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恋獄の愛玩姫
~花嫁は後宮に囚われて~
斎王ことり イラスト/田中 琳
皇帝と皇子の淫らな愛に翻弄される、愛玩姫の運命は!? 発売日:2012年7月3日 


 触れられるだけで、快楽の頂点を予感してしまう。淫らに、ねっとりとしたもので愛撫されるあの快感。中を埋め尽くしてくる熱い肉棒。こすれあう襞がそれを締め付け焼け付く感覚。からみつく襞を濡れた亀頭が犯していくあの感覚。蛍華はその体感をすぐにも思い出すことができてしまう、自分があまりに淫らになったせいだと、激しく悔いた。
「おまえを帰さない。俺のものにする。皇帝の愛玩姫」
 その言葉に蛍華は、いっそう不安を覚えた。
「ねえ、牙桜様。絶対に雷蝉様に逆らうのはやめてください。もう雷蝉様にたてつかないで」
「雷蝉を、恐れるのか? 雷蝉は褥でおまえにどんな酷いことをする? 以前は”乙女殺し”とまで言われた男だ。さぞ酷いことをさせるのだろう?」
「違うの」
 あの部屋はここだった。あのときも、今も牙桜は雷蝉皇帝を亡き者にして自分を手に入れようと言ったのだ。それは絶対にやめさせなくてはいけない。雷蝉の恐ろしさを牙桜はきっと知らないのだ。
 あの夢が何を予知するものかはわからなかったが、皇帝に逆らうことだけはさせられない。
「牙桜様」
「愛おしいんだ。雷蝉に渡したくない」
 黄金の腕輪が蛍華の背後から回された牙桜の右腕で妖しく輝く。蒼い玉の龍の目、黒い玉の龍の目。蒼い目の龍は牙桜、黒い目の龍は雷蝉を思わせる。まるで、戦いを思わせる、向かい合い牙を剥く双頭の龍。牙桜はそんな蛍華の予知夢をまるで知らない。
 腰に触れた手を淫唇に、触れようとしたその手を遮るように蛍華がそこにあった牙桜の上衣を纏った。そして寝台から滑り降りる。
 丈の長い上衣だから、腰ひもで結わえてしまえば、夜の闇に紛れて姫殿に帰れる。
「何故隠す? こんなに綺麗な身体なんだ。いつも脱いでいるべきだ」
 牙桜が蛍華の裾を捲り上げ、背後から太股のあいだに膝を割り入れてくる。
「あ」
 うねる身体を押さえつけ、両手で背後から揉んでくるのは白い胸の膨らみだ。夜の気で冷えたところを、牙桜の手で荒々しく揉みし抱かれ、先端の紅を指の先で押しつぶされてはこねられていく。蛍華は子壺の奥が、じゅくんとはじけてくるのを否応なしに感じさせられている。
「感じているだろう?」
「違う……わ!」
「感じていると、かわいい声で言ってみろよ。いつも雷蝉には言っているんだろう? どうして俺には言ってくれない? このままだと欲しいものは何も得られないぞ。おまえのここは」
「ひう……」
 唐突に淫唇を割られて、恥丘を撫で、雌芽をまさぐりつけてくる牙桜の巧みな指先に蛍華は腰を砕かれる。
「あ」
 寝台から滑り落ちた身体は、力なく沈み込んで、氷のように冷えた螺鈿細工の床に乳房が押し当てられた。牙桜も続いて床に下り、その上に乗り上げてくる。
「愚か者だな。素直に、感じるといえば、ここにおまえが求める雄をはめてやるのに」
「下品だわ……皇子……様」
「その下品な皇子は嫌いか? 下品な雄が大好きだろう? おまえは」
牙桜は、色香漂う蒼い目で語り、そして唇で誘うように蛍華の舌を吸ってくる。
 あらがいようのない魔力。魔術のような愛撫。
 いつしか、蛍華のほうから求めるように彼の口腔に舌を差し入れ、激しく音を立てながら舌を求め、からみつかせる。
 牙桜の思うつぼに嵌ってしまっていた。
 粘液を滴らせながら、蛍華の口腔を何度も吸い、熱して溶かすように、淫唇の奥の媚肉を激しく指先でいたぶり続ける。
「ん! はぁ……んッ! んンッ」
 頭の先に抜けるようなあえぎ声を間断なく上げながら、蛍華は牙桜の天を突き刺すようにそそりたつ、雄の刃に玉門を開き、導き入れる。
「ここに、これを最後まで入れてごらん。さあ、息をゆるめて、ここを開いて、俺の蛍華……」
 早く欲しくてたまらなかった。重なり合った下半身。蛍華は牙桜の勃起した雄に指を滑らす。
 先端だけであっても、あまりに太くて中に入れるのに苦心する。どれだけ淫液で濡れていても、ぬるぬると紅く淫らに喘ぐ芽心を擦りつけるだけで、なかなか奥には入って来ない。
「ああ、もっと……早く……」
 巧みな前戯で、中はもう少しも我慢できないほど濡れていた。たっぷりと愛撫されたその中に、蛍華が細い指先で導こうとするも、ただ滑り、淫唇を撫でるばかりだ。
「俺が……してあげようか」
 焦る蛍華に、牙桜が麻薬のような声で囁く。熱っぽい瞳は潤んだように蛍華を見下ろす。
「おねが……い……」
「どこに入れる? ここか? それとも……」
 一度彼が上体を放して、蛍華のふくれあがってきている乳房に爪を立てる。
「ここ?」
「ひ!」
 敏感な触覚のように尖っていた先端は、軽く歯を当てられただけで飛び上がらんばかりに感じてしまう。一気に、玉門から熱い蜜が迸った。
 ぴとんぴとんと、足下を伝って落ちる蜜を見て、牙桜は笑った。
「これは大変だ。男が欲しくてここが涙を流し始めた。ここまで淫乱にするつもりはなかったのに」
「───酷い…わ…」
「俺が?」
「酷いわ。いやなのに、恥ずかしいのに。こんなこと。こんな身体にして……酷い。欲しいの。欲しくておかしくなりそう。早くして……お願い……お願い。何でもするから……」
 もう、一刻も早く、彼の熱塊で体内を沈めなくては死んでしまう。
 どうにかなってしまいそうだ。
 蛍華は牙桜の雄を両手で掴んで、なんとか自身に沈めようとする。
 薄闇の中で彼の雄だけ、濡れたように輝いている。指でさすられ、彼の雄はより哮った。
 先端は蛍華の愛液と、彼の蜜との両方でぬらぬらとして、蛍華の指をも滑らせてしまう。
「こうだ。蛍華、奥まで行くぞ」
 彼が長くたくましい指で、その先端を喘ぐ乙女の玉門にねじ込むように押し入れた。
「は……あんッ! ああぅ……ん! んッッく」
 寝台の長い柱にしがみつき、蛍華は後ろ向きに牙桜のそれを受け入れた。しなやかな腰を猫のように突き出して、その尻を牙桜の指が押さえつける。腰を腰に引きつけて、牙桜は蛍華の玉門に深く己の凶器を突き刺していった。
「あッ、ふ……、あ……あ………ッ!」
 支柱にからみつく指先が白く血の気を失っていく。腰がひくひくと震え、体内を駆け抜ける甘い痺れが蛍華の肩を押さえつける。欲望の咆吼を感じるほどの凶器が、中を激しく愛で満たしていく。呪術さえかけられているような、牙桜のもので、蛍華は再び真っ白な世界に行ったのだ───。