いつの間にかプリンセス
水島 忍 イラスト/田中 琳
隣国に両親を囚われた弱小貴族の娘アマリア。王子から「お前が人質になれば親を助ける」と言われ、彼のもとで下働きをすることに。初心なアマリアは優しさを見せる王子に抱かれてしまい…? 発売日:2015年7月1日
水島 忍 イラスト/田中 琳
隣国に両親を囚われた弱小貴族の娘アマリア。王子から「お前が人質になれば親を助ける」と言われ、彼のもとで下働きをすることに。初心なアマリアは優しさを見せる王子に抱かれてしまい…? 発売日:2015年7月1日
「起きるんだ」
低い声で脅かすように言われて、アマリアは目を開けた。トラヴィスの冷ややかな顔があまりにも近くにあって、はっと息を呑む。
「……トラヴィス」
アマリアは心の中でトラヴィスと呼んでいたものの、実際にそう呼んだのは初めてだった。
馴れ馴れしいと思われただろうか。彼の眼差しが何か特別なものに変化していく。冷たい瞳がひどく熱っぽいものに変わっていた。
「疲れているだろうが、怠けている場合じゃないな」
彼はまだぼんやりしているアマリアを揺らして、完全に起こそうとしていた。
「どうして……あなたはここにいるの?」
ここはわたしの部屋なのに。
トラヴィスがいつでも用事を言いつけられるように、ここに寝泊まりさせられるというだけで、完全に自分の部屋とは言いがたいが、やはり勝手に乙女の部屋に入ってくるのはよくないと思うのだ。
「ノックをしたが、返事がなかったからな。ひょっとして君が……」
「わたしが……?」
「いや、君がどこかに逃げたかと思ったんだ」
アマリアはぱっと目を大きく開けて、彼を睨んだ。
「逃げたりしないわ! わたし、あなたの人質になると言ったはずよ!」
不思議なことに、トラヴィスはふっと微笑んだ。いつもの彼ならここで嫌味を言うところだが、何故だか今は違う。
「どうやら君はとてつもなく不器用だが、やる気は一応あるようだ」
「そ、そうよ……」
褒められたのか、それともけなされたのか判らないが、どちらかというと、アマリアは褒められたような気がした。たったそれだけで気分が高揚してきて、顔を赤らめた。
「わたし、起きるから……手を離して」
彼はアマリアを起こすために両肩を掴んでいた。このままでは起きられない。彼がゆっくりと手を離すのと同時に、アマリアは慌てて起き上がろうとした。そのままの勢いで、アマリアは彼の胸に顔を突っ込んでしまった。
「ごめんなさいっ」
アマリアの身体をトラヴィスが支えている。途端に、昨夜のキスを思い出してしまって、思わずアマリアは目を逸らした。
恥ずかしすぎる……。
ぎこちなく彼から離れようとしたのに、彼のほうが離してくれない。気がつけば、再び唇を奪われていた。
避ける暇もなかった。いや、避けたくなんかなかった。昨夜からずっと彼とのキスのことばかり考えていたのだ。
またキスをしたいって……。
誰が相手でもいいわけではない。ただ一人、トラヴィスにだけキスをしてほしかった。こんなふうに抱き締められて、気が遠くなるような激しいキスをしてほしかったのだ。
アマリアは彼にしがみついた。昨夜みたいに押しやられたくない。もっとキスをしてほしい。
それでも、彼はまたキスを途中でやめて、誘惑するなと言いだすかもしれない。しかし、そんな不安よりキスをしてもらいたい気持ちのほうが大きかった。
次第に頭の中がふわふわしてくる。
「ん……ん……っ」
もう、どうなってもいい。彼に後で叱られてもいいのだ。誘惑していると非難されたとしても。
トラヴィスはアマリアを抱き締め、そのままベッドにゆっくり押し倒していった。
アマリアはベッドで横になり、舌を深く入れられて、唇を貪られる。彼はアマリアの肩を撫でて、それからさっと腕を撫でた。そうして、ゆっくりと胸にも触れてきた。
ドレスの上からだが、身体が震える。寒いわけでも嫌悪感のためでもなく、彼に大事なところを触れられていると思うと、燃えるような感覚が身体の中を走り抜けたためだ。
彼の手はドレスの上から優しく乳房を包み込んだ。彼の手の温もりがそのまま伝わってくる。アマリアは自分の身体が急に敏感になってきたような気がした。特に胸の先端が固くなっていて、疼きのようなものを感じる。
わたし……一体どうしてしまったの?
本当は未婚の娘がこんなことをしてはいけないと知っている。キスもそうだが、胸を触られたままにしていてはいけない。今すぐ彼を突き放し、ベッドから飛び出さなくてはならない。
しかし、そう思っていても、身体が何故だか動かない。まだ彼の腕の中にいたいし、キスもされたい。身体を触られることも、決して嫌ではないのだ。
でも、きっとこれは今だけのことだから……。
彼はすぐにまたアマリアから離れていくのだろう。辛辣な言葉を残して。
ああ、それは嫌……。
アマリアは彼が離れていかないように必死で祈った。
もう少しだけ……あと少しだけ、わたしの傍にいて。
唇が離れていって、アマリアは閉じていた目を更にギュッと閉じた。彼が冷たい表情をしているかもしれないと思うと、それに気づきたくなかったからだ。
だが、急に耳朶にキスをされてしまい、アマリアは身体を震わせた。
「やっ…ぁ……」
彼の息が直接耳にかかる。耳朶にキスをされただけでなく、耳の穴に舌を差し込まれた。もちろん、そんなことをされたのは初めてだ。なんとなく淫らなことをされているような気がして、ドキドキしてくる。
「可愛い反応をする……」
彼の低く深みのある声が聞こえてきて、アマリアはまた震えずにはいられなかった。
だって……。
胸を撫でられ、耳にキスをされていると、それだけで自分のすべてを彼に明け渡したような気がしてくる。
わたしのすべてはあなたのもの……。
低い声で脅かすように言われて、アマリアは目を開けた。トラヴィスの冷ややかな顔があまりにも近くにあって、はっと息を呑む。
「……トラヴィス」
アマリアは心の中でトラヴィスと呼んでいたものの、実際にそう呼んだのは初めてだった。
馴れ馴れしいと思われただろうか。彼の眼差しが何か特別なものに変化していく。冷たい瞳がひどく熱っぽいものに変わっていた。
「疲れているだろうが、怠けている場合じゃないな」
彼はまだぼんやりしているアマリアを揺らして、完全に起こそうとしていた。
「どうして……あなたはここにいるの?」
ここはわたしの部屋なのに。
トラヴィスがいつでも用事を言いつけられるように、ここに寝泊まりさせられるというだけで、完全に自分の部屋とは言いがたいが、やはり勝手に乙女の部屋に入ってくるのはよくないと思うのだ。
「ノックをしたが、返事がなかったからな。ひょっとして君が……」
「わたしが……?」
「いや、君がどこかに逃げたかと思ったんだ」
アマリアはぱっと目を大きく開けて、彼を睨んだ。
「逃げたりしないわ! わたし、あなたの人質になると言ったはずよ!」
不思議なことに、トラヴィスはふっと微笑んだ。いつもの彼ならここで嫌味を言うところだが、何故だか今は違う。
「どうやら君はとてつもなく不器用だが、やる気は一応あるようだ」
「そ、そうよ……」
褒められたのか、それともけなされたのか判らないが、どちらかというと、アマリアは褒められたような気がした。たったそれだけで気分が高揚してきて、顔を赤らめた。
「わたし、起きるから……手を離して」
彼はアマリアを起こすために両肩を掴んでいた。このままでは起きられない。彼がゆっくりと手を離すのと同時に、アマリアは慌てて起き上がろうとした。そのままの勢いで、アマリアは彼の胸に顔を突っ込んでしまった。
「ごめんなさいっ」
アマリアの身体をトラヴィスが支えている。途端に、昨夜のキスを思い出してしまって、思わずアマリアは目を逸らした。
恥ずかしすぎる……。
ぎこちなく彼から離れようとしたのに、彼のほうが離してくれない。気がつけば、再び唇を奪われていた。
避ける暇もなかった。いや、避けたくなんかなかった。昨夜からずっと彼とのキスのことばかり考えていたのだ。
またキスをしたいって……。
誰が相手でもいいわけではない。ただ一人、トラヴィスにだけキスをしてほしかった。こんなふうに抱き締められて、気が遠くなるような激しいキスをしてほしかったのだ。
アマリアは彼にしがみついた。昨夜みたいに押しやられたくない。もっとキスをしてほしい。
それでも、彼はまたキスを途中でやめて、誘惑するなと言いだすかもしれない。しかし、そんな不安よりキスをしてもらいたい気持ちのほうが大きかった。
次第に頭の中がふわふわしてくる。
「ん……ん……っ」
もう、どうなってもいい。彼に後で叱られてもいいのだ。誘惑していると非難されたとしても。
トラヴィスはアマリアを抱き締め、そのままベッドにゆっくり押し倒していった。
アマリアはベッドで横になり、舌を深く入れられて、唇を貪られる。彼はアマリアの肩を撫でて、それからさっと腕を撫でた。そうして、ゆっくりと胸にも触れてきた。
ドレスの上からだが、身体が震える。寒いわけでも嫌悪感のためでもなく、彼に大事なところを触れられていると思うと、燃えるような感覚が身体の中を走り抜けたためだ。
彼の手はドレスの上から優しく乳房を包み込んだ。彼の手の温もりがそのまま伝わってくる。アマリアは自分の身体が急に敏感になってきたような気がした。特に胸の先端が固くなっていて、疼きのようなものを感じる。
わたし……一体どうしてしまったの?
本当は未婚の娘がこんなことをしてはいけないと知っている。キスもそうだが、胸を触られたままにしていてはいけない。今すぐ彼を突き放し、ベッドから飛び出さなくてはならない。
しかし、そう思っていても、身体が何故だか動かない。まだ彼の腕の中にいたいし、キスもされたい。身体を触られることも、決して嫌ではないのだ。
でも、きっとこれは今だけのことだから……。
彼はすぐにまたアマリアから離れていくのだろう。辛辣な言葉を残して。
ああ、それは嫌……。
アマリアは彼が離れていかないように必死で祈った。
もう少しだけ……あと少しだけ、わたしの傍にいて。
唇が離れていって、アマリアは閉じていた目を更にギュッと閉じた。彼が冷たい表情をしているかもしれないと思うと、それに気づきたくなかったからだ。
だが、急に耳朶にキスをされてしまい、アマリアは身体を震わせた。
「やっ…ぁ……」
彼の息が直接耳にかかる。耳朶にキスをされただけでなく、耳の穴に舌を差し込まれた。もちろん、そんなことをされたのは初めてだ。なんとなく淫らなことをされているような気がして、ドキドキしてくる。
「可愛い反応をする……」
彼の低く深みのある声が聞こえてきて、アマリアはまた震えずにはいられなかった。
だって……。
胸を撫でられ、耳にキスをされていると、それだけで自分のすべてを彼に明け渡したような気がしてくる。
わたしのすべてはあなたのもの……。