見習い魔女、絶倫王子に娶られる京極れな イラスト／風コトハ
魔物の棲む森に暮らす魔女・ジルは、ある日、ケガをしている猫を助けた。お世辞にもかわいいとは言えない猫だが、王宮勤めの魔女だった母は数年前に処刑され、父は誰だか知らず、孤独だったジルの慰めとなる。しかし翌朝、猫はなんと美青年に！ しばらく一緒に暮らすうち、正体は猫化の呪いをかけられた王子ウォーレンだとわかる。彼から熱心に口説かれるようになり、身分不相応な相手に恋をしてはダメだと思いつつ、ジルは途中まではいたしてしまう。そんな中、ウォーレンの解呪とジルの母の無実を証明するため、王宮へ向かうことになるが…？ 配信日：2022年11月24日
「だからなに。ジルは俺のことが嫌いなのか？」
引き下がる気はないらしく、ふたたびキスしようと迫ってくる。
ジルはなおも顔をそむけた。
「き、嫌いじゃないわ。好きよ。大好き。……でも、猫とは恋人同士になれないわ」
家族か、あるいはそれに近い感情はあるけれど。
「安心しろ、俺は人間だよ」
「ついに嘘までつきだしたわね」
「ほんとうだよ。このまま俺がおまえを抱けば、おまえのお腹にはふつうに人間の赤ん坊が宿る。ちなみに俺の名前はウォーレンな。呼んでごらん？」
「名前まで作って用意周到ね。どこでそんな知恵を得たの？ もしかして、それがあんたの本当の飼い主の名前とか？」
「呼んでみてよ、ウォーレンって」
うっすらと笑いながら、ジルの顎先を掬う。
「…………」
ジルは芝居までして必死なブサが憐れになってきた。
「ごめんなさい、ブサ。あんたにはかわいそうなことをしたって思ってる。こんなにしっかり発情するなんて……お菓子はわたしがきちんと片付けておくべきだったわ」
「詫びる暇があるならさっさと慰めてくれ。実はもう限界なんだ」
切羽詰まったようすでつぶやかれた。
たしかにつらいだろう。呪いがかかった身体で、さらにまた別の魔力に抗わねばならないのだから――。
「好きだよ、ジル……。本気で女を好きになったのは、これがはじめてなんだ」
耳元で告げられ、耳朶が甘く痺れたみたいになった。
それからこめかみや瞼にくりかえし、ついばむような口づけを与えてくる。
「ん……」
優しくじゃれつかれているような、甘い感覚。猫のときと、変わらないと言えば変わらないかもしれない。でもやっぱり、人の姿だとずっと包容力があって、男性的な魅力を感じる。拒んでばかりのジルだったが、ここではじめてときめきを覚えてしまった。
「この家は居心地がいい。ずっとこうしておまえと一緒に暮らしていたいな……」
まるで、いずれ出ていかねばならないような言い方だ。
（もしかしてそのつもりなの……？）
ふと、ジルはさみしくなった。
「わたしだって……」
ブサが来てからとても楽しい。ひとりで過ごすよりもずっと。
ブサのためにご飯を作り、一緒においしく食べて、掃除も洗濯も薬草園の手入れもぜんぶふたりでこなした。お風呂に入るのも、眠るのも――。
「ブサ、どこにもいかないで。ずっとここにいればいいわ」
気づくとジルはブサの頬にふれて、その美しい青色の目を見て告げていた。
わたしをひとりにしないで。――そんな、自分でも意識していなかった感情までがこみあげてくる。
「いるよ。ずっと一緒にいる。おまえとは離れない」
ブサはジルの手を握って、なし崩し的に唇をかさねてきた。
「ん……」
互いの唇が密にかさなりあう。
ブサは角度を変えて何度も口づけをくりかえす。愛おしげにジルの髪を弄びながら。
「ふ……」
彼の舌先が唇を割って侵入してこようとするので、さすがにジルはためらって彼の胸を押し返す。
けれどかまわず、隙を縫って舌を差し入れられた。
「ん……ぅ……」
熱い舌に、ぬるりと口内を蹂躙される。
抗おうにも、下肢や肩をしっかりと抱き込まれて身動きがとれない。
「……ぁふ……」
脳の髄を蕩かすような淫らな舌遣いだ。ジルは魔法にかかったみたいに、身体から徐々に力が抜けてゆくのを感じた。
「ん……」
熱を与えられるかわりに、みるみる理性が奪われてゆく。
ときどきちゅっと思わせぶりな音をたてて煽ってくる。
ジルの身体はそのたびに甘く痺れたようになって、ずるずると彼のなすがままにさせられてしまう。
「やめて、猫のくせにこんないやらしいキス……」
ジルは火照った顔をブサからそむける。
「だから俺は人間だってば。よく見てみろ」
ブサがその顎先を掬って彼のほうに向きなおらせる。
彼はうっすらと笑みを浮かべている。暗がりで浮かびあがる美貌には、これまでに見せたことのない危うい色香がそこはかとなく漂っている。
人間？ そんなはずはない。出会ったとき、自分は猫なのだとはっきり言っていた。
「キスははじめてじゃないわね。どんなメス猫が相手だったの？」
「俺の話聞いてるか？」
「聞いてな――……」
拒む前に、ジルはふたたび唇を奪われた。
（うそでしょ……）
人間だなんて、やめて。
ジルは今さらながらに青くなる。
もし事実なら、自分は見ず知らずの、ろくに正体もわからない男と半月近くひとつ屋根の下で暮らして、ベッドでこんなことまでして――。
でも考えてみたら、人が呪いをかけられて猫になっていた可能性だって十分にあるのだ。
（どうしよう、強姦魔とか、殺人犯とかだったら……？）
一生かけても返せないほどの、借財のあるろくでなしという可能性もある。ヒモとしてここで暮らすと自堕落な発言もしていたくらいだし。
（でもはじめに身に着けていたものは仕立ての良いものだったし、食事の仕方も身のこなしもとてもきれいだった。性格は微妙にオレ様だけど優しいし、仕事はしっかりこなすし……）
つまり、身元不明の点以外は悪いところがなにもない。しいて言うなら手が早いところくらいだろうか。
結局、自分はブサのことを好きで、この先も好きなままでいたいのだ。
ジルが抵抗を忘れているのをいいことに、ブサはますます口づけを深めてくる。
「ん……ぅ……」
熱い舌がジルのそれをとらえ、欲情を知らしめるかのように執拗に絡みつく。
さらに彼の手が胸元におりて、ネグリジェ越しに乳房をまさぐりだした。
「や……」
大きな男の手でゆっくりと膨らみを揉みしだかれ、敏感な頂に甘い感覚が集まりはじめる。
ジルはどうしていいかわからなくなった。知識は豊富でも実践は積んでないのだ。
それ以前に、この男の正体が猫なのか人なのか――。
愛撫は口づけとともに少しずつ大胆になってきて、いつのまにかネグリジェのリボンはほどかれ、素肌にじかに彼の手がふれた。
「ん……」
ネグリジェがはだけて、青白い月明かりにジルの白い乳房が晒された。
恥ずかしいと思うのに、彼の流れるように自然な手の動き、その巧みな愛撫に惹かれてつい流されてしまう。
「ん……待って。これ以上はダメ……」
軽く乳房のふくらみに口づけられて、ジルは思わず襟元をかきあわせた。相手が人間の男でも猫でも、これ以上は危険すぎる。
「いやだ。俺はおまえが欲しい」
ブサが荒々しく乳房をつかんだ。
「あ……ん……」
おもむろに乳頭を口に含まれ、びくんと肩を揺らす。
先端をちろちろと舌先で押し転がし、しこってきたところをきつく吸いたてられる。
「ん……っ、あ……っ」
卑猥な舌の動きに感じてしまって、身体が小刻みに震えた。
「な、舐めちゃだめ……」
「いいだろ。飼い猫にちょっと嚙まれたとでも思えば」
「ちょっとどころじゃな……、ンっ」
やっぱり猫なのだろうか。
混乱したまま、ふたたび舌を濃密に搦められる。
（ね、猫に嚙まれてるだけ……）
そう言い聞かせて理性をとどめようとするのに、誘うような思わせぶりの淫らな舌遣いに、性感がますます研ぎ澄まされてゆく。
ブサはひとしきり乳房を舐めつくして堪能したあと、
「こっちのほうも味わいたい」
ゆっくりと下肢のほうに手を滑らせてゆく。
「だめ」
官能に支配されかけていたジルは、我に返って彼の手を押さえた。
この先なにが起きるのか、知識豊富なジルはよく知っていた。男の愛撫に導かれ、抗えない官能の波に呑まれて一線を越えることになるのだ。たくさんの女性客がそう証言している。
けれどブサが猫でも人間でも、ここで純潔を捧げるわけにはいかない。
「どうしてだめなんだ？ おまえの身体はこんなに悦んでるのに？」
「あンっ」
引き下がる気はないらしく、ふたたびキスしようと迫ってくる。
ジルはなおも顔をそむけた。
「き、嫌いじゃないわ。好きよ。大好き。……でも、猫とは恋人同士になれないわ」
家族か、あるいはそれに近い感情はあるけれど。
「安心しろ、俺は人間だよ」
「ついに嘘までつきだしたわね」
「ほんとうだよ。このまま俺がおまえを抱けば、おまえのお腹にはふつうに人間の赤ん坊が宿る。ちなみに俺の名前はウォーレンな。呼んでごらん？」
「名前まで作って用意周到ね。どこでそんな知恵を得たの？ もしかして、それがあんたの本当の飼い主の名前とか？」
「呼んでみてよ、ウォーレンって」
うっすらと笑いながら、ジルの顎先を掬う。
「…………」
ジルは芝居までして必死なブサが憐れになってきた。
「ごめんなさい、ブサ。あんたにはかわいそうなことをしたって思ってる。こんなにしっかり発情するなんて……お菓子はわたしがきちんと片付けておくべきだったわ」
「詫びる暇があるならさっさと慰めてくれ。実はもう限界なんだ」
切羽詰まったようすでつぶやかれた。
たしかにつらいだろう。呪いがかかった身体で、さらにまた別の魔力に抗わねばならないのだから――。
「好きだよ、ジル……。本気で女を好きになったのは、これがはじめてなんだ」
耳元で告げられ、耳朶が甘く痺れたみたいになった。
それからこめかみや瞼にくりかえし、ついばむような口づけを与えてくる。
「ん……」
優しくじゃれつかれているような、甘い感覚。猫のときと、変わらないと言えば変わらないかもしれない。でもやっぱり、人の姿だとずっと包容力があって、男性的な魅力を感じる。拒んでばかりのジルだったが、ここではじめてときめきを覚えてしまった。
「この家は居心地がいい。ずっとこうしておまえと一緒に暮らしていたいな……」
まるで、いずれ出ていかねばならないような言い方だ。
（もしかしてそのつもりなの……？）
ふと、ジルはさみしくなった。
「わたしだって……」
ブサが来てからとても楽しい。ひとりで過ごすよりもずっと。
ブサのためにご飯を作り、一緒においしく食べて、掃除も洗濯も薬草園の手入れもぜんぶふたりでこなした。お風呂に入るのも、眠るのも――。
「ブサ、どこにもいかないで。ずっとここにいればいいわ」
気づくとジルはブサの頬にふれて、その美しい青色の目を見て告げていた。
わたしをひとりにしないで。――そんな、自分でも意識していなかった感情までがこみあげてくる。
「いるよ。ずっと一緒にいる。おまえとは離れない」
ブサはジルの手を握って、なし崩し的に唇をかさねてきた。
「ん……」
互いの唇が密にかさなりあう。
ブサは角度を変えて何度も口づけをくりかえす。愛おしげにジルの髪を弄びながら。
「ふ……」
彼の舌先が唇を割って侵入してこようとするので、さすがにジルはためらって彼の胸を押し返す。
けれどかまわず、隙を縫って舌を差し入れられた。
「ん……ぅ……」
熱い舌に、ぬるりと口内を蹂躙される。
抗おうにも、下肢や肩をしっかりと抱き込まれて身動きがとれない。
「……ぁふ……」
脳の髄を蕩かすような淫らな舌遣いだ。ジルは魔法にかかったみたいに、身体から徐々に力が抜けてゆくのを感じた。
「ん……」
熱を与えられるかわりに、みるみる理性が奪われてゆく。
ときどきちゅっと思わせぶりな音をたてて煽ってくる。
ジルの身体はそのたびに甘く痺れたようになって、ずるずると彼のなすがままにさせられてしまう。
「やめて、猫のくせにこんないやらしいキス……」
ジルは火照った顔をブサからそむける。
「だから俺は人間だってば。よく見てみろ」
ブサがその顎先を掬って彼のほうに向きなおらせる。
彼はうっすらと笑みを浮かべている。暗がりで浮かびあがる美貌には、これまでに見せたことのない危うい色香がそこはかとなく漂っている。
人間？ そんなはずはない。出会ったとき、自分は猫なのだとはっきり言っていた。
「キスははじめてじゃないわね。どんなメス猫が相手だったの？」
「俺の話聞いてるか？」
「聞いてな――……」
拒む前に、ジルはふたたび唇を奪われた。
（うそでしょ……）
人間だなんて、やめて。
ジルは今さらながらに青くなる。
もし事実なら、自分は見ず知らずの、ろくに正体もわからない男と半月近くひとつ屋根の下で暮らして、ベッドでこんなことまでして――。
でも考えてみたら、人が呪いをかけられて猫になっていた可能性だって十分にあるのだ。
（どうしよう、強姦魔とか、殺人犯とかだったら……？）
一生かけても返せないほどの、借財のあるろくでなしという可能性もある。ヒモとしてここで暮らすと自堕落な発言もしていたくらいだし。
（でもはじめに身に着けていたものは仕立ての良いものだったし、食事の仕方も身のこなしもとてもきれいだった。性格は微妙にオレ様だけど優しいし、仕事はしっかりこなすし……）
つまり、身元不明の点以外は悪いところがなにもない。しいて言うなら手が早いところくらいだろうか。
結局、自分はブサのことを好きで、この先も好きなままでいたいのだ。
ジルが抵抗を忘れているのをいいことに、ブサはますます口づけを深めてくる。
「ん……ぅ……」
熱い舌がジルのそれをとらえ、欲情を知らしめるかのように執拗に絡みつく。
さらに彼の手が胸元におりて、ネグリジェ越しに乳房をまさぐりだした。
「や……」
大きな男の手でゆっくりと膨らみを揉みしだかれ、敏感な頂に甘い感覚が集まりはじめる。
ジルはどうしていいかわからなくなった。知識は豊富でも実践は積んでないのだ。
それ以前に、この男の正体が猫なのか人なのか――。
愛撫は口づけとともに少しずつ大胆になってきて、いつのまにかネグリジェのリボンはほどかれ、素肌にじかに彼の手がふれた。
「ん……」
ネグリジェがはだけて、青白い月明かりにジルの白い乳房が晒された。
恥ずかしいと思うのに、彼の流れるように自然な手の動き、その巧みな愛撫に惹かれてつい流されてしまう。
「ん……待って。これ以上はダメ……」
軽く乳房のふくらみに口づけられて、ジルは思わず襟元をかきあわせた。相手が人間の男でも猫でも、これ以上は危険すぎる。
「いやだ。俺はおまえが欲しい」
ブサが荒々しく乳房をつかんだ。
「あ……ん……」
おもむろに乳頭を口に含まれ、びくんと肩を揺らす。
先端をちろちろと舌先で押し転がし、しこってきたところをきつく吸いたてられる。
「ん……っ、あ……っ」
卑猥な舌の動きに感じてしまって、身体が小刻みに震えた。
「な、舐めちゃだめ……」
「いいだろ。飼い猫にちょっと嚙まれたとでも思えば」
「ちょっとどころじゃな……、ンっ」
やっぱり猫なのだろうか。
混乱したまま、ふたたび舌を濃密に搦められる。
（ね、猫に嚙まれてるだけ……）
そう言い聞かせて理性をとどめようとするのに、誘うような思わせぶりの淫らな舌遣いに、性感がますます研ぎ澄まされてゆく。
ブサはひとしきり乳房を舐めつくして堪能したあと、
「こっちのほうも味わいたい」
ゆっくりと下肢のほうに手を滑らせてゆく。
「だめ」
官能に支配されかけていたジルは、我に返って彼の手を押さえた。
この先なにが起きるのか、知識豊富なジルはよく知っていた。男の愛撫に導かれ、抗えない官能の波に呑まれて一線を越えることになるのだ。たくさんの女性客がそう証言している。
けれどブサが猫でも人間でも、ここで純潔を捧げるわけにはいかない。
「どうしてだめなんだ？ おまえの身体はこんなに悦んでるのに？」
「あンっ」