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贖いの聖夜
~無垢な伯爵令嬢は修道士と愛を交わす~
しらせはる イラスト/氷堂れん
父より年上の老いた王に嫁ぐことが決まっている伯爵令嬢アーチェは、護衛のガルディアと遠駆けに出た際、ハプニングで落馬しかかったところを修道士のイリヤに助けられる。もともとイリヤが伯爵家を訪ねようとしていたのもあり、お礼もかねて彼を館へ泊めることに。実はアーチェには、失くした記憶とけっして誰にも明かせない淫らな秘密がある。それは、過去に起きたある出来事に関係しており、アーチェにとって秘密は罰も同じだった。しかし、それをイリヤに暴かれた挙句、関係を持つことに。彼はいったい何者なのか。心惹かれていくアーチェだが…? 配信日:2024年7月25日 


 イリヤがふうっとそこに息を吹きかけた。じぃんとして、甘く痺れる。つながったところがきゅっと締まったところに、なかにいる男性の熱が抜きさしされ、思いがけなく擦れたところが気持ちよくて、アーチェは自分で動きたくなった。腰を浮かせ、引くと、自分自身の意志でそこが男を咥えこんでいるさまが見える。開いた肉と、挿す肉棒。動きかたをちゃんと覚えておけば、だれが相手でもよくできそう……と思っていたら、イリヤがアーチェに合わせるように動きはじめ、気持ちのいいところがますます深く擦られて、喘ぎがとめられなくなる。
「あぁ、あっ! そこ、気持ちいい……気持ち、いぃ……ぁあん、ぁ、あぁん!」
「だれでもいいわけではないでしょう」
 まだわからない。けれど、イリヤが肉芽に添えた指の熱さが、じんわりと快楽に甘さを添えていって、
「イリヤさま、イリヤさま、キス……して、ください」
 互いの体でつなげられるところはすべて、つなげてしまいたくなる。抱いてくれる相手の肩を抱き寄せ、ねだると、イリヤは火照ったアーチェの唇に乾いた彼のそれを触れあわせ、優しく額を撫でながら、
「……です」
 小さくなにかを囁いた。あまりに小声で、聞きとれない。
「なぁに? もう一回……ぁ、言って……ぁ、あぁ、抜いちゃだめ……!」
 なかいっぱいに滲む露を搔きながら男性器が引き抜かれた。懇願の声は唇に呑みこまれたが、ここでやめられたくない。必死で腿を浮かせて追いかけると、抜けそうなぎりぎりのところで戻ってくる。火照りきり、膨れあがった内襞がすごい勢いで搔き分けられて、一つ一つが破裂しそうな悦びだ。奥をぐりっと抉られた。アーチェはのけ反って声を洩らす。
「ん、ぁあ、すごい……あぁ、また……抜かない、で……行かないで、え、ぁあん!」
 男性器の棹がゆっくりと大きく、アーチェに抜きさしされる。イリヤが入ってくるたび悦びが増していき、下腹が熱く、なにか洩れてしまいそうに痺れていた。アーチェは男の背に腕をまわし、汗で滑る手を背筋にそって這わせた。内腿で彼の腰を締めつけ、快楽のなかでもよりよいところを抉ってもらおうとする。求めるとイリヤはキスをくれて、体と同じように唇と舌もお互いに絡みあわせた。イリヤの動きがやがて一定の律動を刻みはじめる。アーチェも、その刻みごとに自分が高みに追い込まれていくのがわかって、
「ぁ、ぁ、あっ……あ! あぁっ……だめ、だめ、も……こんなのって、あるの……っ?」
「アーシュエリー…………アーシェ……ぁ、はぁ……きみ……」
「いいの、いいの、気持ちいいの、いいっ……! こんなになる、なんて、知らなかっ……ぁあん、なにか、来るの、来る、来ちゃぅ、あぁ、あ、あ―――――!」
 びくん、となかが跳ねた。内壁がイリヤの熱を揉みこむように、ぐにゃりぐにゃりと勝手に動きだす。ぐったりと重たくなっていく体のなか、まるでそこだけ蛇が躍っているように。イリヤのいまだ硬いものを感じつつも、アーチェは指一本動かせず脱力した。ひく、ひく、と結合部が引きつけを起こしている。
 イリヤが、身を屈めてそっとアーチェの乳首を口に含んだ。
「……ゃ……」
 もう表皮が麻痺してしまって、なにも感じない。イリヤの唇のなかで、痺れた乳首がころころと転がり、舌先で粒のかたちをなぞられる。
「……だめ、いたずら、しないで……」
「もっとしたい」
 わがままな子供のような囁きは、イリヤのものなのか。唇が、顔を背けたアーチェの首筋をたどっていき、耳の下にキスが触れた。乳首にしたように耳朶を舌でくすぐられる。
「アーシュエリー……ここに注いでも、いい?」
イリヤの手のひらがアーチェの下腹に広げておかれ、ゆっくりと撫でさすった。
(注ぐ……なにを?)
 ぬくみが染みてきて、感じきったところも緩みはじめる……と、イリヤがそっと腰を引き、静かに挿しいれた。くちゃり、と音が響く。
「ぁふ……」
 うねりのおさまった胎内が、また新たな快楽の予感に、ひくっと震えた。イリヤがまた引いて、また挿し入れると、達したときと同じだけの快感が蘇り、その上にさらに気持ちよさが積みあがっていくようで、
「こわい……ゃ、もう、できな……ぃ」
「大丈夫。僕を見て」
 うながされて目をあげると、青い目が吸いこまれそうなくらい近くにあった。イリヤの顔だちはきれいなままで、眼差しは優しく、信頼できる。見つめているとキスをされ、イリヤが囁いた。
「僕だよ、アーシェ……」
(……なんのこと?)
 アーチェが彼に見入っているあいだにも、ゆっくりした抜きさしは続き、快楽はいまや下腹部から胸や腿、手足の爪先まで広がっていった。イリヤの肌に爪をたてる、その指先に伝わる熱さえも心地よい。アーチェはイリヤの金髪に額をすり寄せた。彼から滲みだした汗がアーチェの顎を伝って滴る。二の腕と肩をイリヤの胸板に預けて、彼にもたれかかるように座ると、二人の結合部がこれ以上ないくらい深くなり、指で触れると、おへそのすぐ下までイリヤの先端が届いているのがわかった。
「こんなところにぃ……いるの……」
「そう。僕はいるよ」
「あっ……」
 イリヤがアーチェの乳房を横からすくいあげて、揺らした。胸への刺激に感じて、腰を反らせると、イリヤの硬い男性器がアーチェを内側から押しあげる。アーチェは下腹部に手をあて、肌越しにイリヤのものをさすった。すでに互いのぬくもりは一つに溶け合っていて、境目がないくらい彼がそこにいることが自然に感じられる。いまは、自分のなかの空虚が埋まっていた。温かい、と、心から思ったとき……どうしてなのか眦が熱くなった。
「どうして泣くの?」
 耳元に囁きが。気づくと頬を涙がこぼれ落ちていて、アーチェが手で拭いきれないぶんをイリヤがキスで吸う。
「わからな……ごめんなさい」
「謝らないで……アーシェ」
「ぁ、ぁあ……イリヤ、さ……どうして、アーシェって呼ぶの……?」
 アーシュエリーの愛称はアーチェだ。まわりはみんなそう呼ぶのに――かつて、一人だけアーシェと呼んだ男の子がいた。あの子はだれ?
 イリヤは問いに答えず、アーチェの口を唇で塞いだ。太腿を抱えあげ、性器を抉るようにまわして内壁をまんべんなく搔いていく。充血しきった胎内は、どこに触れられてもひどく熱いのに、全部をそうされては火がつきそうだ。ゆっくりと、円を描く動きに翻弄されて、じっとしていられなくなる。アーチェは修道士の肩や手をつかみ、爪をたてて、怖いほどの悦楽から逃げだそうと試みた。
「いやぁ、ぁ、ぁあ……だめぇ、もう、おかしくなる……ぅ」
「もうすぐだから、アーシェ。おかしくなっていいから、身を任せて」
「もう、だめぇ、もう……溶けちゃう、溶けちゃ……ぁあ、また、飛びそ……ぁ、イリヤ、様、イリヤさまぁ……!」
 もっと激しくしてもいいのに、イリヤはこめかみに汗を滲ませながら、ゆっくりと抑えた動きを続ける。先ほど爆発した上に、さらに積みあげていった熱さがそろそろ限界に達する予感がした。逃げたいのに逃げたくない。アーチェはイリヤの手を口元に引き寄せ、指を嚙む。ぐるん、ぐるんとなかを抉っていた棹が動きをとめ、ぴんと張るように震えた。アーチェが最後の達する刺激が欲しくて自ら腰を振ると、イリヤがうめき、応えるように深く深く、自らを限界まで突き入れて、
「ぁあ、アーシェ……!」
「ぁ、あぁぁぁあ! あ!」
 熱がこぼれだすような頂点を迎えたアーチェのなかに、こぼれだした熱を補うような液体が注がれていく。どく、どく、と震えているのはイリヤの男性器で、熱水を放出しているのも彼なのか。ごくん、ごくん、とアーチェのなかが喉のように痙攣して、注がれるものを一滴もこぼすまいと呑みこんでいく。一人で達したときとはまるで違う……満たされる、とはこういうことなのか。イリヤの腕が、アーチェの体に手をまわして支えていた。見つめてくるのは、青い、青い目だ。
(わたし、知っている……この色)
 あれはどこで見たのだったか。重なってくる唇を受けとめながら目を閉じたアーチェの耳に、かすかな声が届いたような気がした。