろ愛おしさが増してしまうのだから、すっかり彼の魅力に参っている。
 募る想いに惑乱し、下肢に感じるずっしりとした質感に酔った。途方に暮れるほど心も身体も乱されている。何度も打ち寄せる快感の波にさらわれ、内襞は胎内の肉棒をきつく締めつけた。逃げを打っていた身体はいつの間にか彼を求めて自ら押しつけている。
「んああぁぁ……っ、あぁんっ、あ、あぁ……、っ!」
 ひときわ高い啼き声がこぼれる。連動して媚肉がざわめき、蜜で満ちた花洞が全力で熱竿に抱きついた。
「……く、……」
 彼が目を見開き、切羽詰まって息を震わせる。額には小さな汗の雫が灯り、瞳も煽情的に潤んでいる。堪える表情を見たら、こちらまで頭が沸騰しそうになった。
「あ……ぁ……、シトラスさまぁ……、は、ぁ……っ」
 子宮が甘く収斂して、彼を絶頂へと誘おうとする。
「だめだ……、これ以上、かわいくなるなんて、反、則……っ!」
 オッドアイの瞳は妖しくきらめき、堂々とさらす鍛えあげられた上体に力が満ちる。刃のごとき雄塊が硬度を増して、ふっくらと潤う秘唇を限界まで広げた。無情な抽送が始まる。
「ぁっ、あ! ……んあ……っ、んっ、ああぁ……」
 絶頂の寸前、研ぎ澄まされた陶酔がくるおしいほど脳を灼く。
 新たな蜜があとからあとからあふれ、激しい律動を助ける。速まる鼓動と共に粘膜の摩擦はなりふり構わないものへと変わっていった。
 淫蕩な水音と陶然とした彼の表情が、さらなる歓びを運んでくる。
「あぁん……、気持ち……いぃ……っ、んあぁぁっ」
 忘我の瞬間の嬌声に、彼の甘くかすれた声が重なる。
「俺も……、達、く……」
 凹凸のある屹立が強くつき込まれた。亀頭がひときわ大きく漲り……だが、絡まる内襞を振り切って急速に熱が遠ざかっていく。刹那、下腹部に熱くて粘ついたものが降り注いだ。愛する対象を失った胎内はきゅんきゅんと切なく蠢動しながら悦を極める。
「ハニーフローラ嬢……」
 絶頂の余韻か、かすかに舌足らずな口調で彼が名を呼ぶ。そのまま横抱きに抱きしめられた。いまだ熱く鼓動する逞しい胸へ頬を押しつけられて、ハニーフローラの心臓もときめきを増す。
 麗しい恋人たちは互いの魅力に耽溺し、朝日が強く輝いてもその抱擁を解かず、いつまでも愛を確かめ合った。
 ……信じられない、こんなの。
(ついこのあいだまでのわたしは、今とは全然違う人生を送っていた)