喪服の姫君
かりそめの初恋は褥を濡らす
杏奈 イラスト/ゆえこ
老齢の王へ嫁ぐ予定のリリアーヌはお忍びで祭りへ参加し、一人の青年と出会い、運命の恋に落ちた。生涯最後の恋を胸に嫁いだリリアーヌを待っていたのは、夫となる王の死と青年との再会で…? 発売日:2015年7月1日
かりそめの初恋は褥を濡らす
杏奈 イラスト/ゆえこ
老齢の王へ嫁ぐ予定のリリアーヌはお忍びで祭りへ参加し、一人の青年と出会い、運命の恋に落ちた。生涯最後の恋を胸に嫁いだリリアーヌを待っていたのは、夫となる王の死と青年との再会で…? 発売日:2015年7月1日
「――君から私を探しにきてくれたのかな」
予想だにしなかった低い声がふいに背後から響き、リリアーヌは心臓が飛び上がるほど驚いた。おそるおそる後ろを振り返ると、幹の反対側にオディロンがもたれかかっていた。腕組みをして、こちらに顔を向けている。
「あっ……」
彼の深青色の双眸が見据えてくる。懐かしさに潤んでいるような、それでいてなにか強硬な意思を感じさせる視線だ。リリアーヌは蛇に睨まれた蛙のごとく、足がすくんでしまう。
「リリア――いやリリアーヌ女王、感動の再会だね」
言葉とは裏腹に彼の目つきは鋭い。そんな厳しいオディロンの表情など見たことがない。リリアーヌの胸の奥で、にわかに危険を知らせる警鐘が鳴る。
「わ、私……」
リリアーヌはくるりと踵を返して、その場を立ち去ろうとした。だがそれより早く、オディロンに背後から腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。
「あっ」
ヒールを履いた脚がもつれ、彼の胸に倒れ込んでしまう。すかさずぎゅっと力任せに抱きすくめられる。懐かしい彼の香りと体温に、一瞬全身の血が騒いだ。しかし本能的な恐怖の方が勝り、身を捩って逃れようとする。
「いや……離して……っ」
「なぜ逃げる? あんなにも愛し合った私たちではないのか?」
オディロンが耳元で熱い息を吹きかけるようにささやく。その声と息に、全身の力が抜けそうになる。だが必死で抵抗する。
「だって、なんだかあなたは違う……あの時のあなたと別人のよう……まさか王の落とし胤だったなんて、どうしてあのとき――」
「聞くな――私は君を愛しているんだ」
ふいに彼は彼女の身体を木の幹に押し付けると、両手首を掴んで動きを阻み、荒々しく唇を塞いできた。
「や……く……ふ、ぅうっ」
かちかちと歯がぶつかり合うほど激しい口づけだった。
必死で顔を背けて身を捩るが、折れそうなほど細い腰を強く引きつけられ、身体がびくとも動かない。わずかに逃げる唇をやすやすと奪い、熱い舌が強引に唇を割り開いてくる。
「うぅ、う、っふ、んんぅ……」
咽喉奥まで舌で塞がれ、息も出来ない。怯える舌を強引に搦め捕られ、痛みが走るほど吸い上げられ、じんと脳芯が痺れる。心は混乱しているのに、甘やかな愉悦が背中を走り抜ける。
(喪中の身で、こんなこと許されないのに……!)
背徳の怯えが心に渦巻く。なのに、身体中が熱く沸き立ち、みるみる抵抗が弱まってしまう。
ずっとオディロンを想ってきた。何もかも捨ててこの国へ嫁いで来た時も、胸の奥底には彼の面影が揺れていた。嫁ぐことが生きる指針で、彼を心の隅で密かに想うことだけが、生きる希望だった。だから、彼に触れられ彼の口づけを受けると、頭が朦朧として蕩けてしまう。
「ふ、は……んんぅ、んんん……」
溢れる唾液と共に舌を何度も吸い上げられているうちに、リリアーヌの思考は停止し、口づけの快感に全身が腑抜けて弛緩してしまう。
「……はぁ、は、はぁ……っ」
ようやく唇を解放された彼女は、木の幹に背中をぐったり預け、せわしなく呼吸を繰り返すだけだった。
「ひ……どい、許されないわ……こんなこと……」
荒い息の中から、途切れ途切れにつぶやく。
「許されない? こんなことも?」
オディロンの双眸が獰猛に光った。彼はリリアーヌの両手首を片手で頭上で纏めると、もう片方の手でいきなり喪服の胸元を引き下ろした。
「いや、きゃあっ」
まろやかな乳房がふるんとこぼれ出る。
漆黒の喪服に、真っ白な乳房が眩いばかりに輝く。
「いやあ、やめて……!」
耐え難い羞恥に目に涙が溢れるのに、外気に晒された紅い乳首は、男を誘うようにつんと尖ってしまう。オディロンがその先端に唇を寄せてくる。
「んんっ? あ、ぁっ」
甘い疼きが走り抜け、リリアーヌは身震いして声を震わせる。
「ああその声だ――忘れもしない」
オディロンはくぐもった声を出すと、片手で彼女の乳房を乱暴に持ち上げ、紅い頂きにいきなり歯を立てた。
「っ、痛……っ、痛い……っ」
鋭い痛みに涙を滲ませる彼女の表情を、オディロンは乳首を交互に甘噛みしながら楽しむように窺う。かと思うと、じんじん痺れる先端に熱い舌を這わせて擽ってくる。
「ふ、あ、や……あぁ……」
むず痒い快感にリリアーヌは身を捩って喘ぐ。すると、すかさずこりっと凝った蕾を強く噛まれ、苦悶に悲鳴を上げてしまう。苦痛と愉悦を交互に与えられているうちに、痛みすら甘い快感にすり替わっていく。
「……や、あぁ、だめ……あぁ、だめ……」
貪られた乳房に淫らな紅い花びらが散り、乳首は耐え難いほどひりつく。下腹部にうずうずした淫猥な欲望が生まれ、リリアーヌは息も絶え絶えで身悶える。
本当はずっとオディロンを求めていた。彼の息、彼の舌、彼の指、彼の肌――なにもかもつぶさに覚えている。彼が王の落胤でも、こんな状況でも、拒みきれなかった。巧みな愛撫を受けた初心な身体は、すっかり火がついてしまう。
「は……はぁ、は……」
骨抜きになったリリアーヌを、オディロンは熱っぽい眼差しで見つめる。
「淫らで美しいな――こんな君を他の男に渡したくない」
予想だにしなかった低い声がふいに背後から響き、リリアーヌは心臓が飛び上がるほど驚いた。おそるおそる後ろを振り返ると、幹の反対側にオディロンがもたれかかっていた。腕組みをして、こちらに顔を向けている。
「あっ……」
彼の深青色の双眸が見据えてくる。懐かしさに潤んでいるような、それでいてなにか強硬な意思を感じさせる視線だ。リリアーヌは蛇に睨まれた蛙のごとく、足がすくんでしまう。
「リリア――いやリリアーヌ女王、感動の再会だね」
言葉とは裏腹に彼の目つきは鋭い。そんな厳しいオディロンの表情など見たことがない。リリアーヌの胸の奥で、にわかに危険を知らせる警鐘が鳴る。
「わ、私……」
リリアーヌはくるりと踵を返して、その場を立ち去ろうとした。だがそれより早く、オディロンに背後から腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。
「あっ」
ヒールを履いた脚がもつれ、彼の胸に倒れ込んでしまう。すかさずぎゅっと力任せに抱きすくめられる。懐かしい彼の香りと体温に、一瞬全身の血が騒いだ。しかし本能的な恐怖の方が勝り、身を捩って逃れようとする。
「いや……離して……っ」
「なぜ逃げる? あんなにも愛し合った私たちではないのか?」
オディロンが耳元で熱い息を吹きかけるようにささやく。その声と息に、全身の力が抜けそうになる。だが必死で抵抗する。
「だって、なんだかあなたは違う……あの時のあなたと別人のよう……まさか王の落とし胤だったなんて、どうしてあのとき――」
「聞くな――私は君を愛しているんだ」
ふいに彼は彼女の身体を木の幹に押し付けると、両手首を掴んで動きを阻み、荒々しく唇を塞いできた。
「や……く……ふ、ぅうっ」
かちかちと歯がぶつかり合うほど激しい口づけだった。
必死で顔を背けて身を捩るが、折れそうなほど細い腰を強く引きつけられ、身体がびくとも動かない。わずかに逃げる唇をやすやすと奪い、熱い舌が強引に唇を割り開いてくる。
「うぅ、う、っふ、んんぅ……」
咽喉奥まで舌で塞がれ、息も出来ない。怯える舌を強引に搦め捕られ、痛みが走るほど吸い上げられ、じんと脳芯が痺れる。心は混乱しているのに、甘やかな愉悦が背中を走り抜ける。
(喪中の身で、こんなこと許されないのに……!)
背徳の怯えが心に渦巻く。なのに、身体中が熱く沸き立ち、みるみる抵抗が弱まってしまう。
ずっとオディロンを想ってきた。何もかも捨ててこの国へ嫁いで来た時も、胸の奥底には彼の面影が揺れていた。嫁ぐことが生きる指針で、彼を心の隅で密かに想うことだけが、生きる希望だった。だから、彼に触れられ彼の口づけを受けると、頭が朦朧として蕩けてしまう。
「ふ、は……んんぅ、んんん……」
溢れる唾液と共に舌を何度も吸い上げられているうちに、リリアーヌの思考は停止し、口づけの快感に全身が腑抜けて弛緩してしまう。
「……はぁ、は、はぁ……っ」
ようやく唇を解放された彼女は、木の幹に背中をぐったり預け、せわしなく呼吸を繰り返すだけだった。
「ひ……どい、許されないわ……こんなこと……」
荒い息の中から、途切れ途切れにつぶやく。
「許されない? こんなことも?」
オディロンの双眸が獰猛に光った。彼はリリアーヌの両手首を片手で頭上で纏めると、もう片方の手でいきなり喪服の胸元を引き下ろした。
「いや、きゃあっ」
まろやかな乳房がふるんとこぼれ出る。
漆黒の喪服に、真っ白な乳房が眩いばかりに輝く。
「いやあ、やめて……!」
耐え難い羞恥に目に涙が溢れるのに、外気に晒された紅い乳首は、男を誘うようにつんと尖ってしまう。オディロンがその先端に唇を寄せてくる。
「んんっ? あ、ぁっ」
甘い疼きが走り抜け、リリアーヌは身震いして声を震わせる。
「ああその声だ――忘れもしない」
オディロンはくぐもった声を出すと、片手で彼女の乳房を乱暴に持ち上げ、紅い頂きにいきなり歯を立てた。
「っ、痛……っ、痛い……っ」
鋭い痛みに涙を滲ませる彼女の表情を、オディロンは乳首を交互に甘噛みしながら楽しむように窺う。かと思うと、じんじん痺れる先端に熱い舌を這わせて擽ってくる。
「ふ、あ、や……あぁ……」
むず痒い快感にリリアーヌは身を捩って喘ぐ。すると、すかさずこりっと凝った蕾を強く噛まれ、苦悶に悲鳴を上げてしまう。苦痛と愉悦を交互に与えられているうちに、痛みすら甘い快感にすり替わっていく。
「……や、あぁ、だめ……あぁ、だめ……」
貪られた乳房に淫らな紅い花びらが散り、乳首は耐え難いほどひりつく。下腹部にうずうずした淫猥な欲望が生まれ、リリアーヌは息も絶え絶えで身悶える。
本当はずっとオディロンを求めていた。彼の息、彼の舌、彼の指、彼の肌――なにもかもつぶさに覚えている。彼が王の落胤でも、こんな状況でも、拒みきれなかった。巧みな愛撫を受けた初心な身体は、すっかり火がついてしまう。
「は……はぁ、は……」
骨抜きになったリリアーヌを、オディロンは熱っぽい眼差しで見つめる。
「淫らで美しいな――こんな君を他の男に渡したくない」