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経験豊富と呼ばないで! 出戻り処女な私は、年下童貞くんの甘いおねだりに逆らえない

葉月エリカ イラスト/池上紗京
【挿絵全点フルカラー】お金のために「契約結婚」した貧乏子爵令嬢のアデリナだったが、二年で夫が亡くなってしまった。実家に戻った彼女に、幼馴染みで初恋相手のセドリックが男女の営みについて教えて欲しいと頼んでくる。王女を妻に迎えるにあたり、経験を積んでおきたいと。元人妻であるアデリナならそっちの知識も豊富なはず――。ところがアデリナは処女だった! そういう約束の結婚だったのだ。本当のことが言えないまま、アデリナは毎夜セドリックの練習相手を務めることになり…!? 配信日:2019年1月25日 


「初めてはアデリナがいいんだ」
 聞き捨てることのできない真摯な口調だった。
「アデリナがまだ、ランブルグ伯爵を想ってるのも知ってる。彼に操を立てたいのもわかってる。だけど今だけ……一度だけでもいい」
 握られた手に、きゅっと力がこもった。
「本当に好きな人と、してみたい。俺が童貞を捧げたいのはアデリナだけだ」
「セディ……」
 飾り気のない告白に息が詰まり、抑えきれない未練が溢れた。
(本当は、私だって……――)
 キーファに死なれた以上、アデリナは一生再婚することはないと思っていた。家計を支えるのに精一杯で、恋人を持つ気にもなれなかった。
 つまりアデリナは、この先ずっと男性を知ることはないはずだった。処女のまま中年になり、老境を迎え、女に生まれた喜びを得られないまま、一人寂しく死んでいく。
(セディのことを忘れられないのは、絶対に苦しい。だけど、何もないまま人生を終えるのも、きっと……)
 どちらに転んでも苦しいのなら、いっそ――と心が揺れる。
 乱れる心の奥底では、クローディアへの対抗心も皆無ではなかった。
 セドリックの初めての女性になれるかもしれない。その一点においてだけ、自分は彼女よりも抜きん出ている。
「俺を見て、アデリナ」
 揺らぐ視線を捕まえるように、セドリックがアデリナの頬に手を添えた。
「好き。――ずっと大好きだよ」
 唇を啄むキスをされ、頑なに閉じようとしていた膝の力が思わず抜けた。
 それを受容だと解釈したのか、セドリックは腰をより密着させてきた。
「あっ……」
 ぬるつく花床に、亀頭がぶつかる。やみくもに突き立てられようとしたそれは、勢い余ってにゅるんと滑り、見当違いの方向へ跳ねあがった。
「あれ? ここだよね? ……なんで……くそ、入らない……」
 焦ったように顔を赤くし、何度も挿入を試みようとしては失敗する。
 彼が慣れていないせいもあるが、アデリナの蜜口が処女の硬さで閉じていることを、セドリックはわかっていない。
 こんなときなのに、アデリナの胸中には幼少時の思い出が蘇った。
(なんでも必死になるの、変わってないのね――……)
 子供の頃は、たった一歳の違いでもできることに大きな差がある。
 駆けっこや縄跳びやカードゲーム。セドリックはアデリナと同じことができないとべそをかき、歯を食いしばって何時間でも挑戦していた。
 そのときの表情と今のセドリックの様子が、ふいに重なって見えてしまう。
 見かねたアデリナに助言されたり、手を貸されて成功すると、
『やった! できたよ、アデリナ!』
 と得意満面に笑う顔まで思い出してしまって。
「……焦らないで」
 アデリナもいっぱいいっぱいだったが、ひとまずそう声をかけた。
「ゆっくりでいいから……そこ……」
 ――後先のことを考えるのは、もうやめた。
 弟のように愛し続けたかったのに、弟のままではいてくれなかったセドリック。
 互いに大人になって、どうしたわけかこんなふうに裸で向き合うことになって。
(セディが困ってる。なら、私は助けないと)
 アデリナを衝き動かしたのは、それだけのシンプルな理由だった。セドリックの雄茎に触れ、手探りで自分の入り口に導いていく。
「あ……もしかして、ここ?」
 先端の位置がぴたりと定まり、セドリックが顔をあげた。
 見たこともないほど緊張した面持ちで、慎重に腰を進めようとする。
「挿れる、ね……――んっ……あ……ぅ……!」
 重量感のあるものが、狭隘な蜜道をずずずっ――と割り裂いた。
 襞と襞の間をめりめりと引き剥がされるような痛みに、アデリナは声のない悲鳴をあげた。
(痛い、痛いっ……無理……こんなの大きすぎる……!)
 恥骨が軋み、涙が滲む。それでも唇を嚙みしめて、拒絶の言葉を必死に呑み込む。
 セドリックのほうも泣きそうな顔で、アデリナに夢中でしがみついていたから。
「嘘みたいだ――俺、ほんとにアデリナの中にいる」
 じりじりと自身を埋めきったセドリックは、感激に声を上擦らせ、「すごい、すごい」と繰り返した。
 アデリナも、痛みさえ別にすれば、本当にすごいことだという感慨に打たれていた。
 互いの一番大切な場所がみっちりと食み合い、ふたつの体がひとつに繋がっている。自分たちはやっぱり男と女だったのだ。
「中、ぬるぬるして……狭くて、めちゃくちゃ気持ちいい。こんなの、動いたらまたすぐに出ちゃうよ」
「なら、このままでいれば?」
 アデリナとしては挿入だけで苦しすぎ、この上動かれては壊れると思った。
 しかしセドリックは首を横に振り、何やら決然と言う。
「それじゃ、アデリナが気持ちよくないでしょ。俺、頑張るから。初めてだけど、アデリナにも感じてほしいから」
「そんな、気を遣わなくていい……ああぁっ……!」
 唐突に腰を引かれ、内臓ごと引きずり出されそうな衝撃に声があがった。
 あと少しで抜けるところまで後退した男根は、濡れた媚肉をぶちゅんっと叩き、また奥へと潜り込む。
「こんな感じ……? はぁ……腰、ぐずぐずになりそう……」
 射精感を堪えるように眉を寄せ、セドリックはずっちゅずっちゅと緩慢な往復を続けた。
 揺さぶられるたびに引き攣るような痛みが走るが、一生懸命なその様子を見ると、やめてという声も喉に詰まる。
(こうしてると、セディは気持ちいいの……?)
 好きな男が、自分の体の内で快感を得ている。
 その事実は、アデリナの心をじわりと高揚させた。少しずつ彼を受け入れる方向に意識が変わり、強張っていた蜜洞がそれにつれて綻んでくる。
「あっ……なんか今、奥に届いた」
 腰を穿ちながら、セドリックが目を瞠った。
「こりってした何かに当たって……これが子宮口ってやつ?」
「あ、んっ……! あぁあ、やぁっ――」
 張り出した雁首が深い場所をぐりぐりと抉り、奇妙なざわめきが走る。
「これくらい奥がいい? それとも、もっと浅いところ?」
 決して余裕があるわけではないだろうに、セドリックはアデリナの官能を掘り当てようと懸命だった。燃えるように熱いものが狭い場所をずくずくと行き来するのに、膣内が独りでにうねった。
「あぁんっ……!」
 臍の裏の窪みを突かれて、アデリナの喉から洩れたのは、まぎれもない嬌声だった。熱心に反応を窺うセドリックが、その響きを聞き逃すわけもない。
「ここ? ここだよね?」
 腰を摑まれ、見出されたばかりの弱点を重点的に打ちつけられた。これ以上なく膨張した若茎が、乳白色の愛液を飛び散らす勢いで、がむしゃらに蜜壺を攪拌する。
 急に強くなった快楽に、アデリナの背中は孤を描き、両手の指が敷布を掻き毟った。
「ひぁあ、ああっ……はぁんっ……!」
「アデリナも気持ちいい? だったら、嬉しい――」
 全力疾走でもしているように汗みずくになりながら、セドリックは笑った。
 淫らな行為の最中に似つかわしくない、少年めいた無邪気な笑みに、鳩尾のあたりが締めつけられた。
(初めてなのに……年下のくせに……)
 自身の快感よりも相手を優先しようとする彼の気持ちが、どうしようもなくいじらしい。
 アデリナは思わず腕を伸ばし、セドリックの頭を胸に抱いて、柔らかな金髪を掻き乱した。
「んっ……アデリナ、待って」
 乳房に顔を挟まれて、セドリックが慌てた声を出す。
「俺、あんま余裕ない、からっ……そんな、押しつけないで……ああ、もうっ……!」
 仕返しとばかりに、セドリックはアデリナの乳首に嚙みついた。
「やっ……!」
 尖ったままの乳頭をむぐむぐと食まれて、背筋が粟立つ。
 増幅した快感に連動して、セドリックを咥え込んだ場所がきゅうきゅうと収縮した。
「だから、駄目だって……そんな締めないで……そこ、緩めて……」
 アデリナの意思とは無関係に、喜悦に支配された秘処は、淫猥な動きでセドリックを絞りあげる。
「ん……アデリナ……俺、もう……っ」
 セドリックが切羽詰まった声を洩らし、顔を天井に向けた。
 表情はつらそうで呼吸も苦しそうなのに、腰だけは猛然と前後して、アデリナの最奥をばつばつと穿ち続けている。溢れた愛液はじゅぷじゅぷと泡立ち、肌と肌のぶつかる音が高く響いた。