大正桃色ロマン
華族令嬢はやみつきの淫愛に蕩けて
葉月エリカ イラスト/オオタケ
子爵令嬢とは名ばかり、家計のためにミルクホールでピアノ奏者をしていた琴音。酔客をあしらってくれた九条鷹臣は、伯爵家当主以外にも別の顔を持っていた。高額な報酬のかわりに琴音が頼まれたこととは!? 発売日:2014年11月29日
華族令嬢はやみつきの淫愛に蕩けて
葉月エリカ イラスト/オオタケ
子爵令嬢とは名ばかり、家計のためにミルクホールでピアノ奏者をしていた琴音。酔客をあしらってくれた九条鷹臣は、伯爵家当主以外にも別の顔を持っていた。高額な報酬のかわりに琴音が頼まれたこととは!? 発売日:2014年11月29日
「――あなたがいけないんですよ」
低い声がぞくりと耳朶を打った。
「そんなふうに無防備に、僕を誘惑するから」
戸惑う琴音の目の前で、鷹臣は水差しから直接水を呷った。
あっと思う間もなく、後頭部を引き寄せられ、唇に柔らかなものが重ねられる。
(え……――?)
寝台の上で横座りになったまま、琴音は石化したように固まった。
触れ合った唇の隙間から、温い水が少しずつ注ぎこまれてくる。反射的に嚥下すると、ごくりと恥ずかしいほど大きく喉が鳴った。
渇きは収まったけれど、それ以上に強い熱病のような火照りが、指先まで広がっていく。
(唇と、唇を……これって……)
その行為を表す言葉が脳裏にひらめいた瞬間、琴音は弾かれたように鷹臣の肩を押しやった。
「いけませんっ……!」
「どうして?」
琴音の心臓は破れそうに高鳴っているのに、鷹臣は憎らしいほど落ち着いていた。真っ赤になった琴音の頤に、彼の指が添わされる。
「だって、今の……く……口づけ……」
「本当の口づけは、あんなものじゃありませんよ」
いつもは柔和な鷹臣の瞳に、ふっと剣呑な光が宿った。
「どれだけでも教え込んで差し上げますよ。じっくり、身をもって――ね」
「んっ……!」
顔を逸らす間もなく、再び唇を塞がれる。
しかも今度は、それだけでは終わらなかった。顎を固定されたまま、閉じ合わされた琴音の唇を割って、ぬるりとした何が忍び入ってくる。
(え……舌……!?)
口と口をつけるのが接吻だというくらいの理解はあっても、お嬢様育ちの琴音に、それ以上の性知識は皆無だった。
何を求められているのか、鷹臣が何をしたいのかがわからなくて、魂を抜き取られたように、されるがままになってしまう。
(や……食べられちゃう……どうして鷹臣さんはこんなこと……)
くちゅりと侵入した鷹臣の舌は、ワインのせいで熱くなった琴音の口腔を、くまなく探って舐めあげた。そればかりか、怯えて縮こまる琴音の舌をすくいだし、自らの口内に引き込んで、強弱をつけて吸い立てる。
「ぁ……は……」
再び酔いが回ったように、琴音の体から徐々に力が萎えていった。
その隙を狙いすましたかのように、鷹臣は琴音を組み敷いて、首元のタイを緩めた。
「可愛いですね、琴音さん――」
耳元に囁かれると同時に、薄い耳朶をぺろりと舐めあげられる。
首筋がさっと総毛立ったが、それは気持ち悪かったり、怖かったりするからではなかった。
(これ、何……鷹臣さんに触れられたところ……むずむずする……)
琴音の額に、頬に、瞼にと、何かの徴を残すように、鷹臣の唇は押し当てられた。
そのたびに小さな火を灯されたようで、呼吸が荒くなる。瞳がとろんとして、口元が半開きになってしまう。
「……そんなに色っぽい顔を、僕以外の男に見せては駄目ですよ」
鷹臣が、咎めるように軽く睨んだ。
「そんなことをすれば、瞬く間に食い散らかされてしまう。――僕は、これでも紳士なんです。あなたを徒(いたずら)に傷つけるようなやり方はしないから、安心なさい」
「ん、っ……」
何か不思議な感覚が走り抜けて視線を落とせば、鷹臣の右手が、濡れたドレスの胸元をやんわりと包み込んでいた。
指の一本一本が、そこの柔らかさを確かめるように、ゆっくりと蠢き出す。
「あ……あっ……」
胸の頂――乳首、と言葉にして思うことも恥ずかしい場所――が、じんじんと疼き始めていた。鷹臣が胸を揉みしだくたびに、指の腹が擦れるせいだ。
「感じているんですか、琴音さん?」
「あっ……感じ……って、何……」
「服の上からなのに、ここが硬く尖ってますよ。ほら……こうされると堪らないでしょう?」
「やっ、ああぁ……っ!」
濡れた生地ごしに、敏感になった場所を摘まれて、琴音は甲高い嬌声をあげた。
くにくにと捩られたり、こしこしと根元から扱き立てるようにされると、甘酸っぱいような感覚が喉元まで込み上げて、変な声が洩れてしまうのだ。
「だめ、です……ぁあ、やめて……」
なんだかわからないけれど、こんな行為はしてはいけないことだ。ふしだらで、不道徳で……淑女と呼ばれる娘ではいられなくなってしまう。
そう思うのに、骨という骨がぐずぐずに溶けてしまったかのように、抵抗らしい抵抗ができなかった。理性はやめなければと訴えているのに、その奥の原始的な本能が、この先に起こることを待ち詫びている。
「苦しそうですね。肌も熱い……少し冷ましましょうか」
そう言った鷹臣の手は、ドレスの前釦(ボタン)をぷちん、ぷちん、と器用に外していった。
シュミーズの肩紐も下ろされて、あっという間に、皮を剥かれた白桃のような真っ白い乳房がまろび出る。
「あっ……!」
とっさに隠そうと腕を交差させたが、鷹臣はその手首を悠々と掴んで、磔の形に引き剥がした。穴が開きそうなほど二つの膨らみを見つめられて、気が遠くなりかける。
「み……見ないでくださいっ……」
あまりの羞恥に、琴音は瞳を潤ませた。
どうしてこんな辱めを受けなければいけないのだろう。
鷹臣はずっと、あんなに優しかったのに。彼と一緒ならどこにいても安心できて、異国にだって行けそうな気がしていたのに。
(私がいけなかったの? 何か、とんでもない粗相をしてしまったの……?)
鷹臣を立派な人物だと信頼していた琴音は、彼を責めるよりも先に、自分に非があったのではないかと考えてしまう。
酔って記憶が飛んでいる間に、鷹臣を怒らせるようなことをしたのだろうか。その腹いせに鷹臣は、こんな意地悪なことをしてくるのだろうか――。
「なんて愛らしい色をしているんでしょうね……」
ふっくらと盛り上がり、淡い珊瑚色に染まった乳暈に、鷹臣は出し抜けに口づけた。靴を脱がされた足先が、びくんっと震えあがる。
「どれだけでも可愛がってあげたくなりますよ。あなたに女の悦びを知らしめるのは、他の誰でもない、この僕です」
鷹臣の濡れた舌がぬるぬると、硬くなった乳首に擦りつけられていく。
「あ……はぁ……っ」
唾液を塗り込めるようなその動きに、鳩尾がきゅんと疼いた。そこから伝わる漣が、あらぬところにまで伝い降りていく。――スカートの奥の、秘密の場所に。
(なんで……? どうして、こんなところが熱く……)
御不浄に行くときくらいしか意識しない場所が、ずきん、ずきん、と脈打っているような気がした。
着け慣れない西洋風の下着の内側で、そこは籠もった熱を発して、蒸れたように気持ちが悪い。今すぐに下着を取り替えたいけれど、鷹臣がいる限りは、そんなことができるわけもない。
「あなたのここは、どれだけでも触っていたいほどに柔らかですね……」
鷹臣が捏ねるように揉みほぐす乳房は、洋燈(ランプ)の明かりを受けて、悩ましい茜色に照り映えていた。その頂でつんと尖る蕾を、鷹臣は左右交互に口をつけて吸い立てるのだ。
「も、いや……そこ、触られるの……駄目です……」
「どうしていけないのですか?」
「変な感じに、なって……ぁあっ、あ……」
「もっと乱れてください、琴音さん」
鷹臣は嬉しげに微笑んで、唇に含んだ乳首を甘噛みした。
「僕の手で淫らに咲き綻ぶあなたは――とても綺麗だ」
その声はどこまでも甘く、耳に優しく、琴音は錯覚しそうになる。
尊敬する鷹臣が、間違ったことなどするわけがないと。
それに、彼に「綺麗だ」「可愛い」と言われることは、やはり純粋に嬉しくて――。
「んっ……あ、あ……」
はぁはぁと息を荒げる琴音の脹脛(ふくらはぎ)を、鷹臣の右手がするりと撫でた。
すでに膝上までまくれ上がっていたスカートを掻き分け、汗ばんだ腿の内側を、不埒な指先が遡る。
「あっ……そこ、は……」
さっきからずっと不快な湿り気があった場所に、下着ごしに鷹臣が触れた。
何かを確かめるように指がそこを前後すると、体の内側から、液体のようなものがじゅっと染み出していくのがわかった。
鷹臣が、唇の片側だけを吊り上げる。
「――濡れていますよ」
低い声がぞくりと耳朶を打った。
「そんなふうに無防備に、僕を誘惑するから」
戸惑う琴音の目の前で、鷹臣は水差しから直接水を呷った。
あっと思う間もなく、後頭部を引き寄せられ、唇に柔らかなものが重ねられる。
(え……――?)
寝台の上で横座りになったまま、琴音は石化したように固まった。
触れ合った唇の隙間から、温い水が少しずつ注ぎこまれてくる。反射的に嚥下すると、ごくりと恥ずかしいほど大きく喉が鳴った。
渇きは収まったけれど、それ以上に強い熱病のような火照りが、指先まで広がっていく。
(唇と、唇を……これって……)
その行為を表す言葉が脳裏にひらめいた瞬間、琴音は弾かれたように鷹臣の肩を押しやった。
「いけませんっ……!」
「どうして?」
琴音の心臓は破れそうに高鳴っているのに、鷹臣は憎らしいほど落ち着いていた。真っ赤になった琴音の頤に、彼の指が添わされる。
「だって、今の……く……口づけ……」
「本当の口づけは、あんなものじゃありませんよ」
いつもは柔和な鷹臣の瞳に、ふっと剣呑な光が宿った。
「どれだけでも教え込んで差し上げますよ。じっくり、身をもって――ね」
「んっ……!」
顔を逸らす間もなく、再び唇を塞がれる。
しかも今度は、それだけでは終わらなかった。顎を固定されたまま、閉じ合わされた琴音の唇を割って、ぬるりとした何が忍び入ってくる。
(え……舌……!?)
口と口をつけるのが接吻だというくらいの理解はあっても、お嬢様育ちの琴音に、それ以上の性知識は皆無だった。
何を求められているのか、鷹臣が何をしたいのかがわからなくて、魂を抜き取られたように、されるがままになってしまう。
(や……食べられちゃう……どうして鷹臣さんはこんなこと……)
くちゅりと侵入した鷹臣の舌は、ワインのせいで熱くなった琴音の口腔を、くまなく探って舐めあげた。そればかりか、怯えて縮こまる琴音の舌をすくいだし、自らの口内に引き込んで、強弱をつけて吸い立てる。
「ぁ……は……」
再び酔いが回ったように、琴音の体から徐々に力が萎えていった。
その隙を狙いすましたかのように、鷹臣は琴音を組み敷いて、首元のタイを緩めた。
「可愛いですね、琴音さん――」
耳元に囁かれると同時に、薄い耳朶をぺろりと舐めあげられる。
首筋がさっと総毛立ったが、それは気持ち悪かったり、怖かったりするからではなかった。
(これ、何……鷹臣さんに触れられたところ……むずむずする……)
琴音の額に、頬に、瞼にと、何かの徴を残すように、鷹臣の唇は押し当てられた。
そのたびに小さな火を灯されたようで、呼吸が荒くなる。瞳がとろんとして、口元が半開きになってしまう。
「……そんなに色っぽい顔を、僕以外の男に見せては駄目ですよ」
鷹臣が、咎めるように軽く睨んだ。
「そんなことをすれば、瞬く間に食い散らかされてしまう。――僕は、これでも紳士なんです。あなたを徒(いたずら)に傷つけるようなやり方はしないから、安心なさい」
「ん、っ……」
何か不思議な感覚が走り抜けて視線を落とせば、鷹臣の右手が、濡れたドレスの胸元をやんわりと包み込んでいた。
指の一本一本が、そこの柔らかさを確かめるように、ゆっくりと蠢き出す。
「あ……あっ……」
胸の頂――乳首、と言葉にして思うことも恥ずかしい場所――が、じんじんと疼き始めていた。鷹臣が胸を揉みしだくたびに、指の腹が擦れるせいだ。
「感じているんですか、琴音さん?」
「あっ……感じ……って、何……」
「服の上からなのに、ここが硬く尖ってますよ。ほら……こうされると堪らないでしょう?」
「やっ、ああぁ……っ!」
濡れた生地ごしに、敏感になった場所を摘まれて、琴音は甲高い嬌声をあげた。
くにくにと捩られたり、こしこしと根元から扱き立てるようにされると、甘酸っぱいような感覚が喉元まで込み上げて、変な声が洩れてしまうのだ。
「だめ、です……ぁあ、やめて……」
なんだかわからないけれど、こんな行為はしてはいけないことだ。ふしだらで、不道徳で……淑女と呼ばれる娘ではいられなくなってしまう。
そう思うのに、骨という骨がぐずぐずに溶けてしまったかのように、抵抗らしい抵抗ができなかった。理性はやめなければと訴えているのに、その奥の原始的な本能が、この先に起こることを待ち詫びている。
「苦しそうですね。肌も熱い……少し冷ましましょうか」
そう言った鷹臣の手は、ドレスの前釦(ボタン)をぷちん、ぷちん、と器用に外していった。
シュミーズの肩紐も下ろされて、あっという間に、皮を剥かれた白桃のような真っ白い乳房がまろび出る。
「あっ……!」
とっさに隠そうと腕を交差させたが、鷹臣はその手首を悠々と掴んで、磔の形に引き剥がした。穴が開きそうなほど二つの膨らみを見つめられて、気が遠くなりかける。
「み……見ないでくださいっ……」
あまりの羞恥に、琴音は瞳を潤ませた。
どうしてこんな辱めを受けなければいけないのだろう。
鷹臣はずっと、あんなに優しかったのに。彼と一緒ならどこにいても安心できて、異国にだって行けそうな気がしていたのに。
(私がいけなかったの? 何か、とんでもない粗相をしてしまったの……?)
鷹臣を立派な人物だと信頼していた琴音は、彼を責めるよりも先に、自分に非があったのではないかと考えてしまう。
酔って記憶が飛んでいる間に、鷹臣を怒らせるようなことをしたのだろうか。その腹いせに鷹臣は、こんな意地悪なことをしてくるのだろうか――。
「なんて愛らしい色をしているんでしょうね……」
ふっくらと盛り上がり、淡い珊瑚色に染まった乳暈に、鷹臣は出し抜けに口づけた。靴を脱がされた足先が、びくんっと震えあがる。
「どれだけでも可愛がってあげたくなりますよ。あなたに女の悦びを知らしめるのは、他の誰でもない、この僕です」
鷹臣の濡れた舌がぬるぬると、硬くなった乳首に擦りつけられていく。
「あ……はぁ……っ」
唾液を塗り込めるようなその動きに、鳩尾がきゅんと疼いた。そこから伝わる漣が、あらぬところにまで伝い降りていく。――スカートの奥の、秘密の場所に。
(なんで……? どうして、こんなところが熱く……)
御不浄に行くときくらいしか意識しない場所が、ずきん、ずきん、と脈打っているような気がした。
着け慣れない西洋風の下着の内側で、そこは籠もった熱を発して、蒸れたように気持ちが悪い。今すぐに下着を取り替えたいけれど、鷹臣がいる限りは、そんなことができるわけもない。
「あなたのここは、どれだけでも触っていたいほどに柔らかですね……」
鷹臣が捏ねるように揉みほぐす乳房は、洋燈(ランプ)の明かりを受けて、悩ましい茜色に照り映えていた。その頂でつんと尖る蕾を、鷹臣は左右交互に口をつけて吸い立てるのだ。
「も、いや……そこ、触られるの……駄目です……」
「どうしていけないのですか?」
「変な感じに、なって……ぁあっ、あ……」
「もっと乱れてください、琴音さん」
鷹臣は嬉しげに微笑んで、唇に含んだ乳首を甘噛みした。
「僕の手で淫らに咲き綻ぶあなたは――とても綺麗だ」
その声はどこまでも甘く、耳に優しく、琴音は錯覚しそうになる。
尊敬する鷹臣が、間違ったことなどするわけがないと。
それに、彼に「綺麗だ」「可愛い」と言われることは、やはり純粋に嬉しくて――。
「んっ……あ、あ……」
はぁはぁと息を荒げる琴音の脹脛(ふくらはぎ)を、鷹臣の右手がするりと撫でた。
すでに膝上までまくれ上がっていたスカートを掻き分け、汗ばんだ腿の内側を、不埒な指先が遡る。
「あっ……そこ、は……」
さっきからずっと不快な湿り気があった場所に、下着ごしに鷹臣が触れた。
何かを確かめるように指がそこを前後すると、体の内側から、液体のようなものがじゅっと染み出していくのがわかった。
鷹臣が、唇の片側だけを吊り上げる。
「――濡れていますよ」