巫女は初恋にまどう
王に捧げる夜の蜜戯
あまおう紅 イラスト/カキネ
アシタロテ神殿の 巫女・ミュリエッタは、国王の聖婚相手――寄進と引き換えに床を共にする――に指名される。 アシタロテは性愛を司る女神でもあり、聖婚は神聖な義務のひとつ。 ミュリエッタは成人の義を済ませ、聖婚に備えることになる。 成人の儀は祭壇で処女を捧げるものだが、その相手に初恋の人・エレクテウスが選ばれ……? 発売日:2012年12月28日
王に捧げる夜の蜜戯
あまおう
アシタロテ神殿の 巫女・ミュリエッタは、国王の聖婚相手――寄進と引き換えに床を共にする――に指名される。 アシタロテは性愛を司る女神でもあり、聖婚は神聖な義務のひとつ。 ミュリエッタは成人の義を済ませ、聖婚に備えることになる。 成人の儀は祭壇で処女を捧げるものだが、その相手に初恋の人・エレクテウスが選ばれ……? 発売日:2012年12月28日
「儀式のときは両方同時にさわられるんだぞ。よく知りもしない男に。我慢できるのか?」
揶揄を交えて言われ、頭をふる。しかし彼の声はミュリエッタをどこまでも追いつめてきた。
「胸だけではない。ここも、……ここも。すべて、あますところなくさわられる」
右手で胸をいじりながら、左手が衣の上から脇腹をなであげてくる。脇の下で指が踊ると、ミュリエッタはくすぐったさに身をよじった。
「ひゃ……ぁ、や、やだって……!」
声を張り上げて上体をこわばらせると、エレクテウスの両手は、それまでしつこく張り付いていたのが嘘のように離れていった。
「ミュリエッタ、考えが変わったろう?」
「——……!」
ミュリエッタはやっと、こんなことをする彼のねらいを悟った。つまりは他の神官を相手にしたいという言葉を撤回させたいのだ。
答えを導くように訊ねた後、彼はふたたび椅子に座るミュリエッタの前に膝をつく。
「…………」
確かに、顔見知りていどの神官にされたいことではない。しかし今まで多くの見習い巫女が、その儀式をこなしてきたのだ。
たぶんミュリエッタと同じ。儀式で何をするかなどを考えては受けられなくなってしまう。だから考えないようにして当日を迎えたのだろう。
それをあえて突きつけて「おまえのためなのだから、言うことをききなさい」と言われて、はいそうですか、などとうなずけるものか。
(そんなの、本当に子供みたいじゃない。かっこ悪い……)
ミュリエッタはぷい、と横を向いた。
「……だ、大丈夫だから。心配しないで」
と、彼は紫色の目をつと眇める。
「つまり、まだ分かっていないということだな?」
放り出すような口調に、ひやりとした。
(怒った)
ミュリエッタはすぐにそう気づいた。とたん、意地を張り続けていた気持ちがひるんでしまうが、その時にはもう遅かった。
彼はミュリエッタの両脚を持ち上げるや、おもむろに椅子の肘掛けに引っかける。
「え、えぇ……っ? なに?」
ぼんやりとして反応が鈍くなってしまったのは、エレクテウスが自分にひどいことなどするはずがない、という思いこみがあったからだ。
しかしそれは間違いであったかもしれないと、今になって感じ始めた。
足を閉じようとしたものの、その間にはすでにエレクテウスの身体がしっかりと入り込んでしまっているため、閉じられないのだ。
彼の目の前で、はしたなく足を開いている。その状況に遅まきながら気づき、ミュリエッタは首をふる。
「や……やだ——どうして……っ」
「教えてやっているんだ。おまえの選択が本当に正しいものなのか、否か」
ちらりと薄い笑みをひらめかせた彼の手が、下衣(キトン)の合わせの中に潜り込んできて、ミュリエッタは悲鳴を上げた。
「や、やだっ、——そんなの……っ」
「ミュリエッタ。男はおまえの……ここにもふれる」
足の付け根に、もっとも奥まったところにまで手が差し込まれてくる。下衣(キトン)の下には何もつけていないというのに。ミュリエッタはあわててその手を押さえた。
「やだやだ! ……やめて——」
すると、彼は紫の瞳を射るように輝かせて見つめてきた。
「成人の儀を私にまかせるか?」
(なんで……?)
エレクテウスの手を押さえたまま、ミュリエッタは困惑してしまう。
どうして彼は、そんなふうに自分にこだわるのだろう? 何か理由があるのだろうか。
しかしこちらにも事情がある。たった一夜限りだとしても——否、だからこそ、彼と恋人の真似事をするなど絶対にいやだった。
軽い気持ちなどではない。自分は、本当に本気で彼が好きなのだから。
「ミュリエッタ、返事は?」
「いやよ! いやだって、さっきも言った——あっ、ん、……っ」
ふいに長い指が秘裂をそっとなでた。直接ふれられている指の感触に、羞恥のあまり顔中が心臓になったような気がした。
「や……やだっ、ねぇ——……ひぁ……!」
人さし指の指先が、秘裂を開こうとするかのように、割れ目に沿ってくすぐり始める。
「んんぅ……!」
「まだあまりぬれていないな」
無遠慮にふれてくる指に首をふり、ミュリエッタは彼の両肩を手で押しやろうとした。
「だからやだって……! お願い、もうやめ——やゃぁ……ん」
声は途中で甘く腰くだけになる。人さし指と親指が、秘裂の上部にある粒を見つけ出し、ふにふにとつまんできたのだ。いままで、あることすらほとんど意識しなかったようなもの。しかしそれは、彼の指にふれられたとたん、信じられないほどの愉悦を生み出した。
「や、それ、……ダメ! ダメっ……あぁぁ……っっんぅ!」
ダメと言ったとたん、器用な指によって小刻みに振動を与えられ、ミュリエッタは身体をびくびくとふるわせる。とろりと、股の間で何かが染み出すのがわかった。
気がつけば、押しやろうとしていた彼の両肩にしがみついている状態である。
「ふぁ……は、……っ」
「……何か言いたいことはないか?」
「お、処女(おとめ)は女神に捧げないと……い、いけないんだから……っ」
「むろん心得ている。処女(おとめ)を奪うまではしないさ。だがそこに行き着くまでにも、人にはたくさんの快楽がある」
エレクテウスは手をのばしてミュリエッタの外衣(ヒマティオン)を肩から落とし、両肩の飾りピンに手をかけた。そして止める間もなく、それを外してしまう。
「や……!」
肌をすべり落ちた白絹から、両の胸がほろりとまろび出る。オレンジの実のように瑞々しく張りのある胸は、自分の部屋で一人で検分するぶんには、なかなか悪くないのではないかと思えたが、こうやって彼の目にさらされるのは耐えられなかった。
揶揄を交えて言われ、頭をふる。しかし彼の声はミュリエッタをどこまでも追いつめてきた。
「胸だけではない。ここも、……ここも。すべて、あますところなくさわられる」
右手で胸をいじりながら、左手が衣の上から脇腹をなであげてくる。脇の下で指が踊ると、ミュリエッタはくすぐったさに身をよじった。
「ひゃ……ぁ、や、やだって……!」
声を張り上げて上体をこわばらせると、エレクテウスの両手は、それまでしつこく張り付いていたのが嘘のように離れていった。
「ミュリエッタ、考えが変わったろう?」
「——……!」
ミュリエッタはやっと、こんなことをする彼のねらいを悟った。つまりは他の神官を相手にしたいという言葉を撤回させたいのだ。
答えを導くように訊ねた後、彼はふたたび椅子に座るミュリエッタの前に膝をつく。
「…………」
確かに、顔見知りていどの神官にされたいことではない。しかし今まで多くの見習い巫女が、その儀式をこなしてきたのだ。
たぶんミュリエッタと同じ。儀式で何をするかなどを考えては受けられなくなってしまう。だから考えないようにして当日を迎えたのだろう。
それをあえて突きつけて「おまえのためなのだから、言うことをききなさい」と言われて、はいそうですか、などとうなずけるものか。
(そんなの、本当に子供みたいじゃない。かっこ悪い……)
ミュリエッタはぷい、と横を向いた。
「……だ、大丈夫だから。心配しないで」
と、彼は紫色の目をつと眇める。
「つまり、まだ分かっていないということだな?」
放り出すような口調に、ひやりとした。
(怒った)
ミュリエッタはすぐにそう気づいた。とたん、意地を張り続けていた気持ちがひるんでしまうが、その時にはもう遅かった。
彼はミュリエッタの両脚を持ち上げるや、おもむろに椅子の肘掛けに引っかける。
「え、えぇ……っ? なに?」
ぼんやりとして反応が鈍くなってしまったのは、エレクテウスが自分にひどいことなどするはずがない、という思いこみがあったからだ。
しかしそれは間違いであったかもしれないと、今になって感じ始めた。
足を閉じようとしたものの、その間にはすでにエレクテウスの身体がしっかりと入り込んでしまっているため、閉じられないのだ。
彼の目の前で、はしたなく足を開いている。その状況に遅まきながら気づき、ミュリエッタは首をふる。
「や……やだ——どうして……っ」
「教えてやっているんだ。おまえの選択が本当に正しいものなのか、否か」
ちらりと薄い笑みをひらめかせた彼の手が、下衣(キトン)の合わせの中に潜り込んできて、ミュリエッタは悲鳴を上げた。
「や、やだっ、——そんなの……っ」
「ミュリエッタ。男はおまえの……ここにもふれる」
足の付け根に、もっとも奥まったところにまで手が差し込まれてくる。下衣(キトン)の下には何もつけていないというのに。ミュリエッタはあわててその手を押さえた。
「やだやだ! ……やめて——」
すると、彼は紫の瞳を射るように輝かせて見つめてきた。
「成人の儀を私にまかせるか?」
(なんで……?)
エレクテウスの手を押さえたまま、ミュリエッタは困惑してしまう。
どうして彼は、そんなふうに自分にこだわるのだろう? 何か理由があるのだろうか。
しかしこちらにも事情がある。たった一夜限りだとしても——否、だからこそ、彼と恋人の真似事をするなど絶対にいやだった。
軽い気持ちなどではない。自分は、本当に本気で彼が好きなのだから。
「ミュリエッタ、返事は?」
「いやよ! いやだって、さっきも言った——あっ、ん、……っ」
ふいに長い指が秘裂をそっとなでた。直接ふれられている指の感触に、羞恥のあまり顔中が心臓になったような気がした。
「や……やだっ、ねぇ——……ひぁ……!」
人さし指の指先が、秘裂を開こうとするかのように、割れ目に沿ってくすぐり始める。
「んんぅ……!」
「まだあまりぬれていないな」
無遠慮にふれてくる指に首をふり、ミュリエッタは彼の両肩を手で押しやろうとした。
「だからやだって……! お願い、もうやめ——やゃぁ……ん」
声は途中で甘く腰くだけになる。人さし指と親指が、秘裂の上部にある粒を見つけ出し、ふにふにとつまんできたのだ。いままで、あることすらほとんど意識しなかったようなもの。しかしそれは、彼の指にふれられたとたん、信じられないほどの愉悦を生み出した。
「や、それ、……ダメ! ダメっ……あぁぁ……っっんぅ!」
ダメと言ったとたん、器用な指によって小刻みに振動を与えられ、ミュリエッタは身体をびくびくとふるわせる。とろりと、股の間で何かが染み出すのがわかった。
気がつけば、押しやろうとしていた彼の両肩にしがみついている状態である。
「ふぁ……は、……っ」
「……何か言いたいことはないか?」
「お、処女(おとめ)は女神に捧げないと……い、いけないんだから……っ」
「むろん心得ている。処女(おとめ)を奪うまではしないさ。だがそこに行き着くまでにも、人にはたくさんの快楽がある」
エレクテウスは手をのばしてミュリエッタの外衣(ヒマティオン)を肩から落とし、両肩の飾りピンに手をかけた。そして止める間もなく、それを外してしまう。
「や……!」
肌をすべり落ちた白絹から、両の胸がほろりとまろび出る。オレンジの実のように瑞々しく張りのある胸は、自分の部屋で一人で検分するぶんには、なかなか悪くないのではないかと思えたが、こうやって彼の目にさらされるのは耐えられなかった。