龍王の寵愛
花嫁は草原に乱れ咲く
涼原カンナ イラスト/緒花
皇妹である玉葉を降嫁させること――それは北燕国が東華国へ出した和睦の条件だった。故郷を離れて嫁ぐべきか迷う玉葉は、翠玉の色をした双眸を持つ青年と出会い、強引に口説かれて…? 発売日:2014年4月3日
花嫁は草原に乱れ咲く
涼原カンナ イラスト/緒花
皇妹である玉葉を降嫁させること――それは北燕国が東華国へ出した和睦の条件だった。故郷を離れて嫁ぐべきか迷う玉葉は、翠玉の色をした双眸を持つ青年と出会い、強引に口説かれて…? 発売日:2014年4月3日
思わせぶりに首を撫でていた手が顎に移り、長い指が玉葉の唇に触れる。口紅を塗るように丹念に輪郭をなぞられて、背筋に悪寒のような痺れが走った。
「や、やめて……」
「おまえに会ってから、何がなんでも欲しいと思った。絶対に手に入れると決めた」
「だから、こんなふうにわたしをさらって――」
続きの言葉は、彼の唇にふさがれて行き場をなくしてしまう。
「――!」
何が起こっているのかわかったときには、体内を廻る血が沸騰したように全身が熱くなった。
しっとりとやわらかな彼の唇は、何度も角度を変えて玉葉の浅い息を奪っていく。
「だ、だめ……」
唇は離れたと思ったら、すぐに重ねられた。しかも、舌先が玉葉の隙を探るかのように唇を舐めていく。
「や……や……」
初めての口づけだった。やわらかなぬくもりが玉葉の言葉と息を大胆に封じ込める。
混乱のあまり、むやみに彼の胸を押して離れようとした。しかし、蒼影のたくましい腕から逃れるどころか、かえってきつく抱き寄せられてしまう。腰と腰が密着し、羞恥のあまり、くらくらとめまいがした。
「おまえの唇は甘いな。熟した柘榴のようだ」
「な、何を」
低いささやきに、頬が火照って呼吸が乱れる。腫れたように痺れた唇の輪郭を彼の指がまたなぞった。
「紅を塗ったようだぞ」
「あ、あなたが変なことをするからです……」
指が頤を持ち上げ、また唇を重ねられる。うっすらとあいた玉葉の唇の隙間から彼のやわらかな舌が差し入れられた。恥ずかしくてとても目を開けていられず、つい瞼を閉じてしまう。
「う……うう……」
舌の表面をざらりとなぞられ、糸を寄り合わせるようにからめられる。怯えて逃げようとする玉葉の小さな舌はどこまでも追いかけられ、巧みに動く彼の舌に捕らえられては貪欲に舐められた。
「は……」
舌をむさぼるように吸われ、唾液まで干されてしまう。けれど、玉葉の桃色の舌は乾く間もなかった。侵入してきた彼の舌がうごめくと、互いの蜜が混ざり合って、しとどに濡れそぼってしまう。
「や……や……」
腰がかくんと抜け落ちそうになったが、彼の腕にがっちりと捕らえられているせいで、崩れ落ちることもできない。口づけという縄に縛りつけられ、彼に唾液を注がれていると、あくことなく酒を注がれる杯のような気持ちになってしまう。
息苦しさに胸を押すと、呼吸を許すようにほんの少し唇が解放されたが、すぐに新たな攻撃が開始される。今度は舌で上の歯をひとつひとつなぞられ、玉葉はびくんと身体を揺らした。
「んん……」
下の歯も同じようになぞられると同時に、背を支えていた彼の左の手が不埒な振る舞いを始めた。なだめるようにゆっくりと背を撫でていた手が下に動き、尻のまるみをやわやわと揉みだしたのだ。
「や、や……」
そんなところをさわられた経験などない。玉葉は目尻に涙を滲ませて、首をかすかに振る。
「嫌か?」
「い、嫌に決まっています。まだ、結婚前なのに、こんなこと……」
解放された唇や舌がじんじんと痺れている。鼓動はうるさいくらいに大きくなっているし、全身が燃え盛る薪を突っ込まれたように熱い。こんなふうに身体が変化した経験はなく、当惑の極致に陥る。
(逃げなくては)
そう思うのに、彼の腕が強すぎて身をよじるのが精いっぱいだ。
蒼影の手はまだ大胆に動いている。尻肉を揉みしだきながら、鼻で笑った。
「どうせ夫婦になるんだぞ」
「まだなっていないではありませんか。それに、あなたは本当に蒼影さまなのですか?」
とにかく必死で首を振り、非難を込めて彼を見上げた。
もしも彼が蒼影本人ではなく偽物だったら、とんでもない事態になる。
自分が嫁ぐ相手は北燕の王太子なのだ。それなのに、他人に身体を許すなんて、絶対にできるはずがない。
「王太子でなければ、処女は捧げられないというわけか?」
「そ、そうに決まっているじゃありませんか。わたしと蒼影さまとの結婚は政略なのですから」
普段であれば、礼儀知らずと眉をひそめる質問にも律儀に答えてしまう。とにかく今は身を守らなくてはいけない。
「北燕人は結婚相手が処女でないからといって、蔑んだりしないぞ」
「と、東華では問題外ですわ。それにわたしの結婚は政略結婚なんですよ。それなのに、他の男とこんな――!」
語尾を鋭く飲み込んだのは、彼の大きな右手が玉葉の乳房を服の上から掴んだからだ。
「あ、いや……」
波打つように揉まれてしまい、とっさに手から逃れようと背をそらしたが、今度は尻の割れ目を探るような左手の動きに全身を柳のように揺らす羽目になる。
「偽物だったら、こんな真似はできないと思うがな。畏れ多くも東華の公主の玉の肌を弄ぶなんて真似は」
「や、さわらないで」
白々しく嘯く彼に、つい涙目になってしまう。胸を揉みしだく手の動きは不穏なもので、時には指の腹で頂をつんつんとつつかれたりもする。尻の割れ目をそっと撫でる手は、ともすれば足の付け根の危うい部分をかすめそうになり、そのたびに玉葉は背伸びをするようにして逃げた。
「や、やめて……」
「俺が本物だったら、今すぐここで純潔を捧げるか?」
いったん不埒な遊びをやめると、蒼影は玉葉をじっと見つめる。その真摯な眼差しに耳の先まで熱くなった。
「や、やめて……」
「おまえに会ってから、何がなんでも欲しいと思った。絶対に手に入れると決めた」
「だから、こんなふうにわたしをさらって――」
続きの言葉は、彼の唇にふさがれて行き場をなくしてしまう。
「――!」
何が起こっているのかわかったときには、体内を廻る血が沸騰したように全身が熱くなった。
しっとりとやわらかな彼の唇は、何度も角度を変えて玉葉の浅い息を奪っていく。
「だ、だめ……」
唇は離れたと思ったら、すぐに重ねられた。しかも、舌先が玉葉の隙を探るかのように唇を舐めていく。
「や……や……」
初めての口づけだった。やわらかなぬくもりが玉葉の言葉と息を大胆に封じ込める。
混乱のあまり、むやみに彼の胸を押して離れようとした。しかし、蒼影のたくましい腕から逃れるどころか、かえってきつく抱き寄せられてしまう。腰と腰が密着し、羞恥のあまり、くらくらとめまいがした。
「おまえの唇は甘いな。熟した柘榴のようだ」
「な、何を」
低いささやきに、頬が火照って呼吸が乱れる。腫れたように痺れた唇の輪郭を彼の指がまたなぞった。
「紅を塗ったようだぞ」
「あ、あなたが変なことをするからです……」
指が頤を持ち上げ、また唇を重ねられる。うっすらとあいた玉葉の唇の隙間から彼のやわらかな舌が差し入れられた。恥ずかしくてとても目を開けていられず、つい瞼を閉じてしまう。
「う……うう……」
舌の表面をざらりとなぞられ、糸を寄り合わせるようにからめられる。怯えて逃げようとする玉葉の小さな舌はどこまでも追いかけられ、巧みに動く彼の舌に捕らえられては貪欲に舐められた。
「は……」
舌をむさぼるように吸われ、唾液まで干されてしまう。けれど、玉葉の桃色の舌は乾く間もなかった。侵入してきた彼の舌がうごめくと、互いの蜜が混ざり合って、しとどに濡れそぼってしまう。
「や……や……」
腰がかくんと抜け落ちそうになったが、彼の腕にがっちりと捕らえられているせいで、崩れ落ちることもできない。口づけという縄に縛りつけられ、彼に唾液を注がれていると、あくことなく酒を注がれる杯のような気持ちになってしまう。
息苦しさに胸を押すと、呼吸を許すようにほんの少し唇が解放されたが、すぐに新たな攻撃が開始される。今度は舌で上の歯をひとつひとつなぞられ、玉葉はびくんと身体を揺らした。
「んん……」
下の歯も同じようになぞられると同時に、背を支えていた彼の左の手が不埒な振る舞いを始めた。なだめるようにゆっくりと背を撫でていた手が下に動き、尻のまるみをやわやわと揉みだしたのだ。
「や、や……」
そんなところをさわられた経験などない。玉葉は目尻に涙を滲ませて、首をかすかに振る。
「嫌か?」
「い、嫌に決まっています。まだ、結婚前なのに、こんなこと……」
解放された唇や舌がじんじんと痺れている。鼓動はうるさいくらいに大きくなっているし、全身が燃え盛る薪を突っ込まれたように熱い。こんなふうに身体が変化した経験はなく、当惑の極致に陥る。
(逃げなくては)
そう思うのに、彼の腕が強すぎて身をよじるのが精いっぱいだ。
蒼影の手はまだ大胆に動いている。尻肉を揉みしだきながら、鼻で笑った。
「どうせ夫婦になるんだぞ」
「まだなっていないではありませんか。それに、あなたは本当に蒼影さまなのですか?」
とにかく必死で首を振り、非難を込めて彼を見上げた。
もしも彼が蒼影本人ではなく偽物だったら、とんでもない事態になる。
自分が嫁ぐ相手は北燕の王太子なのだ。それなのに、他人に身体を許すなんて、絶対にできるはずがない。
「王太子でなければ、処女は捧げられないというわけか?」
「そ、そうに決まっているじゃありませんか。わたしと蒼影さまとの結婚は政略なのですから」
普段であれば、礼儀知らずと眉をひそめる質問にも律儀に答えてしまう。とにかく今は身を守らなくてはいけない。
「北燕人は結婚相手が処女でないからといって、蔑んだりしないぞ」
「と、東華では問題外ですわ。それにわたしの結婚は政略結婚なんですよ。それなのに、他の男とこんな――!」
語尾を鋭く飲み込んだのは、彼の大きな右手が玉葉の乳房を服の上から掴んだからだ。
「あ、いや……」
波打つように揉まれてしまい、とっさに手から逃れようと背をそらしたが、今度は尻の割れ目を探るような左手の動きに全身を柳のように揺らす羽目になる。
「偽物だったら、こんな真似はできないと思うがな。畏れ多くも東華の公主の玉の肌を弄ぶなんて真似は」
「や、さわらないで」
白々しく嘯く彼に、つい涙目になってしまう。胸を揉みしだく手の動きは不穏なもので、時には指の腹で頂をつんつんとつつかれたりもする。尻の割れ目をそっと撫でる手は、ともすれば足の付け根の危うい部分をかすめそうになり、そのたびに玉葉は背伸びをするようにして逃げた。
「や、やめて……」
「俺が本物だったら、今すぐここで純潔を捧げるか?」
いったん不埒な遊びをやめると、蒼影は玉葉をじっと見つめる。その真摯な眼差しに耳の先まで熱くなった。