東宮の恋合わせ
新枕は伽羅の香りに包まれて
涼原カンナ イラスト/風コトハ
右大臣の父を亡くし、筑前で暮らしていた絢子は、五年ぶりに都へ戻る。ある日、父の世話になったという公達・晴成が方違えで邸を訪れる。滞在中に起きた問題を解決した彼は、尼になるべきか悩む絢子を優しく励ます。ほどなく、絢子は叔父から「宮中に出仕せよ」と命じられた。東宮の望みだという。晴成へ惹かれる心を抑え出仕した絢子の前に現れた東宮は、なんと晴成だった! 「あなたを妻にする」と宣言する彼に、絢子は甘く口づけられ…? 配信日:2017年7月28日
新枕は伽羅の香りに包まれて
涼原カンナ イラスト/風コトハ
右大臣の父を亡くし、筑前で暮らしていた絢子は、五年ぶりに都へ戻る。ある日、父の世話になったという公達・晴成が方違えで邸を訪れる。滞在中に起きた問題を解決した彼は、尼になるべきか悩む絢子を優しく励ます。ほどなく、絢子は叔父から「宮中に出仕せよ」と命じられた。東宮の望みだという。晴成へ惹かれる心を抑え出仕した絢子の前に現れた東宮は、なんと晴成だった! 「あなたを妻にする」と宣言する彼に、絢子は甘く口づけられ…? 配信日:2017年7月28日
「……どうしてわたしのところにお越しになられたのですか?」
梨壺と貞観殿は遠い。琳子のいる麗景殿はすぐ近くなのに。
「あなたに逢いたいからだと言っただろう?」
晴成は耳元でささやいてから耳殻を舌先で舐めた。
くすぐったくて肩をすくめてしまう。
「や、やめてください」
「なぜ? わたしが嫌いなのか?」
さみしげな声に胸がちくんと痛んだ。嫌いではない。嫌いになるはずがない。
(こんなふうに抱きしめてくれる男は初めてだもの)
晴成の胸に閉じこめられていると、自分は人恋しかったのだとまざまざと悟ってしまう。
彼のぬくもりが心まであたためてくれるような気がする。
「……嫌いではありません」
「まだ好きだとは言ってくれないのだね」
体重をかけるように抱きしめられて、息が止まりそうになった。
「だって、それは……」
長らく文のやりとりをしてようやく結ばれたという状況ならば、彼が好きだと素直に言えるだろう。
けれど、絢子はまだ晴成と会ったばかりだ。それなのに、簡単に好きだとは言えない。
いや、自分でもよくわからないのだ。彼に抱きしめられてこんなにも胸が高鳴るのは、単に人恋しいからだろうか。それとも、相手が晴成だからだろうか。
「それなら、わたしが好きだと認めさせよう」
甘くささやいて、晴成が絢子の頬にくちづける。
唇が離れるときにちゅっと鳴って、背がぞくんと波打った。
「だ、だめ……」
「頬が嫌なら唇にしようか」
晴成は絢子の体勢を強引に変えた。
ぐいっと引き寄せられて、彼の右肩にもたれる姿勢になる。
晴成から見下ろされて、絢子は息を止めた。左目の下のほくろが婀娜っぽい。
見惚れていると、彼が唇を近づけてきた。口をふさがれて、声も出なくなる。
「う……うう……んんん……」
晴成は当たり前のように舌を差し入れてきた。誘うように舌先をからめられると、絢子は引っ込めていた自分の舌の力をゆるめてしまう。
絢子の小さな舌はなし崩しに引きずりだされて、蝶と花が戯れるように舌同士がからみあう。波濤の動きをする彼の舌に絢子は心を引きずられそうになった。
(だめなのに……)
晴成の舌遣いは巧みで、絢子はみるみるうちに追い立てられてしまう。
身体の芯が熱くうずくが、とりわけ腹の奥がじんじんと痺れてきた。
(どうして……)
身体が熱くなるのだろう。それもうんと離れたお腹の奥が。
困ったことに不快な熱さではないのだった。むしろ、これから先を期待してしまうような心地よい熱なのだ。
「あ……あう……」
くちづけに快さを感じていると、晴成が左手でそっと胸を覆ってきた。骨ばった大きな手が絢子の乳房をすっぽりと覆ってしまう。そのままゆっくりと押し回されて、背筋にぴりっとした戦慄が走った。
(あ……だめ……)
単越しなのに彼の手の熱さや女とは違う硬い肌を感じてどきどきしてしまう。乳房をやわっやわと揉みながら揺すられていると、腹の奥がきゅんとうずいた。
「……気持ちがよさそうだ」
晴成はくちづけをやめて絢子の顔を覗き込んでくる。濡れたような黒い瞳が艶やかで、絢子は見つめられるだけで自分が昂るのを覚えた。
(はしたない……)
男に乳房に触れられて気持ちいいと思うなんて。
いや、それどころか、見つめられるだけで身体の芯が熱くなってしまうなんて。
「これから先は御帳台で愉しもう」
晴成は自信満々に告げて絢子を横抱きにして抱き上げた。
軽々とした足取りなのに、絢子は彼の首に腕を回してしまった。
「怖いのかな、絢子」
「は、はい」
「なにが怖い?」
「なにって……」
不安定な体勢が怖いのだろうか。それとも、これから御帳台ではじまることが?
「怖くないよ。むしろ病みつきになることだ」
晴成は御帳台に敷かれた衾の上に絢子をそっと下ろした。
それから上にのしかかってくる。頭の脇に腕を置かれると、もう逃げられなくなってしまう。
「……晴成さま」
不安と迷いが心の内で渦巻いている。晴成が右手で頬を包んできた。何もかもわかっているというまなざしに、惹きつけられずにはいられない。
「絢子。今からするのはふたりじゃないと愉しめないことだよ」
「ふたりでですか?」
「そうだよ。ひとりだとできないことだから」
晴成の言葉がじんと胸に染みる。
もうひとりではないのだと言われたようで、うれしさが込み上げてくる。
「晴成さま」
たまらず絢子は彼の衣にすがりついた。彼と一緒にいたい。そんな気持ちを伝えたかったのだ。
晴成は愛おしむように髪を撫でてから大きな手で胸を覆う。先ほどと同じように揺さぶられて、快い感覚が肌に広がる。
「あ……あ……」
衣の上から両の乳房をゆったりと揺すられ、先端に向けて絞るように揉まれると、胸が高鳴ってきた。
「ん……んん……ん……」
晴成の手の感触が、ため息がこぼれそうに快い。指が乳首をかすめるたびにびくんと肩が震える。
「いいみたいだね。ここも硬くなってきた」
晴成は乳首に人差指を置いてこねまわす。衣を持ち上げるようにふくりと膨れた乳首が、布とこすれあってうずくような感覚をもたらした。
「あ……そこは……」
「どんな色をしているか見たいな」
晴成は期待に満ちた顔をして単の衿を開いた。乳房がふるりとまろびでて、絢子は真っ赤になった。
少し離れた場所に高灯台がいくつかあるけれど、御帳台には互いの顔が見えるくらいの明るさしかない。しかし、天を向いた乳房は雪の色をして、ぼんやりとした薄闇の中でも輪郭がはっきりとわかる。
「だめ、見たら……」
絢子は背中でずりあがろうとしたが、晴成の膝が腿にのせられると身動きができなくなる。
彼は両のふくらみをそっと覆う。絢子より一回りは大きそうな手や硬い肌の感触に直に触れられると、官能的な刺激が背を駆けた。
「あ……晴成さま……さわっては嫌……」
「ここはさわってほしいと言っているのに?」
晴成は胸をやわやわと揉みだす。五指が乳房にからめられて巧みに揉まれると、甘苦しい感覚が身体中に広がっていく。
「は……だ……だめ……」
直に肌に触れられるのだけでも恥ずかしいのに、胸を揉まれるなんてとんでもない淫らな行為だ。しかも、晴成は弾力のある胸を揉むだけでなく、赤く尖った乳首を指先で押し回しだした。
「あ……んあ……そこは……だめ……なの……」
「かわいい色だね、絢子。開花を待つ梅の蕾の色だ」
晴成は愛おしげに乳首をつまむと、芽を抜くように引き上げる。
軽い力だから痛みはなく、むしろ官能的な刺激がお腹の底に響く。
「あ……そこ、さわっちゃ……」
梨壺と貞観殿は遠い。琳子のいる麗景殿はすぐ近くなのに。
「あなたに逢いたいからだと言っただろう?」
晴成は耳元でささやいてから耳殻を舌先で舐めた。
くすぐったくて肩をすくめてしまう。
「や、やめてください」
「なぜ? わたしが嫌いなのか?」
さみしげな声に胸がちくんと痛んだ。嫌いではない。嫌いになるはずがない。
(こんなふうに抱きしめてくれる男は初めてだもの)
晴成の胸に閉じこめられていると、自分は人恋しかったのだとまざまざと悟ってしまう。
彼のぬくもりが心まであたためてくれるような気がする。
「……嫌いではありません」
「まだ好きだとは言ってくれないのだね」
体重をかけるように抱きしめられて、息が止まりそうになった。
「だって、それは……」
長らく文のやりとりをしてようやく結ばれたという状況ならば、彼が好きだと素直に言えるだろう。
けれど、絢子はまだ晴成と会ったばかりだ。それなのに、簡単に好きだとは言えない。
いや、自分でもよくわからないのだ。彼に抱きしめられてこんなにも胸が高鳴るのは、単に人恋しいからだろうか。それとも、相手が晴成だからだろうか。
「それなら、わたしが好きだと認めさせよう」
甘くささやいて、晴成が絢子の頬にくちづける。
唇が離れるときにちゅっと鳴って、背がぞくんと波打った。
「だ、だめ……」
「頬が嫌なら唇にしようか」
晴成は絢子の体勢を強引に変えた。
ぐいっと引き寄せられて、彼の右肩にもたれる姿勢になる。
晴成から見下ろされて、絢子は息を止めた。左目の下のほくろが婀娜っぽい。
見惚れていると、彼が唇を近づけてきた。口をふさがれて、声も出なくなる。
「う……うう……んんん……」
晴成は当たり前のように舌を差し入れてきた。誘うように舌先をからめられると、絢子は引っ込めていた自分の舌の力をゆるめてしまう。
絢子の小さな舌はなし崩しに引きずりだされて、蝶と花が戯れるように舌同士がからみあう。波濤の動きをする彼の舌に絢子は心を引きずられそうになった。
(だめなのに……)
晴成の舌遣いは巧みで、絢子はみるみるうちに追い立てられてしまう。
身体の芯が熱くうずくが、とりわけ腹の奥がじんじんと痺れてきた。
(どうして……)
身体が熱くなるのだろう。それもうんと離れたお腹の奥が。
困ったことに不快な熱さではないのだった。むしろ、これから先を期待してしまうような心地よい熱なのだ。
「あ……あう……」
くちづけに快さを感じていると、晴成が左手でそっと胸を覆ってきた。骨ばった大きな手が絢子の乳房をすっぽりと覆ってしまう。そのままゆっくりと押し回されて、背筋にぴりっとした戦慄が走った。
(あ……だめ……)
単越しなのに彼の手の熱さや女とは違う硬い肌を感じてどきどきしてしまう。乳房をやわっやわと揉みながら揺すられていると、腹の奥がきゅんとうずいた。
「……気持ちがよさそうだ」
晴成はくちづけをやめて絢子の顔を覗き込んでくる。濡れたような黒い瞳が艶やかで、絢子は見つめられるだけで自分が昂るのを覚えた。
(はしたない……)
男に乳房に触れられて気持ちいいと思うなんて。
いや、それどころか、見つめられるだけで身体の芯が熱くなってしまうなんて。
「これから先は御帳台で愉しもう」
晴成は自信満々に告げて絢子を横抱きにして抱き上げた。
軽々とした足取りなのに、絢子は彼の首に腕を回してしまった。
「怖いのかな、絢子」
「は、はい」
「なにが怖い?」
「なにって……」
不安定な体勢が怖いのだろうか。それとも、これから御帳台ではじまることが?
「怖くないよ。むしろ病みつきになることだ」
晴成は御帳台に敷かれた衾の上に絢子をそっと下ろした。
それから上にのしかかってくる。頭の脇に腕を置かれると、もう逃げられなくなってしまう。
「……晴成さま」
不安と迷いが心の内で渦巻いている。晴成が右手で頬を包んできた。何もかもわかっているというまなざしに、惹きつけられずにはいられない。
「絢子。今からするのはふたりじゃないと愉しめないことだよ」
「ふたりでですか?」
「そうだよ。ひとりだとできないことだから」
晴成の言葉がじんと胸に染みる。
もうひとりではないのだと言われたようで、うれしさが込み上げてくる。
「晴成さま」
たまらず絢子は彼の衣にすがりついた。彼と一緒にいたい。そんな気持ちを伝えたかったのだ。
晴成は愛おしむように髪を撫でてから大きな手で胸を覆う。先ほどと同じように揺さぶられて、快い感覚が肌に広がる。
「あ……あ……」
衣の上から両の乳房をゆったりと揺すられ、先端に向けて絞るように揉まれると、胸が高鳴ってきた。
「ん……んん……ん……」
晴成の手の感触が、ため息がこぼれそうに快い。指が乳首をかすめるたびにびくんと肩が震える。
「いいみたいだね。ここも硬くなってきた」
晴成は乳首に人差指を置いてこねまわす。衣を持ち上げるようにふくりと膨れた乳首が、布とこすれあってうずくような感覚をもたらした。
「あ……そこは……」
「どんな色をしているか見たいな」
晴成は期待に満ちた顔をして単の衿を開いた。乳房がふるりとまろびでて、絢子は真っ赤になった。
少し離れた場所に高灯台がいくつかあるけれど、御帳台には互いの顔が見えるくらいの明るさしかない。しかし、天を向いた乳房は雪の色をして、ぼんやりとした薄闇の中でも輪郭がはっきりとわかる。
「だめ、見たら……」
絢子は背中でずりあがろうとしたが、晴成の膝が腿にのせられると身動きができなくなる。
彼は両のふくらみをそっと覆う。絢子より一回りは大きそうな手や硬い肌の感触に直に触れられると、官能的な刺激が背を駆けた。
「あ……晴成さま……さわっては嫌……」
「ここはさわってほしいと言っているのに?」
晴成は胸をやわやわと揉みだす。五指が乳房にからめられて巧みに揉まれると、甘苦しい感覚が身体中に広がっていく。
「は……だ……だめ……」
直に肌に触れられるのだけでも恥ずかしいのに、胸を揉まれるなんてとんでもない淫らな行為だ。しかも、晴成は弾力のある胸を揉むだけでなく、赤く尖った乳首を指先で押し回しだした。
「あ……んあ……そこは……だめ……なの……」
「かわいい色だね、絢子。開花を待つ梅の蕾の色だ」
晴成は愛おしげに乳首をつまむと、芽を抜くように引き上げる。
軽い力だから痛みはなく、むしろ官能的な刺激がお腹の底に響く。
「あ……そこ、さわっちゃ……」