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もふもふにゃんこ王子は、塩対応な猫好き令嬢に愛でられたい!

葉月エリカ イラスト/漣ミサ
侯爵令嬢リネットは無類の猫好きで、郊外の一軒家において、一人と30匹以上の猫で暮らしており、猫専門の獣医のような仕事もしている。そのため、世間からは親しみと侮蔑を込めて「にゃんこ令嬢」と呼ばれていた。ある日、リネットの家に、猫絡みで因縁のあるライアスがやってくる。なんとその頭には猫耳が、尻には尻尾が生えていた! 原因不明の猫化に困り果てたライアスは、猫に詳しいリネットなら治せるのではないかと訪ねてきたらしい。事情が事情なだけに滞在を許すリネットだが、ひょんなことからまたたび粉末を吸ったライアスが発情してしまい…!? 配信日:2023年9月28日 


「どうせ、嫌われたままでいるくらいなら――」
 やけになったような呟きののち、唇に何かがぶつかった。
 互いの歯と歯ががちんと鳴って、リネットはとっさの痛みに身を引いた。
 逃さないとばかりにライアスがリネットを押し倒し、全身で体重をかけてくる。
 唇を再び重ねられたとき、こちらの意思を無視してキスされているのだと、やっとのことで理解した。
「……んんーっ……!」
 リネットは拳を固め、ライアスの肩を叩いた。
 両脚をじたばたさせて跳ねのけようとするが、重たい体はびくともしない。
 服の上からではわからないのに、ライアスが男っぽい筋肉質な体格をしていることも、こんな状況になって初めて知った。
「暴れるな。怪我するぞ」
 ライアスに言われ、リネットはぎくりとした。
 割れたガラスの破片が、近くに散ったままだった。ライアスの言うとおり、下手に動けば手足に傷を負ってしまう。
 じっとしているしかないのをいいことに、ライアスは熱い舌を強引に潜り込ませてきた。
 未知の体験に固まるリネットだったが、なすすべもなく口内を犯されるうちに、次第に妙な心地になってくる。
「ん、ふ……――ぅん……っ」
 ライアスの舌は、リネットの口腔をすみからすみまでまさぐった。
 口蓋をくすぐられ、こちらの舌を根元から吸われて力が抜ける。ライアスの興奮が伝染したように、リネットの体もじわじわと熱を持ち始めた。
(駄目……こんなこと、しちゃ駄目なのに……)
 変わり者と言われるリネットでも、貞操観念に関しては普通の令嬢と変わらない。恋人でもない相手に唇を許すのは破廉恥なことだ――というくらいの良識はある。
 猫たちがいれば飼い主のピンチを助けてくれたかもしれないが、あいにくリネット自身が締め出してしまったままだった。
 マタタビが吸えないと諦めたのか、扉の外はすでに静かなものだ。そのせいで、鼻にかかった自分の吐息や、くちゅくちゅと唾液の鳴る音が余計にしっかり聞こえてしまう。
「ふぁ……やぁ……ぁあっ、ん……」
 抵抗する力も萎えて、リネットは全身をぐったりさせた。
 ようやく唇を離したライアスが、言い訳のように口にした。
「俺だって……リネットと初めてキスするなら、こんな無理矢理は嫌だった」
 だったらなんで――と非難を込めて見つめると、ライアスは開き直るように言った。
「このまま猫になったら、したかったことが何もできなくなる。まだ人間でいられるうちに、お前に触れたかった。――どうしても」
「ひぁっ……!?」
 ライアスの唇が鎖骨に落ちて、リネットは首をすくめた。
 骨を覆う薄い皮膚を舐められると、寒気とは違うぞくぞく感が走り抜ける。唇で吸われ、甘嚙みされて、リネットの肌は赤い花びらを散らしたように色づいた。
 さらには。
「やだ、どこ触って……っ!」
 エプロンドレスの上から、ライアスがリネットの胸に手を置いた。
 普段のリネットは締めつけ感を嫌って、下着代わりのビスチェやコルセットはつけていない。布ごしとはいえ、禁断の柔らかさにライアスが声を上擦らせた。
「お前、案外着痩せするんだな」
「何言ってるの? あ、そこ……だめ……!」
 全体を揉み込む動きののちに、ライアスの指は膨らみの頂を探り当てた。布地の上からこりこりと擦りつけられると、小さな突起は不埒な指を押し返すように隆起する。
 しかしそれは、ライアスにとって、より摘みやすい形状に変化しただけだった。親指と人差し指に捉えられて、きゅうきゅうと絞られてしまう。
「んんっ、いや……ぁっ、ぁあ……っ」
 リネットは、自分のことがわからなくなった。
 乳首を弄られ、引っ張られると、甘い疼きが体の芯に響いて、はしたない声が勝手に口をつく。
「気持ちいいか?」
 探るような口調でライアスが尋ねた。
「リネットにずっとこうして触りたかった。……けど、こんなことするのは初めてだから」
「――初めて?」
 思わずオウム返しに尋ねてしまった。
 縁談の話があったというくらいには、ライアスも年頃だ。オッドアイの持ち主とはいえ、仮にも王族である以上、地位や財産目当てに言い寄ってくる女性の一人や二人はいたはずだ。
(ううん……そんな浅ましい人ばかりじゃなくて。本当のライアスは意外に優しいんだってことを知ったら、それだけで――)
 彼のことを愛する女性は、きっと普通に現れる。
 思った瞬間、心がちくりと痛んでリネットは当惑した。
「言っただろう? リネット以外の女には、本当に興味がないんだ」
 覚悟と恥じらいが入り交じったような表情で、ライアスは打ち明けた。
「――お前にもらってもらえないなら、一生童貞でいい」
 顔を伏せたライアスが、服の上から乳首に吸いついた。
 唾液に濡らされたそこは、ますます硬く凝り勃つ。芽生えた快感はお腹のほうまで下りていって、腰が勝手に左右に揺れた。
「や、あぁ……んんっ……」
 童貞だと言ったくせに――むしろ、だからこそなのか――ライアスは性急で大胆だった。
 乳頭をじゅっと吸い上げながら、リネットの腰を撫で、太腿をまさぐる。乱れたスカートをめくられて、はっと気づいたときには、下着に手をかけられていた。
(ぬ……脱がせるなら、せめて上からじゃない!?)
 とっさに心で叫んだが、それが正しいという確証はなかった。
 何せ、人間の生殖行為に関して、リネットは薄ぼんやりとした知識しかないのだ。猫ならばいちいち服を脱がす手間などないから、決まったやり方など知るよしもない。
(いや別に、上半身なら脱がされてもいいってわけじゃないし。上からでも下からでも、こんなことしてちゃ駄目なんだけど!)
 めまぐるしく考えるうちにも、足首から下着を引き抜かれてしまう。
 危機感に肌が粟立つのと、ライアスの手が股座に差し入れられるのは同時だった。
「っ、だめ! 触っちゃ……!」
 恥丘を覆った掌が、そのまま下に移動する。
 秘裂に触れた指先が、驚いたように小さく跳ねた。
「どろどろだ。……こんなに濡れてるのが普通なのか?」
「う……やだ……やだぁ……」
 蜜口の位置を把握したライアスが、潤みの源泉につぷりと指を埋めた。苦しさに息を詰めたリネットの中を、ぬちゅぬちゅと浅く往復する。
「本当に穴がある……――中はもっとぐちゃぐちゃだな」
「ぅ……あんっ、あっ……はぁぁん……っ!」
 ありえないことだった。
 ライアスの指が動くたびに腰の奥から愉悦が込み上げ、体をくねらせてしまう。
 喉を突く声に甘い色が滲み始めていることに、リネット自身も気づいていた。自分の声帯からこんなにも媚びた音が出るなんて、情けなくて泣きたくなる。
「んっ……ライアス……あっあっ……だめぇ……」
「――なんて顔してんだよ」
 喘ぐリネットの表情に、ライアスも興奮を煽られたようだった。
 下半身のものはがちがちになってそそり勃ち、トラウザーズの布地を窮屈そうに突っ張らせている。
「んっ……う、あぁあんっ……」
 ライアスが再びリネットの胸に吸いついた。
 蜜洞を暴く中指はすでに根本まで潜り込み、湿った場所で愛液を絡め取る。柔らかな襞を擦られれば、泡立つ蜜がちゅぷちゅぷと溢れる。
「んく、んっ……やあぁぁあっ……!」
 指がずるりと抜かれ、また奥までねじ込まれた。
 この先の行為を暗示するような出し入れは、無垢な処女地に新たな快感を植えつけてくる。
 中への刺激と同時に乳首を甘嚙みされると、リネットの腰が浮き、指を咥えた蜜孔がぎゅうぎゅうと収斂した。
「っ……締めつけすぎだろ」
 ライアスが顔をしかめた。
「こんなとこに突っ込んだら、食いちぎられそうだ。どれだけ気持ちがいいんだろうな――」
「ふぁっ……!?」
 狭い膣内で関節を曲げられ、お腹側をぐいと押される。
 そこは、リネット自身も知らない――ことによっては一生見つかることもなかったかもしれない、雌としての弱点だった。
 鍛えようのない場所から鮮烈な痺れが走り抜け、爪先が跳ねあがる。
「や、いや、ぁああっ……ひぃあああっ……――!」
 乳首をしゃぶられて沁みる喜悦と、体の内側から執拗に刻み込まれる快楽と。
 性の悦びなど何も知らなかった身には、ふたつながらの刺激は強すぎた。
 どうしてこんなことになったのかと振り返る理性も、制止を訴える余裕もない。
 ライアスの掌はしとどに濡れて、ぐぢゅぐぢゅと卑猥な音を立てる股間の下には、生ぬるい水溜まりができていた。
「すごいな……大洪水ってやつだ」
 呟くライアスの胸を、リネットは弱々しく押し返した。
「も、だめ……ほんとに、だめっ……」