香り蜜話
乙女と勇将の淫らな純愛
あまおう紅 イラスト/風コトハ
【挿絵全点フルカラー】古王国オルトシアの王族の娘にして、未来の王を選ぶとされる特別な存在、《花乙女》。《花乙女》は特別な香りをまとい、男たちはそれに理性を失う――。新興国ザフマーンの侵攻を受けてオルトシアは滅びたが、《花乙女》アティスは、総督となった敵将ナシルにより、丁重に扱われていた。優しく思慮深いナシルに恋をするアティスだが、初恋でどうすればいいのかわからない。そんなある日、ナシルがアティスの《香り》に惑わされてしまい…? 配信日:2016年2月26日
乙女と勇将の淫らな純愛
あまおう
【挿絵全点フルカラー】古王国オルトシアの王族の娘にして、未来の王を選ぶとされる特別な存在、《花乙女》。《花乙女》は特別な香りをまとい、男たちはそれに理性を失う――。新興国ザフマーンの侵攻を受けてオルトシアは滅びたが、《花乙女》アティスは、総督となった敵将ナシルにより、丁重に扱われていた。優しく思慮深いナシルに恋をするアティスだが、初恋でどうすればいいのかわからない。そんなある日、ナシルがアティスの《香り》に惑わされてしまい…? 配信日:2016年2月26日
「《花乙女》の香りはまるで媚薬だな」
はぁ……と、彼は黒瞳に熱っぽい光を宿し、悩ましげに息をついた。
「それも毒のように強く、抗いようがない……」
青瑪瑙の間――もとは国王が賓客を遇するための豪奢な部屋である。現在の主は、いままさにアティスの中に己のものを突き立て、これ以上ないほど奥まで深々と征服している当人であった。
部屋の一画に据えられた優美な寝椅子の上で、アティスは火照って汗ばんだ身体をくねらせ、さざ波のように寄せては返す欲望に喘ぐ。
「……ぁ、……ナシル、……さま……っ」
周囲にはつい先刻まで身につけていた衣裳が、引き裂かれて散らばっていた。
彼にじっと見つめられたせいで、つい《香り》を発してしまったのだ。おそらく彼はそれを吸い込み、すぐにでもアティスを愛したい欲望を抑えることができなくなったのだろう。
自分の胸のふくらみをつかむ手を、アティスは愛しさに心を疼かせながら見つめた。
よく日に灼けた大きな手が、ぐにぐにと柔肉を押しつぶし、両側からつかむようにして押し上げてくる。
その手の甲には、将帥の証である紅い獅子が描かれていた。
ヘナで描かれた紅い線は、褐色の肌の色合いをなまめかしく引き立たせる。その手がアティスの、一度も日に当てたことのない胸――どこまでも白い肌を無遠慮に這う様はひどく色めいていた。
(は、恥ずかしい……っ、でも……うれしい……っ)
彼に組み敷かれるときはいつも、そのふたつの思いで心の中がいっぱいになる。
いまアティスをもっとも深いところまで貫いているのは、いつも身を焦がして見つめている相手であったから。
世界で一番大好きな人だから。そして何より、アティスにとっては運命の人であるから。
しかし彼とは十歳という年の差があり、普段はそれが自分との距離を大きく隔てている。
そんなとき、あれこれ考えすぎてしまう彼の迷いをぬぐい去り、その距離を一足飛びに縮めてしまうのが、アティスの持つ《香り》の効能だった。
いつも冷静で悠然と構え、ひとまわり年下の少女を子供のようにあしらう彼が、劣情をさらけ出して挑みかかってくる姿を見上げるたび、震えるほどの歓びを感じてしまう。
「ナシルさま……、ナシルさま……、……っ」
泣きぬれた菫色の瞳を向け、懇願するように両手をのばすと、彼は両脇に肘をついて身を寄せてくれた。
アティスは熱く昂った彼の身体に、両腕をまわしてしがみつく。たくましく広い胸を、思うさま独り占めする。
「ナシルさま……、好きです……っ」
快楽に蕩けているときだけ、呼びかける声が舌足らずになってしまう。
アティス自身は、幼く聞こえてしまうその声が好きではないのだが、ナシルの方は心動かされるようだ。
華奢で小柄な身体を、彼は片腕で抱きしめてきた。そして首筋に顔をうずめて深く息を吸う。
と、蜜壺をいっぱいまで拡げていた凶器のような屹立が、びくびくと弾んで嵩を増す。
自分の中でのその変化に、媚肉がうれしそうに蠢いた。
「……あぁっ、んっ、……おっきく……また、大きくなった、……っ」
そしてそれに、隠しようのないほど猥りがましく反応してしまったことが恥ずかしく、汗の浮いた広い胸に顔を押しつける。
ナシルは低く笑い、そんなアティスの頭をなだめるように――愛おしむようになでてきた。
そして困惑しきったように言う。
「まったくどうすればいいんだ……」
先ほどアティスを組み敷いたときから、すでに三度ほど果てているというのに、まだまだ勢いが衰える様子のない己自身のことだろう。
彼は、蜜口に押し当てた腰をゆるりとまわした。
結合部で、あふれた蜜がぐじゅっ……と音をたてる。
「……はんっ……」
「《花乙女》の香りは……、一度吸い込んだら最後、この身体を貪ること以外考えられなくなる。……おまけに何度放っても、またすぐに昂ってしまう。本当になぜ――これほどまでに……」
そんなことをつぶやきながら、彼はアティスの脇に両肘をつき、蜜孔をずっしりと満たす熱い昂りで、ずん、ずん、とゆるやかに突き上げ始めた。
ずくずくと最奥を突かれるごとに、そこで弾ける鋭い快感に我を忘れてしまう。意識が飛んでしまうほどの気持ちよさのあまり、媚壁はとめどなく蜜をこぼし、はしたなく熱杭を貪る。
「はぁんっ……、ナシルさまっ……、あぁっ、……ぁぁんっ、……」
ゆるゆると上下に揺さぶられながら、アティスは奥を突かれるたび意識が遠のくほどの愉悦に痺れる背筋をきつく反らし、奔放な嬌声を上げた。
「ナシルさま、ぁっ……好きです、……大好き……っ」
「おまえにふれてはならないと、頭ではわかっていても、とても抗えるものではない――」
苦悩をまじえ、彼は苦しそうにささやく。
のしかかってくる重い身体を力いっぱい抱きしめながら、アティスははかなく首を振った。
「いやです……っ、ふれてはならないなんて……言わないで……っ」
「おまえの言葉も……この香りも、……私の理性をとろとろに溶かしてしまう。まるでここのように――」
くり返し突き上げながら、彼は反り返った昂りで秘肉を持ち上げるかのように、ふいに身を起こす。
「ぁあぁん……!」
蜜口で、ぐぷっ……と、聞くに堪えない水音が響いた。同時に、内股にどろりと大量の蜜がこぼれる感触がして、羞恥に顔が燃えてしまう。
「や、……あぁ……っ」
中途半端に持ち上げられた細い肢体を、彼は片手で抱き上げ、危なげなく支えた。
向かい合って座る形になると、濃厚な情欲を宿した眼差しが、ゆらりとアティスを見据えてくる。
「おまえの何もかもが、……私の意志の力をあざ笑うかのように、欲望に押し流す――」
低くかすれた声で言いながら、彼はアティスのくちびるを甘くふさいできた。
最初のうちは、くちびるの感触を愉しむかのように擦り合わされていたそのあわいから、しばらくの後、ぬるりとした温かいものがすべり込んでくる。
「……んっ……」
肉厚の舌は、自分ばかりではなくアティスの気分をも昂らせようとするかのように、唾液をたっぷりからめて丹念に舐めまわしてきた。
「……ん――ぅ、……ふぅん……っ」
舌と舌とを重ねる熱く淫らな感触は、彼のねらい通りアティスの淫猥な気分を煽り、くちびるに隙間ができるごとに、子犬のような、鼻にかかった声がかすかにもれる。
濃密な舌の愛撫に夢中になって応えていると、貫かれたままの下肢が我知らずうねり出した。
のたうつその腰をなでまわし、彼は口づけの合間に、苦悩を交えてつぶやく。
「……いままで、こんなふうになったことはないんだ。……こんなふうに欲望に溺れたことは一度もなかった。それなのに……っ」
「香りのせいです……。すべては《花乙女》の、……香りのせい、ですから……っ――あっ」
自分が三度果てる間に、アティスに何度も何度も気をやらせた彼は、こちらの弱点を知りつくした動きで、いよいよ本格的に内部を突きくずしにかかってくる。
「はぁっ、……ぁんっ、……あぁっ、……んぁぁ……っ」
脈の浮いた怒張の側面で、媚肉の特に感じる場所をくり返し擦りたてられると、全身から力が抜けてしまうほど心地よかった。身体の中で燻る熱に耐えきれず、アティスの腰はがくがくとあられもなく揺れ踊る。
おまけに硬く張り出した切っ先で、奥の弱い箇所を優しく、しかし容赦なくくり返し突かれ、脳髄が痺れてドロドロになるような快感に見舞われてしまう。
「はぁぁんっ、……やぁっ、……だめっ……あっ、あぁぁ……っ」
ほどなくアティスは、いまだ自分の中で傲然と屹立するものをきつく締めつけ、何度目かわからない頂に昇り詰めた。
「あ、ぁあぁぁ……!」
汗ばんだナシルの首筋につかまりながら、感じきった甘い声を張り上げる。目の前が白くなるほどの恍惚にもみくちゃにされるうち、少しだけ気を失っていたようだ。
くったりと脱力した身体を片手で抱きしめ、ナシルは手近の卓にもう片方の手をのばすと、そこにあった銀の器をひょいと取り上げる。
そして器に盛られていた氷菓子を、口移しでアティスのくちびるに含ませてきた。
「……あっ、……んっ」
突然の冷たさに、ハッと目を覚ます。
遠い山から切り出し、都まで運んできた氷を削って、砂糖と共に煮詰めた苺の果汁をかけたものだ。
アティスの舌に絡んできた彼のものも、ほんのり苺の味がした。
それは懸命に応えるアティスを愛でるように、くり返しからみ、舐め上げてくる。その愉悦にぞくぞくと背をふるわせていると、ふいに悪戯な動きでアティスの舌をくすぐってきた。
「……ふ、……んんっ、……んっ……」
その、じゃれ合うような甘いキスに夢中になる。
「……ぁ、……もっと……、ナシルさま、……もっと……っ」
合間にささやくと、彼は鼻先をこすりつけるようにして、フッと笑った。
「おまえの『もっと』が好きだ。かわいい」
「うれし……ンぅ……っ、……っ、……」
くちびるがいよいよ深く重ねられ、ちゅくちゅくと口内で舌を求め合う興奮に溺れる。
そこへ、たったいま共に果てたはずの彼のものが、ぐぷりと挿し込まれてきた。
「んんっ……、ん……っ――あ、ま、また……?」
「すまない。止められない。……止まらない……っ」
アティスの香りに惑乱した彼は、湧き上がるものを堪えるように、そこで眉根を寄せる。
そしてせめてアティスをより感じさせようとするかのごとく、ふたたび深くくちびるを重ね、丁寧に、且つねっとりと舌を舐ってきた。
「……ふ……っ、……んんっ……!」
その焦れったいほど甘く淫蕩な感覚は、あますところなく下肢まで伝わり、淫路が熱くそそり立つ剛直にからみついて絞り上げる。
身もだえ始めたアティスの身体に大きな手を這わせ、彼はくちびるをほどいて、ちゅっと頬にキスをした。
「動いてもいいか?」
含み笑いでそう言う彼に、むしろ懇願したい気分でこくこくとうなずく。
「……ぁっ、……ナシルさま……っ」
こみ上げる喜悦にせつなく喘ぐアティスを、彼はつながったまま寝椅子に押し倒してきた。ずん、ずん、と甘い律動で腰を突き入れながら、手をのばして何かを引き寄せる。
その意図を知る間もなく、次の瞬間、度重なる絶頂のせいで硬く尖った花芯が刺すような冷たい感触に襲われた。
「――きゃぁあぁぁ……っ」
あろうことか、彼はそこに氷菓子を塗りつけてきたのだ。
突き抜けるような快感に射貫かれ、アティスは悲鳴を発しながら全身を硬直させる。
無慈悲な戯れによって、またたくまに頂に達したアティスは、身体中が痺れてしまうほどの愉悦を感じながら、蜜路の奥深くまで受け止めた熱杭を根元までぎゅうぎゅう締めつけた。
その動きにナシルが息を詰める。そしてアティスの腰をつかみ、手加減を振り捨てた動きでじゅぶじゅぶと鋭く突き上げ始めた。
「やぁぁぁっ、だめっ……ぁあぁんっ、……いま、……いまは、だめぇ……っ――あ、ぁぁぁ……!」
絶頂の最中にありながら奥の感じやすい場所を抉られ、下肢からとめどなくせり上がってくる官能の奔流に身体を絶え間なく震わせる。
息の止まりそうな法悦の波を越えながら、アティスは内部の灼熱をどこまでもくるおしく引き絞った。
「ぁあぁぁ……っ、ナシルさま……っ」
意識が朦朧としたまま舌足らずに名前を呼ぶアティスの、さまよわせた手をしっかりとつかみ、ナシルは快感の残滓に震える華奢な身体を、たくましい胸にすっぽりと抱きしめてくる。
アティスはそうされるのが好きだと知っているのだ。
「いい子だ……」
ささやきはこの上もなく優しい。
しかし同時に、愉しんでいるように見える際にも、いつもどこか憂いがにじんでいることにアティスは気づいていた。
胸の奥をちりちりと焦がす思いを感じる。
(わたしとこういうことをするのは……、《香り》のせいというだけなの……?)
はぁ……と、彼は黒瞳に熱っぽい光を宿し、悩ましげに息をついた。
「それも毒のように強く、抗いようがない……」
青瑪瑙の間――もとは国王が賓客を遇するための豪奢な部屋である。現在の主は、いままさにアティスの中に己のものを突き立て、これ以上ないほど奥まで深々と征服している当人であった。
部屋の一画に据えられた優美な寝椅子の上で、アティスは火照って汗ばんだ身体をくねらせ、さざ波のように寄せては返す欲望に喘ぐ。
「……ぁ、……ナシル、……さま……っ」
周囲にはつい先刻まで身につけていた衣裳が、引き裂かれて散らばっていた。
彼にじっと見つめられたせいで、つい《香り》を発してしまったのだ。おそらく彼はそれを吸い込み、すぐにでもアティスを愛したい欲望を抑えることができなくなったのだろう。
自分の胸のふくらみをつかむ手を、アティスは愛しさに心を疼かせながら見つめた。
よく日に灼けた大きな手が、ぐにぐにと柔肉を押しつぶし、両側からつかむようにして押し上げてくる。
その手の甲には、将帥の証である紅い獅子が描かれていた。
ヘナで描かれた紅い線は、褐色の肌の色合いをなまめかしく引き立たせる。その手がアティスの、一度も日に当てたことのない胸――どこまでも白い肌を無遠慮に這う様はひどく色めいていた。
(は、恥ずかしい……っ、でも……うれしい……っ)
彼に組み敷かれるときはいつも、そのふたつの思いで心の中がいっぱいになる。
いまアティスをもっとも深いところまで貫いているのは、いつも身を焦がして見つめている相手であったから。
世界で一番大好きな人だから。そして何より、アティスにとっては運命の人であるから。
しかし彼とは十歳という年の差があり、普段はそれが自分との距離を大きく隔てている。
そんなとき、あれこれ考えすぎてしまう彼の迷いをぬぐい去り、その距離を一足飛びに縮めてしまうのが、アティスの持つ《香り》の効能だった。
いつも冷静で悠然と構え、ひとまわり年下の少女を子供のようにあしらう彼が、劣情をさらけ出して挑みかかってくる姿を見上げるたび、震えるほどの歓びを感じてしまう。
「ナシルさま……、ナシルさま……、……っ」
泣きぬれた菫色の瞳を向け、懇願するように両手をのばすと、彼は両脇に肘をついて身を寄せてくれた。
アティスは熱く昂った彼の身体に、両腕をまわしてしがみつく。たくましく広い胸を、思うさま独り占めする。
「ナシルさま……、好きです……っ」
快楽に蕩けているときだけ、呼びかける声が舌足らずになってしまう。
アティス自身は、幼く聞こえてしまうその声が好きではないのだが、ナシルの方は心動かされるようだ。
華奢で小柄な身体を、彼は片腕で抱きしめてきた。そして首筋に顔をうずめて深く息を吸う。
と、蜜壺をいっぱいまで拡げていた凶器のような屹立が、びくびくと弾んで嵩を増す。
自分の中でのその変化に、媚肉がうれしそうに蠢いた。
「……あぁっ、んっ、……おっきく……また、大きくなった、……っ」
そしてそれに、隠しようのないほど猥りがましく反応してしまったことが恥ずかしく、汗の浮いた広い胸に顔を押しつける。
ナシルは低く笑い、そんなアティスの頭をなだめるように――愛おしむようになでてきた。
そして困惑しきったように言う。
「まったくどうすればいいんだ……」
先ほどアティスを組み敷いたときから、すでに三度ほど果てているというのに、まだまだ勢いが衰える様子のない己自身のことだろう。
彼は、蜜口に押し当てた腰をゆるりとまわした。
結合部で、あふれた蜜がぐじゅっ……と音をたてる。
「……はんっ……」
「《花乙女》の香りは……、一度吸い込んだら最後、この身体を貪ること以外考えられなくなる。……おまけに何度放っても、またすぐに昂ってしまう。本当になぜ――これほどまでに……」
そんなことをつぶやきながら、彼はアティスの脇に両肘をつき、蜜孔をずっしりと満たす熱い昂りで、ずん、ずん、とゆるやかに突き上げ始めた。
ずくずくと最奥を突かれるごとに、そこで弾ける鋭い快感に我を忘れてしまう。意識が飛んでしまうほどの気持ちよさのあまり、媚壁はとめどなく蜜をこぼし、はしたなく熱杭を貪る。
「はぁんっ……、ナシルさまっ……、あぁっ、……ぁぁんっ、……」
ゆるゆると上下に揺さぶられながら、アティスは奥を突かれるたび意識が遠のくほどの愉悦に痺れる背筋をきつく反らし、奔放な嬌声を上げた。
「ナシルさま、ぁっ……好きです、……大好き……っ」
「おまえにふれてはならないと、頭ではわかっていても、とても抗えるものではない――」
苦悩をまじえ、彼は苦しそうにささやく。
のしかかってくる重い身体を力いっぱい抱きしめながら、アティスははかなく首を振った。
「いやです……っ、ふれてはならないなんて……言わないで……っ」
「おまえの言葉も……この香りも、……私の理性をとろとろに溶かしてしまう。まるでここのように――」
くり返し突き上げながら、彼は反り返った昂りで秘肉を持ち上げるかのように、ふいに身を起こす。
「ぁあぁん……!」
蜜口で、ぐぷっ……と、聞くに堪えない水音が響いた。同時に、内股にどろりと大量の蜜がこぼれる感触がして、羞恥に顔が燃えてしまう。
「や、……あぁ……っ」
中途半端に持ち上げられた細い肢体を、彼は片手で抱き上げ、危なげなく支えた。
向かい合って座る形になると、濃厚な情欲を宿した眼差しが、ゆらりとアティスを見据えてくる。
「おまえの何もかもが、……私の意志の力をあざ笑うかのように、欲望に押し流す――」
低くかすれた声で言いながら、彼はアティスのくちびるを甘くふさいできた。
最初のうちは、くちびるの感触を愉しむかのように擦り合わされていたそのあわいから、しばらくの後、ぬるりとした温かいものがすべり込んでくる。
「……んっ……」
肉厚の舌は、自分ばかりではなくアティスの気分をも昂らせようとするかのように、唾液をたっぷりからめて丹念に舐めまわしてきた。
「……ん――ぅ、……ふぅん……っ」
舌と舌とを重ねる熱く淫らな感触は、彼のねらい通りアティスの淫猥な気分を煽り、くちびるに隙間ができるごとに、子犬のような、鼻にかかった声がかすかにもれる。
濃密な舌の愛撫に夢中になって応えていると、貫かれたままの下肢が我知らずうねり出した。
のたうつその腰をなでまわし、彼は口づけの合間に、苦悩を交えてつぶやく。
「……いままで、こんなふうになったことはないんだ。……こんなふうに欲望に溺れたことは一度もなかった。それなのに……っ」
「香りのせいです……。すべては《花乙女》の、……香りのせい、ですから……っ――あっ」
自分が三度果てる間に、アティスに何度も何度も気をやらせた彼は、こちらの弱点を知りつくした動きで、いよいよ本格的に内部を突きくずしにかかってくる。
「はぁっ、……ぁんっ、……あぁっ、……んぁぁ……っ」
脈の浮いた怒張の側面で、媚肉の特に感じる場所をくり返し擦りたてられると、全身から力が抜けてしまうほど心地よかった。身体の中で燻る熱に耐えきれず、アティスの腰はがくがくとあられもなく揺れ踊る。
おまけに硬く張り出した切っ先で、奥の弱い箇所を優しく、しかし容赦なくくり返し突かれ、脳髄が痺れてドロドロになるような快感に見舞われてしまう。
「はぁぁんっ、……やぁっ、……だめっ……あっ、あぁぁ……っ」
ほどなくアティスは、いまだ自分の中で傲然と屹立するものをきつく締めつけ、何度目かわからない頂に昇り詰めた。
「あ、ぁあぁぁ……!」
汗ばんだナシルの首筋につかまりながら、感じきった甘い声を張り上げる。目の前が白くなるほどの恍惚にもみくちゃにされるうち、少しだけ気を失っていたようだ。
くったりと脱力した身体を片手で抱きしめ、ナシルは手近の卓にもう片方の手をのばすと、そこにあった銀の器をひょいと取り上げる。
そして器に盛られていた氷菓子を、口移しでアティスのくちびるに含ませてきた。
「……あっ、……んっ」
突然の冷たさに、ハッと目を覚ます。
遠い山から切り出し、都まで運んできた氷を削って、砂糖と共に煮詰めた苺の果汁をかけたものだ。
アティスの舌に絡んできた彼のものも、ほんのり苺の味がした。
それは懸命に応えるアティスを愛でるように、くり返しからみ、舐め上げてくる。その愉悦にぞくぞくと背をふるわせていると、ふいに悪戯な動きでアティスの舌をくすぐってきた。
「……ふ、……んんっ、……んっ……」
その、じゃれ合うような甘いキスに夢中になる。
「……ぁ、……もっと……、ナシルさま、……もっと……っ」
合間にささやくと、彼は鼻先をこすりつけるようにして、フッと笑った。
「おまえの『もっと』が好きだ。かわいい」
「うれし……ンぅ……っ、……っ、……」
くちびるがいよいよ深く重ねられ、ちゅくちゅくと口内で舌を求め合う興奮に溺れる。
そこへ、たったいま共に果てたはずの彼のものが、ぐぷりと挿し込まれてきた。
「んんっ……、ん……っ――あ、ま、また……?」
「すまない。止められない。……止まらない……っ」
アティスの香りに惑乱した彼は、湧き上がるものを堪えるように、そこで眉根を寄せる。
そしてせめてアティスをより感じさせようとするかのごとく、ふたたび深くくちびるを重ね、丁寧に、且つねっとりと舌を舐ってきた。
「……ふ……っ、……んんっ……!」
その焦れったいほど甘く淫蕩な感覚は、あますところなく下肢まで伝わり、淫路が熱くそそり立つ剛直にからみついて絞り上げる。
身もだえ始めたアティスの身体に大きな手を這わせ、彼はくちびるをほどいて、ちゅっと頬にキスをした。
「動いてもいいか?」
含み笑いでそう言う彼に、むしろ懇願したい気分でこくこくとうなずく。
「……ぁっ、……ナシルさま……っ」
こみ上げる喜悦にせつなく喘ぐアティスを、彼はつながったまま寝椅子に押し倒してきた。ずん、ずん、と甘い律動で腰を突き入れながら、手をのばして何かを引き寄せる。
その意図を知る間もなく、次の瞬間、度重なる絶頂のせいで硬く尖った花芯が刺すような冷たい感触に襲われた。
「――きゃぁあぁぁ……っ」
あろうことか、彼はそこに氷菓子を塗りつけてきたのだ。
突き抜けるような快感に射貫かれ、アティスは悲鳴を発しながら全身を硬直させる。
無慈悲な戯れによって、またたくまに頂に達したアティスは、身体中が痺れてしまうほどの愉悦を感じながら、蜜路の奥深くまで受け止めた熱杭を根元までぎゅうぎゅう締めつけた。
その動きにナシルが息を詰める。そしてアティスの腰をつかみ、手加減を振り捨てた動きでじゅぶじゅぶと鋭く突き上げ始めた。
「やぁぁぁっ、だめっ……ぁあぁんっ、……いま、……いまは、だめぇ……っ――あ、ぁぁぁ……!」
絶頂の最中にありながら奥の感じやすい場所を抉られ、下肢からとめどなくせり上がってくる官能の奔流に身体を絶え間なく震わせる。
息の止まりそうな法悦の波を越えながら、アティスは内部の灼熱をどこまでもくるおしく引き絞った。
「ぁあぁぁ……っ、ナシルさま……っ」
意識が朦朧としたまま舌足らずに名前を呼ぶアティスの、さまよわせた手をしっかりとつかみ、ナシルは快感の残滓に震える華奢な身体を、たくましい胸にすっぽりと抱きしめてくる。
アティスはそうされるのが好きだと知っているのだ。
「いい子だ……」
ささやきはこの上もなく優しい。
しかし同時に、愉しんでいるように見える際にも、いつもどこか憂いがにじんでいることにアティスは気づいていた。
胸の奥をちりちりと焦がす思いを感じる。
(わたしとこういうことをするのは……、《香り》のせいというだけなの……?)