傾国の美姫の初恋
求愛は熱く淫らに
涼原カンナ イラスト/綺羅かぼす
傾国の皇后と言われる雪娥だが、皇帝には秘密があり結婚は偽装。敵に攻め込まれて国は滅び、雪娥は戦勝の褒美として敵の皇子・玄陽に預けられる。誤解から彼に抱かれ、男を知らないとばれて…? 発売日:2015年4月1日
求愛は熱く淫らに
涼原カンナ イラスト/綺羅かぼす
傾国の皇后と言われる雪娥だが、皇帝には秘密があり結婚は偽装。敵に攻め込まれて国は滅び、雪娥は戦勝の褒美として敵の皇子・玄陽に預けられる。誤解から彼に抱かれ、男を知らないとばれて…? 発売日:2015年4月1日
「あ、いや、だめ……!」
なんとかやめさせようと脚を閉じかけるが、反対に大きく開かされた。蜜で濡れそぼった花びらのあわいをつつく楔が、やけどしそうに熱い。
「ひ……あ……」
「さて、おまえの中がどんな具合か確かめてやろう」
尖りきった鬼頭が肉の狭間を割って侵入する。指とは段違いの太さと衝撃に、雪娥は背を反らした。
「ああー……いや……あー……!」
ぬぐぬぐと圧力を増す肉塊に無垢な膣襞が割られていく。初めて受け入れる男の太さと熱さに、天井を仰いで悲鳴をあげた。
「いや……だめ……だめぇ……」
「何がだめだ。いいかげんに処女の真似はやめ……」
肉棒を無慈悲に突っこんでいた玄陽が唇を閉ざした。彼を呑みこむ淫らな口をじっと見つめている。
「や、そんな、見ないで……!」
「まさか……そんなはずはないだろう……」
呆然とつぶやいて、それでもなおまじまじと雪娥の秘処を凝視する彼に、雪娥は不安になった。
「あの、何を……」
「これは何だ」
彼は大きくくつろげられた膣口の入り口を指でなぞった。敏感になった部分にふれられて、たまらず悲鳴をこぼす。
「ひゃ……!」
「どうして血が出てる」
目の前に突き出された指には、鮮血がついていた。確たる証拠を突きつけられた犯人のように、瞳を揺らしてしまう。
「そ、それは……」
「まさか、男を挿れたことがないのか?」
直截にたずねられ、しばし黙りこんだ。彼からわずかに目をそらして、懸命に言い訳をひねりだす。
「その……た、体調が悪くて……」
「体調が悪いから、血が出たわけか」
男根を無造作に進められ、粘膜をこすられる痛みに眉を寄せた。
「い、痛っ……」
「また血があふれてきたぞ。おい、本当のことを言え」
じれたように揺すられて、とうとう悲鳴をあげた。
「そ、そうです。わたしは初めてで……!」
叫んだとたん、彼が肉の剣を素早く抜いた。痛みから解放された安堵と中途半端なところでやめられた喪失感があいまじり、複雑な気持ちになった。
玄陽は雪娥に背を向けてあぐらを組んだ。雪娥はあわてて開いていた脚をぴったりと閉じ、何度か呼吸する。
(どうしよう……)
認めなければよかったのだろうか。けれど、身体のほうが正直に暴露してしまったのだから、今さら言い訳など無駄だろう。
天人が踊る天井を見ていたら、目の際から涙がこぼれた。そうしていると、衣を整えた玄陽がくるりとこちらを向いてにじりより、はだけた衣の衿を合わせてくれる。
「じ、自分でしますから……!」
気恥ずかしさに飛び起きて、雪娥はその場に座ったまま衣を着直し、帯を締めた。あぐらをかいた彼の視線を感じて、肌が熱くなった。
「……すまなかった」
玄陽は簡潔に言ってから、頭を下げる。
「痛かったろう。悪かった」
「や、やめてください。その……わたしは、大丈夫ですから」
痛かったし、恥ずかしかったが、彼の愛撫に身をよじって応えてしまったのだ。今さらながら自分の醜態を思い出して、衣の裾をきつく合わせてうつむいた。
肌をあわせていたときの肉欲に満ちた空気が急速に浄化されていく。彼との間に見えない壁ができていった。
「どうして処女なんだ」
核心を衝く質問に雪娥は彼を見た。ひどくまじめな顔つきに困り果ててしまう。
「そんなことをどうしてお聞きになるんですか?」
「重要なことだろう。何人もの男を閨に引き入れる姦婦が処女だなんて、おかしな話だからな」
「……さ、最後までしなかっただけですわ」
ひねりだした答えは一番もっともらしいはずだったが、彼の目に浮かぶ疑念は少しも消え去ってくれない。
「あんなに色っぽく乱れるさまを見て、最後までやらない男がいるはずがない」
「……玄陽さまはやめられたではありませんか」
屁理屈じみた返答に、彼が眉の間を寄せた。
「今回は事情が事情だろう」
「でも、やめられたのは本当で……」
「俺の質問に答えろ」
雪娥をまっすぐ射貫く眼差しには、獲物を狙う鷹か鷲のような強さがあった。雪娥は唇を噛んで、わずかにうつむく。
(この人に見つめられると、どうしてこんな気持ちになるのかしら)
誰をもかしずかせてきた自分がかしずく立場になったのだと思い知らされると同時に、身の丈に合わぬ地位からの解放感を感じさせられる。
もはや皇后という呼称を持たない、ただひとりの女なのだという事実を心に刻みつけられてしまう。
(それでも……)
守るべきもののために、またしても言葉をもてあそぶ。
「わたしは誰からも愛されない女でしたから」
そう答えると、玄陽は顔をしかめた。
「嘘はやめろ」
「嘘ではありません。わたしは……皇帝陛下にも、他のどのかたにも愛されなかったんです」
それから静かに顔を伏せた。両手で面を覆う。
そうしていると、昔を思い出した。
幼なじみが皇帝になると決まったとき、求婚されたのだ。
『わたしには雪娥が必要だ』と。あのときは今日のような日が来るとは思わなかった。
皇帝と皇后として、国を変えられるのだと信じていた。王たちを従える皇帝という本来の姿に戻さなければいけないと語り合っていた。
それなのに、今、雪娥はひとりで異国からの侵略者と向かい合っている。
わずか四年前の過去が十年も昔のように思えた。涙が自然とあふれた。
指の隙間から涙の雫がこぼれて、嗚咽をこらえる肩が小刻みに震える。
玄陽が近づく気配がした。そっと抱きしめられて、いよいよ涙が止まらなくなった。
雪娥は彼の胸にもたれ、悲しみをすべて涙に変える勢いで泣き続けていた。
なんとかやめさせようと脚を閉じかけるが、反対に大きく開かされた。蜜で濡れそぼった花びらのあわいをつつく楔が、やけどしそうに熱い。
「ひ……あ……」
「さて、おまえの中がどんな具合か確かめてやろう」
尖りきった鬼頭が肉の狭間を割って侵入する。指とは段違いの太さと衝撃に、雪娥は背を反らした。
「ああー……いや……あー……!」
ぬぐぬぐと圧力を増す肉塊に無垢な膣襞が割られていく。初めて受け入れる男の太さと熱さに、天井を仰いで悲鳴をあげた。
「いや……だめ……だめぇ……」
「何がだめだ。いいかげんに処女の真似はやめ……」
肉棒を無慈悲に突っこんでいた玄陽が唇を閉ざした。彼を呑みこむ淫らな口をじっと見つめている。
「や、そんな、見ないで……!」
「まさか……そんなはずはないだろう……」
呆然とつぶやいて、それでもなおまじまじと雪娥の秘処を凝視する彼に、雪娥は不安になった。
「あの、何を……」
「これは何だ」
彼は大きくくつろげられた膣口の入り口を指でなぞった。敏感になった部分にふれられて、たまらず悲鳴をこぼす。
「ひゃ……!」
「どうして血が出てる」
目の前に突き出された指には、鮮血がついていた。確たる証拠を突きつけられた犯人のように、瞳を揺らしてしまう。
「そ、それは……」
「まさか、男を挿れたことがないのか?」
直截にたずねられ、しばし黙りこんだ。彼からわずかに目をそらして、懸命に言い訳をひねりだす。
「その……た、体調が悪くて……」
「体調が悪いから、血が出たわけか」
男根を無造作に進められ、粘膜をこすられる痛みに眉を寄せた。
「い、痛っ……」
「また血があふれてきたぞ。おい、本当のことを言え」
じれたように揺すられて、とうとう悲鳴をあげた。
「そ、そうです。わたしは初めてで……!」
叫んだとたん、彼が肉の剣を素早く抜いた。痛みから解放された安堵と中途半端なところでやめられた喪失感があいまじり、複雑な気持ちになった。
玄陽は雪娥に背を向けてあぐらを組んだ。雪娥はあわてて開いていた脚をぴったりと閉じ、何度か呼吸する。
(どうしよう……)
認めなければよかったのだろうか。けれど、身体のほうが正直に暴露してしまったのだから、今さら言い訳など無駄だろう。
天人が踊る天井を見ていたら、目の際から涙がこぼれた。そうしていると、衣を整えた玄陽がくるりとこちらを向いてにじりより、はだけた衣の衿を合わせてくれる。
「じ、自分でしますから……!」
気恥ずかしさに飛び起きて、雪娥はその場に座ったまま衣を着直し、帯を締めた。あぐらをかいた彼の視線を感じて、肌が熱くなった。
「……すまなかった」
玄陽は簡潔に言ってから、頭を下げる。
「痛かったろう。悪かった」
「や、やめてください。その……わたしは、大丈夫ですから」
痛かったし、恥ずかしかったが、彼の愛撫に身をよじって応えてしまったのだ。今さらながら自分の醜態を思い出して、衣の裾をきつく合わせてうつむいた。
肌をあわせていたときの肉欲に満ちた空気が急速に浄化されていく。彼との間に見えない壁ができていった。
「どうして処女なんだ」
核心を衝く質問に雪娥は彼を見た。ひどくまじめな顔つきに困り果ててしまう。
「そんなことをどうしてお聞きになるんですか?」
「重要なことだろう。何人もの男を閨に引き入れる姦婦が処女だなんて、おかしな話だからな」
「……さ、最後までしなかっただけですわ」
ひねりだした答えは一番もっともらしいはずだったが、彼の目に浮かぶ疑念は少しも消え去ってくれない。
「あんなに色っぽく乱れるさまを見て、最後までやらない男がいるはずがない」
「……玄陽さまはやめられたではありませんか」
屁理屈じみた返答に、彼が眉の間を寄せた。
「今回は事情が事情だろう」
「でも、やめられたのは本当で……」
「俺の質問に答えろ」
雪娥をまっすぐ射貫く眼差しには、獲物を狙う鷹か鷲のような強さがあった。雪娥は唇を噛んで、わずかにうつむく。
(この人に見つめられると、どうしてこんな気持ちになるのかしら)
誰をもかしずかせてきた自分がかしずく立場になったのだと思い知らされると同時に、身の丈に合わぬ地位からの解放感を感じさせられる。
もはや皇后という呼称を持たない、ただひとりの女なのだという事実を心に刻みつけられてしまう。
(それでも……)
守るべきもののために、またしても言葉をもてあそぶ。
「わたしは誰からも愛されない女でしたから」
そう答えると、玄陽は顔をしかめた。
「嘘はやめろ」
「嘘ではありません。わたしは……皇帝陛下にも、他のどのかたにも愛されなかったんです」
それから静かに顔を伏せた。両手で面を覆う。
そうしていると、昔を思い出した。
幼なじみが皇帝になると決まったとき、求婚されたのだ。
『わたしには雪娥が必要だ』と。あのときは今日のような日が来るとは思わなかった。
皇帝と皇后として、国を変えられるのだと信じていた。王たちを従える皇帝という本来の姿に戻さなければいけないと語り合っていた。
それなのに、今、雪娥はひとりで異国からの侵略者と向かい合っている。
わずか四年前の過去が十年も昔のように思えた。涙が自然とあふれた。
指の隙間から涙の雫がこぼれて、嗚咽をこらえる肩が小刻みに震える。
玄陽が近づく気配がした。そっと抱きしめられて、いよいよ涙が止まらなくなった。
雪娥は彼の胸にもたれ、悲しみをすべて涙に変える勢いで泣き続けていた。