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密やかな くれない
華嫁は簒奪王に征服される
葉月エリカ イラスト/野田みれい
人質として差し出された秦楼国の公子、央玖を従者にし、わがまま三昧で過ごしてきた蔡苑国の公主、璃杏。ところが、謀叛によって立場が逆転してしまう。敗戦国の姫である璃杏は、王となった央玖の思うがまま、純潔を散らされることに…! 発売日:2012年9月4日 


「やだ、だめぇ!」
 遮るもののない抽挿は、これまでに感じたことのない強烈な刺激で、璃杏の肌がざっと粟立つ。
「たくさん突いて、とおっしゃったのは璃杏様ですよ?」
「でも、怖い、怖いのっ……!」
「大丈夫です。私がいます。ずっと抱いていますから、存分に乱れて構わないんです」
 央玖は璃杏の頬に口づけ、雫れた涙を舌ですくい、ぐしゃぐしゃになった髪を撫でつけた。
 腰使いは凶悪といってもいいくらいなのに、そんなふうに優しい仕種で触れられると、璃杏はますます混乱した。
彼のすることならすべて受け入れたいと思う心と、大きすぎる快感に尻込みする体が、相反してわけがわからなくなる。
「この姿勢だと、こんなに深くまで届くんですね……」
 央玖が腰を突き上げながら、感嘆したように言った。
「わかりますか? 奥のほうで……ほら、こんなに当たるんです」
 ごつごつと、扉を叩くのにも似た振動が、璃杏の胎内に響いていた。
 内臓を直に掻き回されているような、不安のほうが勝る快感。
ぺたんと平らかな下腹が、内側から突き破られそうな錯覚に、璃杏は心底から怯えた。
「も、やめて……」
 璃杏は弱々しい力で、央玖の胸を押し返した。
「この恰好、嫌……脚、いっぱい開かされて、痛いのぉ……」
「注文の多いお方だ」
 駄々っ子を見るような目になったものの、央玖は璃杏の右足を肩から下ろした。ほっとして力を抜いた瞬間、璃杏の上体は引き起こされた。
「えっ……?」
「そんなに文句ばかりおっしゃるなら、私は何もしませんよ?」
 仰向けに寝転んだ央玖の上に、璃杏は座り込まされていた。もちろんその中心を、硬い肉の杭で貫かれたままだ。
「腰を振りなさい」
 冷静で容赦のない命令だった。
「そ、んな、できないっ」
「今夜は璃杏様が私をいかせるんです。そうでないと、一晩中このままですよ?」
璃杏はさっと青ざめた。彼は本気で口にしている。
「離して、嫌ぁ!」
 逃れようと暴れるも、央玖の手はがっしりと璃杏の腰を掴んで、その抵抗を許さない。
「もがくだけもがきなさい。どこに当たると気持ちいいのか、そのうちにわかるでしょう」
 恐ろしいことに、央玖の言うとおりだった。
 身をよじるのは快感を追いかけるためではないのに、押し広げられた内側が擦れて、むず痒い刺激に苦しめられる。
「止まらないで。もっと動いて」
「ん……んんっ」
「我慢をするほど苦しいだけですよ」
「無理……無理なのぉ……」
「私のこれを舐めることはできても、自分から腰を振るのは恥ずかしい?」
 璃杏は涙目でこくりと頷いた。
自分でも羞恥の基準がどこにあるのかわからないが、今は央玖が冷静だから、余計にいたたまれないのだ。
「なら、少しだけ手助けをしましょうか」
 央玖が璃杏の腕を掴み、前屈みになるように引き寄せた。ふるりと揺れる小ぶりな乳房が、央玖の目の前に突き出される格好になる。
「ご自分ではご存じありませんか? 普段私と繋がっているときでも、璃杏様は感じてくると、自然に腰が振れているんですよ……?」
 央玖の手が胸を這い、硬くすぼまった乳首を甘噛みされながら吸われる。
 新しい導火線に火がつけられたような心地だった。堪えようとしても嬌声が洩れ、じっとしていられずに体が揺れる。
「前後だけではなく、上下にも動けるでしょう?」
 腰からお尻にかけて撫で下ろされ、ぱしんと軽く叩かれた。痛みにというよりも驚きに、反射的に腰が宙に浮く。
央玖の屹立が抜けそうになるぎりぎりのところで、
「そのまま落ちて」
 催眠術にかけられたように、璃杏の膝から力が抜ける。再び根本まで呑み込まされて、熟れた内壁が淫らにひくついた。
「それを繰り返すんです」
「ん……うっ……ぁああ……」
 璃杏はもう考えることを放棄した。
央玖の胸に手をついて、言われるがままに腰を振りたくる。
そうして動いているうちに、ぬかるむ隧道が、央玖のものに寄り添ってきゅうきゅうと狭まっていく気がした。食いちぎろうとするかのように、貪欲に絡みついて離さない。
「璃杏様……そんなに締めつけては……」
「知ら、ない……勝手に、なるのっ……」
 央玖がぐっと奥歯を食いしばる。
 次の瞬間、真下から抉るように突き上げられて、璃杏は高い声を放った。璃杏の淫靡な姿に煽られた央玖が、主導権を奪い返したのだ。
「ああっ、あっ!」
 間断のない律動を送られて、体を起こしていられなくなる。広い胸に倒れ込む璃杏を、央玖は力いっぱいに抱き締めた。
 唇を貪り合う。
視線が絡む。
快感に溶けた瞳の色で、互いの極みが近いことを、言葉にしなくとも通じ合う。
「央玖……ねぇ、一緒に……」
 切なくねだれば、央玖の突き上げはますます勢いを増し、暴れ馬の背に乗っているように、璃杏の体は大きく跳ねた。
 こんなことばかりしていたら、どうにかなってしまいそうだった。
 朝も夜もなく、臥牀から一歩も外に出ないで、永遠に裸で絡み合っていたい。
「あぁ、だめ……央玖、央玖も……」
「ええ――受け止めてください……!」
 深く深く穿たれた最奥で、央玖の灼熱が弾けた。