かりそめ執事のドSなご指南
~観念しやがれ、お嬢様~
葉月エリカ イラスト/氷堂れん
気弱な伯爵令嬢ルーチェは、幼馴染のカーティスに恋をしている。だが父親同士の仲が悪く、遠巻きに見るだけ。ある日、父親たちの賭けの結果、カーティスはルーチェ宅の仮執事となる。直後、両家の両親が乗った船が遭難し、四人は行方不明に。さらに、使用人が財産を奪って逃げてしまう。窮地に陥ったルーチェは「娼館で稼げる」と聞き、そこが何か知らずに「娼館で働く」とカーティスに宣言。怒った彼に「俺専属の娼婦になれ」と抱かれてしまい…? 配信日:2017年8月25日
~観念しやがれ、お嬢様~
葉月エリカ イラスト/氷堂れん
気弱な伯爵令嬢ルーチェは、幼馴染のカーティスに恋をしている。だが父親同士の仲が悪く、遠巻きに見るだけ。ある日、父親たちの賭けの結果、カーティスはルーチェ宅の仮執事となる。直後、両家の両親が乗った船が遭難し、四人は行方不明に。さらに、使用人が財産を奪って逃げてしまう。窮地に陥ったルーチェは「娼館で稼げる」と聞き、そこが何か知らずに「娼館で働く」とカーティスに宣言。怒った彼に「俺専属の娼婦になれ」と抱かれてしまい…? 配信日:2017年8月25日
執事の手は、その家の財産である銀器を曇りなく磨きあげるための手。
執事の舌は、食卓に供するワインをテイスティングするための舌。
主人に対する忠義のもと、私心を滅し、身を粉にして働く――それが執事という存在だと、伯爵令嬢に生まれついたルーチェは信じていた。
それなのに。
「っ……カーティス、やめて……」
「いまさら何をおっしゃるのです」
ドレスも下着も脱がされた素裸のルーチェを寝台に組み敷き、カーティスは瑠璃色の瞳を酷薄に細めた。
糊のきいたリネンシャツに、形良く結ばれたタイ。シルバーグレイのジレと黒いジャケットという着こなしは、礼儀正しい執事そのものだ。
少なくとも、その見た目だけは。
「お嬢様は、俺と取り引きをなさったのでしょう? このキャンベル家を守るために、力を貸して欲しい。その代わりあなたは、俺専属の娼婦になる――と」
「そうだけど……っ」
ルーチェは若草色の瞳を涙に濡らし、羞恥に身を震わせた。
自分が浅はかで世間知らずだという自覚はある。
けれど、まさかこんな展開になるなんて思わなかった。
子供の頃から知っているカーティスは、誰からも好かれて、文武ともに秀でていて、かりそめの執事という役割を押しつけられても、難なくこなしてしまうほどに器用で。
それに比べて自分は、なんの取り柄もない平凡な娘だ。
鈍くて気弱で、自己主張も苦手で、そばにいるだけで鬱陶しい幼馴染みだっただろう。
カーティスにはきっと嫌われている――てっきりそう思い込んでいたから。
「あっ……!」
銀器を磨くための手が、ルーチェの胸の膨らみに触れた。
オレンジの果汁を絞るように、ぎゅっと力を込められて、柔肉の撓む痛みに息が詰まる。
「無力なお嬢様が代償に差し出せるものなど、この体くらいしかないでしょうに」
そんなこともわからないのかと嘲るように言われて、傷つく反面、どこかで嬉しいと感じている自分もいた。
たとえ体だけでも、カーティスがルーチェに価値を見出してくれているのなら。
彼の言うとおりにすることで、そばにいてもらえるのならば、なんだって構わないと思ってしまう。
(だって私は、カーティスのことが好きだから……)
分不相応すぎて、決して口には出せないけれど。
同じ屋敷の中で生活し、腰に響く低い声で「お嬢様」と呼ばれるたびに――そこに本物の敬意などなくとも――どきどきする気持ちは止めようがなくて。
「っ……ぁあっ……」
胸の上に顔を伏せたカーティスが、薄桃色の小さな尖りを啄んだ。
その舌の上で転がされるのは、テイスティング用のワインではなく、じんじんと甘やかな疼きを溜め込んでいく性感の塊だ。
「――っ、ん、はぁっ……」
乳房を揉み込まれながら、その中心をこそげるように舐められれば、自分でも聞いたことのない、しどけない声が洩れてしまう。
冷たいほどの硬質な美貌とは裏腹に、カーティスの手や舌は熱かった。
蕩かされそうなほどの熱が伝播して、ルーチェの呼吸は浅くなる。じゅうっと強く吸引されてびくびくと肩を震わせると、すかさず揶揄の声が投げかけられた。
「一瞬でここを硬くさせて。お嬢様は、案外と好き者でいらっしゃる」
「そんな……」
「構いませんよ。お嬢様がどれほど淫らではしたなくとも、それを知るのは俺一人だけです」
カーティスの左手が脇腹を辿り、腰骨を撫でて、淡い栗色の和毛がそよぐ恥丘を包み込んだ。
中指が薄い肉びらを掻き分けて、ぬるみを湛えた入り口を探る。
何をされるのかと身を強張らせていると、ふいにその上の雌芯を摘みあげられ、悲鳴に似た声が迸った。
「あぁあっ……!」
「良い反応ですね。ぬるぬるした蜜が、ほら、どんどん溢れてくる――」
包皮を剥かれた敏感な花芽をぬちぬちと擦られ、強い快感が腰を貫いた。
「は……ぁあ、あっ……」
溢れる愛液をすくっては塗りつけ、表面をつるつると撫で回されるたびに、くちゅくちゅにちゃにちゃと粘着質な音が立つ。
「聞こえるでしょう? 使用人ごときにいやらしいことをされて、お嬢様が悦んでいらっしゃる証の音です」
「いやぁ……っ」
煽るように自らの痴態を告げられ、ルーチェは両手で顔を覆った。
「どうぞ、存分に乱れなさい。毎晩こうして可愛がられなければ堪らないと、身をよじって、声を嗄らして、俺を求めるようになればいい」
「う……うっ……ああっ……!」
秘玉を弄ぶ指は速度を増し、熟しきったそこは、ずきずきと痛むまでに疼いた。
とめどなく湧き出す蜜は、夜の寝室を甘酸っぱい匂いに染め、淫猥な気持ちを余計に昂らせていく。
つつかれ、くすぐられ、押し潰されて。
捏ねられ、引っ掻かれ、撫で上げられて。
巧みで執拗な男の指戯に、無垢な体はひとたまりもなく、一気に陥落させられる。
「ぁ、んっ、うっ、ああぁあっ……!」
とろとろに濡れた股間で、鮮烈な感覚が弾けた。
天に吸い込まれるような快感に目眩を覚え、しばらくは呼吸もできなくなる。
混乱と陶酔のただ中にあるルーチェを見下ろし、カーティスはふいに険しい表情になった。
「――ルーチェ」
顎を掬われたと同時に、唇を塞がれ、隙間から舌をねじ込まれた。
蹂躙めいた激しい口づけの合間に、カーティスは素の口調で苛立たしげに呟く。
「本当に、お前は……流されっぱなしで、昔からちっとも変わらない――」
「んっ……う……はぁっ……」
酸欠になりそうなほどに口内を貪られながら、ルーチェは運命の悪戯について思いを馳せた。
今から、ちょうど十年前。
あの夜、カーティスから一組のカードを譲られなければ、執事となった彼を傅かせるこの状況は、おそらく起こりえなかったはずだった――……。
執事の舌は、食卓に供するワインをテイスティングするための舌。
主人に対する忠義のもと、私心を滅し、身を粉にして働く――それが執事という存在だと、伯爵令嬢に生まれついたルーチェは信じていた。
それなのに。
「っ……カーティス、やめて……」
「いまさら何をおっしゃるのです」
ドレスも下着も脱がされた素裸のルーチェを寝台に組み敷き、カーティスは瑠璃色の瞳を酷薄に細めた。
糊のきいたリネンシャツに、形良く結ばれたタイ。シルバーグレイのジレと黒いジャケットという着こなしは、礼儀正しい執事そのものだ。
少なくとも、その見た目だけは。
「お嬢様は、俺と取り引きをなさったのでしょう? このキャンベル家を守るために、力を貸して欲しい。その代わりあなたは、俺専属の娼婦になる――と」
「そうだけど……っ」
ルーチェは若草色の瞳を涙に濡らし、羞恥に身を震わせた。
自分が浅はかで世間知らずだという自覚はある。
けれど、まさかこんな展開になるなんて思わなかった。
子供の頃から知っているカーティスは、誰からも好かれて、文武ともに秀でていて、かりそめの執事という役割を押しつけられても、難なくこなしてしまうほどに器用で。
それに比べて自分は、なんの取り柄もない平凡な娘だ。
鈍くて気弱で、自己主張も苦手で、そばにいるだけで鬱陶しい幼馴染みだっただろう。
カーティスにはきっと嫌われている――てっきりそう思い込んでいたから。
「あっ……!」
銀器を磨くための手が、ルーチェの胸の膨らみに触れた。
オレンジの果汁を絞るように、ぎゅっと力を込められて、柔肉の撓む痛みに息が詰まる。
「無力なお嬢様が代償に差し出せるものなど、この体くらいしかないでしょうに」
そんなこともわからないのかと嘲るように言われて、傷つく反面、どこかで嬉しいと感じている自分もいた。
たとえ体だけでも、カーティスがルーチェに価値を見出してくれているのなら。
彼の言うとおりにすることで、そばにいてもらえるのならば、なんだって構わないと思ってしまう。
(だって私は、カーティスのことが好きだから……)
分不相応すぎて、決して口には出せないけれど。
同じ屋敷の中で生活し、腰に響く低い声で「お嬢様」と呼ばれるたびに――そこに本物の敬意などなくとも――どきどきする気持ちは止めようがなくて。
「っ……ぁあっ……」
胸の上に顔を伏せたカーティスが、薄桃色の小さな尖りを啄んだ。
その舌の上で転がされるのは、テイスティング用のワインではなく、じんじんと甘やかな疼きを溜め込んでいく性感の塊だ。
「――っ、ん、はぁっ……」
乳房を揉み込まれながら、その中心をこそげるように舐められれば、自分でも聞いたことのない、しどけない声が洩れてしまう。
冷たいほどの硬質な美貌とは裏腹に、カーティスの手や舌は熱かった。
蕩かされそうなほどの熱が伝播して、ルーチェの呼吸は浅くなる。じゅうっと強く吸引されてびくびくと肩を震わせると、すかさず揶揄の声が投げかけられた。
「一瞬でここを硬くさせて。お嬢様は、案外と好き者でいらっしゃる」
「そんな……」
「構いませんよ。お嬢様がどれほど淫らではしたなくとも、それを知るのは俺一人だけです」
カーティスの左手が脇腹を辿り、腰骨を撫でて、淡い栗色の和毛がそよぐ恥丘を包み込んだ。
中指が薄い肉びらを掻き分けて、ぬるみを湛えた入り口を探る。
何をされるのかと身を強張らせていると、ふいにその上の雌芯を摘みあげられ、悲鳴に似た声が迸った。
「あぁあっ……!」
「良い反応ですね。ぬるぬるした蜜が、ほら、どんどん溢れてくる――」
包皮を剥かれた敏感な花芽をぬちぬちと擦られ、強い快感が腰を貫いた。
「は……ぁあ、あっ……」
溢れる愛液をすくっては塗りつけ、表面をつるつると撫で回されるたびに、くちゅくちゅにちゃにちゃと粘着質な音が立つ。
「聞こえるでしょう? 使用人ごときにいやらしいことをされて、お嬢様が悦んでいらっしゃる証の音です」
「いやぁ……っ」
煽るように自らの痴態を告げられ、ルーチェは両手で顔を覆った。
「どうぞ、存分に乱れなさい。毎晩こうして可愛がられなければ堪らないと、身をよじって、声を嗄らして、俺を求めるようになればいい」
「う……うっ……ああっ……!」
秘玉を弄ぶ指は速度を増し、熟しきったそこは、ずきずきと痛むまでに疼いた。
とめどなく湧き出す蜜は、夜の寝室を甘酸っぱい匂いに染め、淫猥な気持ちを余計に昂らせていく。
つつかれ、くすぐられ、押し潰されて。
捏ねられ、引っ掻かれ、撫で上げられて。
巧みで執拗な男の指戯に、無垢な体はひとたまりもなく、一気に陥落させられる。
「ぁ、んっ、うっ、ああぁあっ……!」
とろとろに濡れた股間で、鮮烈な感覚が弾けた。
天に吸い込まれるような快感に目眩を覚え、しばらくは呼吸もできなくなる。
混乱と陶酔のただ中にあるルーチェを見下ろし、カーティスはふいに険しい表情になった。
「――ルーチェ」
顎を掬われたと同時に、唇を塞がれ、隙間から舌をねじ込まれた。
蹂躙めいた激しい口づけの合間に、カーティスは素の口調で苛立たしげに呟く。
「本当に、お前は……流されっぱなしで、昔からちっとも変わらない――」
「んっ……う……はぁっ……」
酸欠になりそうなほどに口内を貪られながら、ルーチェは運命の悪戯について思いを馳せた。
今から、ちょうど十年前。
あの夜、カーティスから一組のカードを譲られなければ、執事となった彼を傅かせるこの状況は、おそらく起こりえなかったはずだった――……。