征服された姫君
王太子だけの妓女
涼原カンナ イラスト/椎名咲月
紅綺は耀華国の公主だが、母が敵対する藍冬国の皇女――しかも不義密通の疑いをかけられて死んだせいで冷遇されていた。しかし結局、耀華国は藍冬国の侵攻により陥落。紅綺も含め、皇族は藍冬国で監禁されることに。耀華国の皇族を見世物にする宴席で、紅綺は将軍から夜伽を命じられるも、王太子である閃雷が「公主は俺の床侍る」と宣言する。庇ってくれたのかと思いきや、宣言どおりに抱かれてしまう。だが、彼の眼差しは愛を告げるように熱く…? 配信日:2018年3月30日
王太子だけの妓女
涼原カンナ イラスト/椎名咲月
紅綺は耀華国の公主だが、母が敵対する藍冬国の皇女――しかも不義密通の疑いをかけられて死んだせいで冷遇されていた。しかし結局、耀華国は藍冬国の侵攻により陥落。紅綺も含め、皇族は藍冬国で監禁されることに。耀華国の皇族を見世物にする宴席で、紅綺は将軍から夜伽を命じられるも、王太子である閃雷が「公主は俺の床侍る」と宣言する。庇ってくれたのかと思いきや、宣言どおりに抱かれてしまう。だが、彼の眼差しは愛を告げるように熱く…? 配信日:2018年3月30日
唇を甘嚙みされて、心地よさに全身がわなないた。
(どうして、こんなふうになるの?)
唇同士の密な接触が、脳内を痺れさせる。さらには、全身にまで甘い陶酔が満ち、思うとおりにならない。
(くちづけが心地いいなんて)
信じられないし、許されないことだ。閃雷は自分を苦しめようとしているはずなのに、紅綺は不快になるどころか、快さを感じている。
(こんなふうになりたくない)
閃雷の胸を押すが、鋼の盾にも似た彼の胸板を意識させられるだけ。おまけに彼はいっそうのしかかってくるから、かえって逃げられなくなる。
舌と舌は、ほどけてはからまり、唇はひとときも離れたくないというように密着している。
濃密なくちづけを続けながら、彼の手が悩ましげな動きをはじめた。
紅綺のあらわになった乳房をやんわりと覆う。
大きくも小さくもない適度に実った桃のような乳房を覆われ、揺すられる。五指がまろやかに動くと、産毛が総毛立った。
「ん……ん……んう……」
必死に鼻で息をしていても、苦しくなる。くちづけどころか、胸にまで淫らに触れられて、鼓動がいっそう速くなったからだ。
眉間に皺を寄せて彼の胸を叩き、懸命に息苦しさを伝える。ようやく察したのか、彼は唇を解放してくれた。
「どうした?」
「く、苦しいのよ。あちこち同時にさわらないで!」
涙目で訴えると、彼があっけにとられた表情をした。そうすると、鋭い印象がやわらいで、かわいいとさえ思えるほどに無防備な空気をまとう。
「同時にさわるなって……」
「だって、くちづけもして、胸もさわるなんて……。そんなにいろんなところに触れられたら、身体がおかしくなるじゃない」
さっきから味わったことのないうずきを覚えて、調子が変なのだ。それを訴えると、閃雷の頬が緩んだ。
「ふうん、嫌な気持ちじゃないみたいだな」
「は?」
「おまえの反応は俺の望んだものだ。だから、安心しろ」
力強く断言されて、紅綺はむしろ面食らった。とうてい安心などできない。
「安心なんかしないわよ!」
「わかった、わかった。一カ所ずつさわってやるから」
閃雷は聞き分けのない子どもに言い聞かせるふうにしてから、紅綺の両乳房をやわやわと揉みだす。
小麦のかたまりをこねるよりもはるかにやさしい手つきだ。五指が這うたびに腰がひくんと跳ねてしまう。
「あ……だめ……」
乳房の根本から先端までしごくように揉まれると、なんとも表現できぬ心地よさを覚える。甘ったるい刺激に、腹の底が熱を帯びだした。
恥ずかしいことに、彼は紅綺の顔をじっと見つめてくる。表情の変化をわずかでも見逃すまいというように、榛色の瞳は紅綺の白い面をとらえている。
見られている恥ずかしさが肌を敏感にするのか、彼の指が肌をすべるたびに息が荒くなった。
「は……はぁ……あぁ……」
いつのまにか、乳房の頂が赤くぷっくりと腫れていた。彼はそれを見逃さず、乳首を指で挟んでねじる。
「や……そこは……」
「こんなに腫れて痛いんじゃないか? 俺が治してやろう」
にやにやと笑っているから、絶対に悪いことを考えている。それはわかるのに、逃げられないからどうしようもない。閃雷は乳首を乳輪からつまみだしたり、逆に埋めようとしてみたり、ひねったりとさかんに触れる。手つきはまるで遊んでいるかのようで、紅綺は声を荒らげて抗議した。
「それ、治してるっていわないでしょう?」
「そうか? 痛々しいなと心配しているんだが」
うそぶいたあと、彼は唇を右の乳房に近づけ、ためらうことなく乳首をくわえた。濡れた舌をからめられ、たまらず悲鳴をあげた。
「あ、だ、だめっ……」
自分でも驚くほど無防備な声だった。舐めるどころか舌にまとわりつかれると、強すぎる刺激が腰の奧をじんじんとうずかせる。ぬるつく舌が乳暈から吸い上げるように乳首を吸う。痛いほどに吸いつかれて、紅綺は彼の頭を押さえた。
「も、もう、やめて……」
全身がぞくぞくする。背中は跳ねてしまうし、いつもの自分だったら、絶対に出さないような弱々しい声も許せない。
(こんなのわたしじゃない)
ずっと強くなければと思っていた。孤独に耐えなければならなかったからだ。きつい言葉を投げつけられたり、冷淡な態度を示されたりしても、平然としているためには、心を強く保つ必要があった。弱さを見せれば、同情されるどころか、かえって嬉々として攻撃される。だから、罵倒されても、平然と振る舞う必要があった。
けれど、こうして触れられると、ずっと高く保ってきた心の壁がもろくも崩れそうになる。そんなのは望んでいないのに。
彼はいったん乳首を放した。唾液まみれになって、てらてらと輝くそれを見てから、紅綺の顔を見る。
「ここを舐められるのはいいということだな」
「そんなこと、ない」
「いや、いいんだ。いいから、そんなにかわいい声を出す」
自信満々に断言されて、頬がひきつった。どうしてこんなに自身の判断に信頼をおけるのだろう。
「わたしがよくないと言ってるのよ」
「よすぎて困っているんだろう。そんなものだ」
ことの本質を見抜かれた気分になり、紅綺は唇を閉ざした。確かに困っているのだ。彼に触れられると、ふだんの自分が消えてしまいそうだから。
「おまえの肌は本当になめらかで美しい。上等な布でも、こんなに手触りはよくないだろう」
感心したようにつぶやくと、大きな手が左の乳房を覆い、軽く揉む。それを解放した手はさらに腰の線をたどり、腹を何度か撫でる。
「あ、あ、だめ……」
腹を撫でられるとくすぐったくてたまらない。とりわけ、へそのあたりを指先がすべると、寒気に似た感覚が背を走った。
「や……だめ……」
彼は目を細めると、左の乳首をぱくりとくわえた。唾液をすりつけるような愛撫を舌でほどこしながら、かさついた手が腹を撫でる。何度か平らかな腹を撫でた手が、下肢をなんとか覆い隠していた寝衣をはがした。恥丘を覆う金茶色の茂みをすくわれて、紅綺は動揺した。
(そんなところをさわるなんて)
むろん紅綺だって男女の仲にまったく無知なわけではない。どんな手順で進められるかくらい知っている。
しかし、知っているのと自ら体験するのでは、大きく違った。いつも秘めている場所を暴かれる恐怖に、全身を大きく震わせる。
「やめて……!」
怒りで隠せないほど、狼狽してしまう。閃雷は乳房から唇をはずすと、わずかに身を起こして紅綺を見つめる。
「……そんなに怖がるな」
伸ばした手が頬を撫で、前髪をかきわけて額を覆う。
「ひどくはしないぞ」
「そ、そういう問題じゃないわよ」
愛し合ってもいない、心を許してもいない。
そんな男に秘め処を触れられようとしているのが、恐ろしくてたまらないだけだ。
「やめてほしいのか?」
たずねられて、ついこくりとうなずいた。
身体に触れずにいてもらえるなら、そのほうがいい。
彼は紅綺の顔から下肢まで視線をすべらせた。それから再び顔を見つめてくる。
「……やめてくれるの?」
「だめだ。俺は今すぐおまえがほしい」
(どうして、こんなふうになるの?)
唇同士の密な接触が、脳内を痺れさせる。さらには、全身にまで甘い陶酔が満ち、思うとおりにならない。
(くちづけが心地いいなんて)
信じられないし、許されないことだ。閃雷は自分を苦しめようとしているはずなのに、紅綺は不快になるどころか、快さを感じている。
(こんなふうになりたくない)
閃雷の胸を押すが、鋼の盾にも似た彼の胸板を意識させられるだけ。おまけに彼はいっそうのしかかってくるから、かえって逃げられなくなる。
舌と舌は、ほどけてはからまり、唇はひとときも離れたくないというように密着している。
濃密なくちづけを続けながら、彼の手が悩ましげな動きをはじめた。
紅綺のあらわになった乳房をやんわりと覆う。
大きくも小さくもない適度に実った桃のような乳房を覆われ、揺すられる。五指がまろやかに動くと、産毛が総毛立った。
「ん……ん……んう……」
必死に鼻で息をしていても、苦しくなる。くちづけどころか、胸にまで淫らに触れられて、鼓動がいっそう速くなったからだ。
眉間に皺を寄せて彼の胸を叩き、懸命に息苦しさを伝える。ようやく察したのか、彼は唇を解放してくれた。
「どうした?」
「く、苦しいのよ。あちこち同時にさわらないで!」
涙目で訴えると、彼があっけにとられた表情をした。そうすると、鋭い印象がやわらいで、かわいいとさえ思えるほどに無防備な空気をまとう。
「同時にさわるなって……」
「だって、くちづけもして、胸もさわるなんて……。そんなにいろんなところに触れられたら、身体がおかしくなるじゃない」
さっきから味わったことのないうずきを覚えて、調子が変なのだ。それを訴えると、閃雷の頬が緩んだ。
「ふうん、嫌な気持ちじゃないみたいだな」
「は?」
「おまえの反応は俺の望んだものだ。だから、安心しろ」
力強く断言されて、紅綺はむしろ面食らった。とうてい安心などできない。
「安心なんかしないわよ!」
「わかった、わかった。一カ所ずつさわってやるから」
閃雷は聞き分けのない子どもに言い聞かせるふうにしてから、紅綺の両乳房をやわやわと揉みだす。
小麦のかたまりをこねるよりもはるかにやさしい手つきだ。五指が這うたびに腰がひくんと跳ねてしまう。
「あ……だめ……」
乳房の根本から先端までしごくように揉まれると、なんとも表現できぬ心地よさを覚える。甘ったるい刺激に、腹の底が熱を帯びだした。
恥ずかしいことに、彼は紅綺の顔をじっと見つめてくる。表情の変化をわずかでも見逃すまいというように、榛色の瞳は紅綺の白い面をとらえている。
見られている恥ずかしさが肌を敏感にするのか、彼の指が肌をすべるたびに息が荒くなった。
「は……はぁ……あぁ……」
いつのまにか、乳房の頂が赤くぷっくりと腫れていた。彼はそれを見逃さず、乳首を指で挟んでねじる。
「や……そこは……」
「こんなに腫れて痛いんじゃないか? 俺が治してやろう」
にやにやと笑っているから、絶対に悪いことを考えている。それはわかるのに、逃げられないからどうしようもない。閃雷は乳首を乳輪からつまみだしたり、逆に埋めようとしてみたり、ひねったりとさかんに触れる。手つきはまるで遊んでいるかのようで、紅綺は声を荒らげて抗議した。
「それ、治してるっていわないでしょう?」
「そうか? 痛々しいなと心配しているんだが」
うそぶいたあと、彼は唇を右の乳房に近づけ、ためらうことなく乳首をくわえた。濡れた舌をからめられ、たまらず悲鳴をあげた。
「あ、だ、だめっ……」
自分でも驚くほど無防備な声だった。舐めるどころか舌にまとわりつかれると、強すぎる刺激が腰の奧をじんじんとうずかせる。ぬるつく舌が乳暈から吸い上げるように乳首を吸う。痛いほどに吸いつかれて、紅綺は彼の頭を押さえた。
「も、もう、やめて……」
全身がぞくぞくする。背中は跳ねてしまうし、いつもの自分だったら、絶対に出さないような弱々しい声も許せない。
(こんなのわたしじゃない)
ずっと強くなければと思っていた。孤独に耐えなければならなかったからだ。きつい言葉を投げつけられたり、冷淡な態度を示されたりしても、平然としているためには、心を強く保つ必要があった。弱さを見せれば、同情されるどころか、かえって嬉々として攻撃される。だから、罵倒されても、平然と振る舞う必要があった。
けれど、こうして触れられると、ずっと高く保ってきた心の壁がもろくも崩れそうになる。そんなのは望んでいないのに。
彼はいったん乳首を放した。唾液まみれになって、てらてらと輝くそれを見てから、紅綺の顔を見る。
「ここを舐められるのはいいということだな」
「そんなこと、ない」
「いや、いいんだ。いいから、そんなにかわいい声を出す」
自信満々に断言されて、頬がひきつった。どうしてこんなに自身の判断に信頼をおけるのだろう。
「わたしがよくないと言ってるのよ」
「よすぎて困っているんだろう。そんなものだ」
ことの本質を見抜かれた気分になり、紅綺は唇を閉ざした。確かに困っているのだ。彼に触れられると、ふだんの自分が消えてしまいそうだから。
「おまえの肌は本当になめらかで美しい。上等な布でも、こんなに手触りはよくないだろう」
感心したようにつぶやくと、大きな手が左の乳房を覆い、軽く揉む。それを解放した手はさらに腰の線をたどり、腹を何度か撫でる。
「あ、あ、だめ……」
腹を撫でられるとくすぐったくてたまらない。とりわけ、へそのあたりを指先がすべると、寒気に似た感覚が背を走った。
「や……だめ……」
彼は目を細めると、左の乳首をぱくりとくわえた。唾液をすりつけるような愛撫を舌でほどこしながら、かさついた手が腹を撫でる。何度か平らかな腹を撫でた手が、下肢をなんとか覆い隠していた寝衣をはがした。恥丘を覆う金茶色の茂みをすくわれて、紅綺は動揺した。
(そんなところをさわるなんて)
むろん紅綺だって男女の仲にまったく無知なわけではない。どんな手順で進められるかくらい知っている。
しかし、知っているのと自ら体験するのでは、大きく違った。いつも秘めている場所を暴かれる恐怖に、全身を大きく震わせる。
「やめて……!」
怒りで隠せないほど、狼狽してしまう。閃雷は乳房から唇をはずすと、わずかに身を起こして紅綺を見つめる。
「……そんなに怖がるな」
伸ばした手が頬を撫で、前髪をかきわけて額を覆う。
「ひどくはしないぞ」
「そ、そういう問題じゃないわよ」
愛し合ってもいない、心を許してもいない。
そんな男に秘め処を触れられようとしているのが、恐ろしくてたまらないだけだ。
「やめてほしいのか?」
たずねられて、ついこくりとうなずいた。
身体に触れずにいてもらえるなら、そのほうがいい。
彼は紅綺の顔から下肢まで視線をすべらせた。それから再び顔を見つめてくる。
「……やめてくれるの?」
「だめだ。俺は今すぐおまえがほしい」